二月新派公演『三婆』開幕 水谷八重子、波乃久里子、渡辺えり、川﨑皇輝が意気込みをアピール
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二月新派喜劇公演『三婆』囲み取材より (写真提供:松竹)
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すべて見る2025年2月1日、東京・新橋演舞場にて、松竹創業130年 新橋演舞場100周年 二月新派公演『三婆』が開幕した。初日前日の1月31日に実施されたゲネプロの舞台写真および囲み取材のレポートが到着した。
『三婆』は、有吉佐和子が1961年に発表した小説を原作に、1973年に小幡欣治の脚本で舞台化。以来何度も上演され、その後新派でもお馴染みの作品に。莫大な借金を残して急逝した男の愛人駒代と、本妻の松子、故人の妹のタキが繰り広げる物語は、女たちの老後問題をユーモアたっぷりに、テンポよく描き出す。戦後の高度成長期を時代背景に、女性たちが直面していた社会的制約や不平等、それぞれの境遇に応じを選択することに焦点を当て、現代にも通じる普遍的なテーマをもって、広く愛されてきた作品だ。
今回、水谷八重子と波乃久里子という新派の二代女優とのバトルを繰り広げるのは、2023年6月三越劇場『三婆』で新派初登場を飾り好評を博した渡辺えり。八百屋の辰夫役の川﨑皇輝(少年忍者)のゲスト出演も話題に。演出は歌舞伎やミュージカルの舞台も手がける齋藤雅文が務める。
ゲネプロ当日に実施された囲み取材には、水谷、波乃、渡辺、川﨑が登場、それぞれに舞台への思いを明かした。
水谷は、「駒代を演じるのは何回目ですかね。有吉先生のふたりでやった『芝桜』の蔦代が年を取って駒代になる──そんな感じの役で、楽しいです。ぜひぜひ観てください。頑張ります」、波野も「本妻の松子役をやらせていただきます。ゲストのえりさんと皇輝くんと、楽しくやっております。ひとりでも多くの方々が観てくださるよう、お願いいたします」と公演をアピール。

ゲストの渡辺は、「私の役は60歳でバージンという乙女チックな役で、身体が弱いので仕事もできずに他人にご厄介になることになった、不思議で面白い役です。驚いたのは、婆あの役なんですけど、それが60歳──。自分、70歳になってから10歳若い役で『三婆』。ちょっとショックを受けています。これからの老人問題にも厳しくメスを入れている、笑って泣ける作品なので、ぜひいらしてください」とトークを展開。もうひとりのゲスト、川﨑は「八百屋の辰夫役を演じさせていただいています。辰夫というのは、この3人がいらっしゃる武市家に野菜を常に届け続けています。野菜を肩に担ぎながら、毎回『毎度〜』と言いながら入ってくる。3人のごたごたとしたやり取りに、待ち焦がれたり俯瞰して見たり──。辰夫という立場から『三婆』という作品を支えられるように演じさせていただきますので、最後までよろしくお願いいたします」と意気込みを述べた。
質疑応答:ゲスト出演の渡辺えり、川﨑皇輝が語る稽古場エピソードも
その後の質疑応答の内容は以下の通り。
──作品の見どころを教えてください。
水谷 私の役は2号。家の風呂場で旦那さんが死んで、そりゃ慌てますよね。本妻が来るかもしれないので、あたふたとする役でございます。ぜひぜひ、どんな愛人役か見てやってください。
──これまで何度も演じられていますが、今回は何か違いがありますが。
水谷 違いがないようにと気遣いながら、やはり前進はしていたい。そういう欲望もちらっとございます。
波乃 有吉先生の作品は本当に各場各場が見どころ。それは言うよりも早く観ていただきたい、でございます。
渡辺 男の存在がないと生きていかれなかった女性たち3人が、後で自立していくというところが見どころだと思っておりまして、男の人を奪い合ったり嫉妬したり、3人が本当に肩寄せあってシェアして生きていく、その女性の人情みたいなところが見どころだと思います。

