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極限下の98分! 阿部寛主演、メディアの報道姿勢にも切り込む『ショウタイムセブン』──【おとなの映画ガイド】

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『ショウタイムセブン』 (C)2025『ショウタイムセブン』製作委員会

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凄まじい緊迫感のサスペンス『ショウタイムセブン』が、いよいよ2月7日(金) に全国公開される。韓国で大ヒットした映画『テロ,ライブ』を『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の渡辺一貴監督が大胆に翻案し、阿部寛が主役を演じるこの作品、上映時間は98分。ずっとハイテンションが続き、息つく暇はありません!

『ショウタイムセブン』

『ショウタイム7』は、テレビで午後7時から2時間生放送される高視聴率のニュースショー。視聴者の意見“Yes or No”を放送中に問う企画がウリの番組だ。阿部寛演じる折本眞之輔は、その元メインキャスター。知名度も支持率も高かったのだが、数カ月前に降板させられ、いまは同じ局のラジオ番組を担当している。

そんな折本のラジオ放送が開始された午後7時に、リスナーを装って「火力発電所に爆弾を仕掛けた」という謎の電話がかかってくる。いたずらだと取り合わなかったが、直後、発電所が実際に爆発。犯人はさらなる爆破を匂わせながらある要求をつきつけ、交渉人になぜか折本を指名する。

まずは警察に通報と思った折本だったが、「待てよ……これは世紀の大スクープになりうる。花形キャスターに返り咲くチャンスだ 」という欲が首をもたげ、自分を左遷したかつての上司、『ショウタイム7』のプロデューサー東海林(吉田鋼太郎)に緊急の連絡を入れる──「今起こった爆破事件についての、特ダネを持っている」と……。

ここまでの、たたみかけるようにぐいぐい進むプロローグは、原作の韓国映画『テロ、ライブ』とほぼ同じ。

しかし、そのあとの展開は、ラジオの小さなスタジオと事故現場がテレビ中継されていく原作に対し、本作は「ショウタイム7」というニュース番組の“派手で大きなスタジオ”が事件の舞台になっていく。そうすることで、テレビ局の裏側、放送時のリアルな緊迫感がより鮮明に描かれる。

視聴率に目がくらんだプロデューサー・東海林の決断で、折本は急遽「ショウタイム7」のスタジオに出演、犯人との交渉を生放送する前代未聞の“一局独占番組”が始まる。

犯人に次々と無理難題を要求され、爆破が拡大するという非常事態。にもかかわらず、冷静を保ち、逆に水を得た魚のように生き生きと番組を進行させる折本は、現メインキャスター(竜星涼)や新人アナウンサー(生見愛瑠)の存在を飲み込んで、番組のイニシャチブを握り始めるのだが、事件はさらに恐ろしい局面を迎える……。

NHK育ちの渡辺一貴監督は、「90分や120分1カットの生ドラマのような作品を撮ってみたいという想いと、マスコミ業界で生きている人を描きたいという想いの両方が叶えられる企画だと感じました」と、この脚本を凄まじいエネルギーをもって、わずか3日で書き上げた。

メディアに報道されることを狙い、人為的によそおってつくる「疑似イベント」現象を脚本にとりこんだ。

「現代はその意識が個人にまで落ちてきていると感じます。 “バズ狙い”や“自撮り文化”などがその一例ですが、誰もがSNSを通じて“見られること”を意識して生きていますよね。 その象徴として、主人公の折本を設定しました」という。

参考にしたのは、筒井康隆の小説『48億の妄想』。1965年の作品だが、街中のいたるところにテレビカメラが設置され、人々が自分をよくみせようと演じ始める社会を描いたブラックSFの傑作だ。折本という役名は、この小説の主人公・折川をもじったそうだ。

折本役・阿部寛の存在感と演技力は追随を許さない。姿が映らないラジオだからと、無精ひげ・ラフなセーターで放送をしていた折本が、テレビ復帰のチャンス到来とわかると、かねてから用意していたスーツと新しいシャツに着替え、髭をあたり、デキるニュースキャスターに変身するシーンなんて、あくまで冷静沈着を装う男の、ぎらぎらした欲望がにじみ出ていて、色気すらただよう。

視聴率のためなら悪魔にでも魂を売りそうなプロデューサー東海林役の吉田鋼太郎もさすが。マスコミ関係にありがちな、ひとのことを「なんとかチャン」と呼ぶなれなれしさと、いざとなるとトンズラする調子のよさが同居するキャラを見事に演じている。

そして、かつて折本と名コンビを組んでいた記者役の井川遥、ふたりのキャスター、竜星涼、生見愛瑠もいかにもそれらしい。

撮影は、ライブ感重視のため、テレビ局のスタジオをまるごと作り込み、複数のカメラを同時に使用、10分以上もの長回し撮りを何度も敢行したという。

画面内に時計を頻繁に映し、劇中時間と実時間の経過をシンクロさせる細やかな演出や、スタジオスタッフ役に本当のスイッチャーやフロアディレクターを多く起用したことも、生放送のリアル感を増幅させる。折本がスタジオに乗り込んでからの、先が読めない息詰まる交渉シーンは、こうして生まれたのだ。

2時間を超す長さの映画が全盛のなか、98分間で一気に突っ走る感覚もいい。この上映時間が原作の韓国映画と分単位まで同じ長さなのは、あえての挑戦だろうか。

ところで、先日、フジテレビ首脳陣の10時間におよぶ記者会見が生中継されたが、午後7時から10時までの時間帯の平均世帯視聴率は関東地区で13.1%だった。事件の生中継というのは強い。テレビ局自身のスキャンダルがらみで高視聴率というのはなんとも、皮肉な結果だが。この映画のようなことが実際におきたら、テレビ局はまず存在の是非を問われるだろう。そう考えるとなかなかショッキングな映画だ。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2025『ショウタイムセブン』製作委員会

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