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【サンダンス映画祭レポート】ワールドシネマ監督賞作品『The Things You Kill』

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『The Things You Kill』 (C)Sundance Institute

ワールドシネマ・ドラマチック・コンペティション部門の監督賞を受賞した『The Things You Kill』は、アリレザ・ハータミーによる異色のサスペンス映画。

主人公は、トルコの大学教授。高齢で体が思うように動かない母を時々訪ねては面倒を見ているが、そのたびに男尊女卑で傲慢な父に辟易させられる。そんなある日、突然、母が怪我をして亡くなった。最初は事故だと信じていたが、過去に父のDVで母が入院したことがあったと初めて聞き、父を疑うように。そしてついに究極の手段に出ることを決意する。

その究極の出来事の直後から、映画は観客をかなり混乱させる。さらにラスト近くになって、もう一度混乱が待っている。ハータミーはもちろんわかってやっていること。上映後のQ&Aでも、多くの観客は「今何を見せられたのだ?」と思うはずだと語っている。

それがしばらく頭に残り、何日か後に「もしかしてこういうことか」と思ってもらうのがねらいだ。「その後、もう一度見直すと、仕掛けがあちこちに隠されていることに気づいてもらえるはず」とも、ハータミー。事実、筆者もわけがわからないと思ったが、このQ&Aで誰かがデビッド・リンチと比較したことで、とたんに納得がいった。たしかに、そこがわかるともう一度見直したくなる映画だ。

アメリカに住んだことがあり、現代の西洋の価値観をよく知っているハータミーは、保守的な文化になお残る間違いを発見しつつも、自分もまたその間違いの一部なのだとも認識したと語っている。主演はトルコの名優エキン・コチ。

 

文=猿渡由紀