──渡辺さんは身体の弱い役ですが、ご自身は真逆でお元気ですね。
渡辺 いや私、凄く身体が弱かったんです。先生に運動しちゃいけないって言われていたのが、演劇を通して元気になったので、身体の弱い役はすごく得意です。元気そうに見えるけど運動したらすぐ倒れて保健室で寝込むタイプ。芝居をするようになってから、「えりちゃん元気になって良かったね」と同級生が言うぐらい。
波乃 演劇に感謝しないとね。
──元気の秘訣は演劇?
渡辺 寂しいですけど、演劇だけですね。悲しいと言っていいんでしょうか。
波乃 素晴らしいことじゃない
渡辺 頑張ります。ありがとうございます。

川﨑 このお三方のお芝居のテンポ感、間の取り方。僕が稽古場で見させていただいているときから学びがたくさんあったのですが、特に印象に残っているのは2幕最後、4人でお食事をとられるシーンが25分ほどありまして、あの長尺のお芝居でも見ていて飽きることなく最高です。舞台セットもひとつも何も変わらないんですが、飽きることがないです。稽古中、すごく楽しませていただいているので、ぜひ注目していただけたらなと思っております。
水谷 素晴らしい、ありがとう! ゲストの方にこんなに言っていただいて。
──川﨑さんは圧倒的に若手ですが、プレッシャーは?
川﨑 ありますね。お芝居の経験自体まだまだ浅く、年に一度あるかないか。そもそも新派という劇団が、とても長い歴史で演舞場の記念とか松竹の記念とかこの作品自体が50年とか、すごくいろんな重みがのっかった今回の1カ月だと思います。
渡辺 しっかりしてますよね。ゲストは私たちふたりだけだから頑張ろうね!
川﨑 心強いです!

波乃 お稽古場で、「こんなお年のお稽古場ないでしょう?」と聞いたら、「生まれて初めてです」と。
川﨑 本当に珍しい……、あの……(焦り)
波乃 動物園みたいじゃない(笑)!
渡辺 小さいところで、想像力だけで稽古するんだものね。鍛えられちゃうわよね。
川﨑 いろいろと初めての経験をさせていただきました。通し稽古が終わった後に、突然皆さんが正座を始めて──僕はその文化に一回も触れたことがなかったのですが(正座する動作をしながら)、手打ちをして、「おめでとうございます」と言う。
渡辺 「七三」の説明今日受けていたでしょう? 私、50年やってて始めて知ったもんね。

──渡辺さんも初めて知ることがあるんですか
渡辺 なんですか(笑)? シーラカンスみたいに。本当に知らないことばかりで、70歳になっても勉強することが多いですね。(川﨑を指しながら)同じ気持ちで頑張ります。
──川崎さん、芝居のことで厳しく言われたことはありますか。
波乃 ないない! だって素晴らしいもん! 本当にリアルで。
川﨑 ありがとうございます。
波乃 舞台は何回目?
川﨑 3回目になります。
渡辺 3回しかやっていないの!?
川﨑 ほんとに光栄です。
波乃 これ以上のことはないから大丈夫よ。
川﨑 これ以上の現場は想像できないですよね。いろいろと勉強させていただけたら嬉しいなと思って現場入りさせていただきましたが、何せ稽古が1週間しかなかった。僕は始めてなので何日か抜き稽古をしていただいたのですが、皆さんと合流させていただいて6日、7日間ぐらいしかなかったのも新鮮で、皆さんの経験値の高さを肌で感じさせていただきました。
──最後にPRコメントをお願いします。
水谷 いろんな世代の方々に観ていただける作品。何年経っても古くならないので、あらゆる方に観ていただきたいと思います。

公演は2月9日(日) まで。
写真提供:松竹
<公演情報>
二月新派喜劇公演『三婆』
原作:有吉佐和子
脚本:小幡欣治
演出:齋藤雅文
【キャスト】
富田駒代:水谷八重子
武市松子:波乃久里子
武市タキ:渡辺えり
辰夫:川﨑皇輝
お花:大野梨栄
山田和子:鴨原桂
瀬戸重助:田口守
只野操、児玉真二、久藤和子、矢野淳子、村岡ミヨ、
市村新吾、喜多村一朗、佐藤英樹、春可直子、斉藤沙紀
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557193
公式サイト:
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202502enbujo/
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