『ナイト・ウィズ・キャバレット』剣幸×堀越涼インタビュー ―― 剣幸が新鋭・堀越涼の演出で“幻の名作”の二人芝居に挑む
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インタビュー
左から剣幸、堀越涼
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すべて見る2014年に第2回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞しながらも、これまで上演の機会を得ず“幻の名作”となっていた西史夏作『ナイト・ウィズ・キャバレット』。大正から昭和初期の波乱の時代を背景に、五所踏子と鏡千里という男女の俳人がたどった16年間を、当時のキャバレー音楽に乗せて描く。踏子には宝塚出身でストレートプレイでも高い評価を得ている剣幸、千里には小劇場からミュージカル、コントまで多彩な活躍を見せる小林タカ鹿と、異なる出自のふたりが扮するのも見どころだ。演出は、自身のユニット「あやめ十八番」で古典芸能をモチーフに創作を続ける劇作家・演出家の堀越涼。魅惑の顔合わせに期待を膨らませつつ、剣と堀越に話を聞いた。
物語は大正14年から昭和16年にかけて、ほとんどが東京浅草アサヒホテルの501号室で展開。剣演じる踏子は21歳から37歳、相手役となる小林は千里の31歳から47歳までを演じる。
剣は「以前、1年に一度逢瀬を重ねる男女の25年を描く作品に出させていただいたことがあったのですが、『お芝居ってすごく楽しいな』と改めて感じたんですね。またそんな作品をやりたいと思っていたので、今回お話をいただけて嬉しかったです」と顔をほころばせる。本作は男女の関係であると同時に、俳人同士という“表現する人”の愛と闘いが複雑な時代背景によって描かれる。「ふたりが時代にどう翻弄されるのか、それによって関係性がどう変わっていくかという流れも繊細に描かれていて、そこに魅力を感じました」と剣は話す。
一方の堀越も「今回演出をと言われた時、剣さんと初めてご一緒できるというのがまずありましたが、僕も戯曲そのものの面白さというのが大きかったですね。大正から昭和にかけての俳人というテーマも非常に好みで、作劇も美しく、演出にあたってやりがいがあるに違いないとすぐに思いました」と語る。
「物語の冒頭、踏子は近江から上京してくる21歳! もう見た目とかはね、ごめんなさいするとして……」と剣は笑いながらも、「千里に会うために必死な純粋さ、そこから次の逢瀬、また次の逢瀬と、踏子がどんなものをそぎ落として、どんなものを身につけていくのか。そういった点も意識して演じられたら」と話す。
堀越も「ぼく自身、剣さんを通して踏子という女性をどんな風に見られるのだろうというのが楽しみなんですよ。どんどん変わっていくひとりの女性の人生を演出するというのは、本当に“やりごたえ”があります」と意気込む。
本戯曲は昭和15年から18年に起きた新興俳句弾圧事件がモチーフ。第二次世界大戦による軍靴の足音は踏子と千里にも迫るが、そんな中、ホッとできるのがキャバレー「黒猫」でのショーシーン。エリック・サティや北原白秋などによる、当時流行したキャバレー音楽にも注目だ。そしてレビューといえば、剣にとってはお手の物とも思えるが。
「ただ、いわゆる普通のレビューではなくて、この時代は歌手にとってもやっぱり息苦しい弾圧がある。明るいキャバレーのシーンではあるのですが、いろんなことが『ダメ』となっていく世の中での、人々の心の叫びのようなものが歌の中にも感じられるようにしたい」と剣。
堀越も「本作はストレートプレイならではのしっかりとした会話劇の部分があるからこそ、ショーシーンで盛り上がると思っているので、どちらも味わっていただけるような作品にできれば」と言い、続けて「僕のユニット『あやめ十八番』では生演奏をポイントにしているのですが、本作でもピアニストの吉田能さんに音楽監督とピアノの生演奏をお願いしようと思っています」と明かす。
「そうそう、タカ鹿さん(小林)も普段からシャンソンをやってらっしゃって、動画を拝見しましたけど、とても素敵ですよね」と剣が言えば、堀越も「吉田さんと僕、それから剣さんとタカ鹿さんという音楽を愛するチームで、楽しみながらレビューを作りたいと思っていて。僕はレビューを作ったことがないので、剣さんにも助けていただきながら……」と話し、剣が「私でよければ(笑)」と返すなど、早くもチームワーク抜群の様子だ。
上演は、東京・池袋の伝統ある小劇場「シアターグリーン BOX in BOX THEATER」。客席数は100人ほどで、演者と客席の距離が近いのが魅力だ。 「息使いも聞こえるでしょうし、踏子と千里の“熱”みたいなものを感じていただけたら」と言う剣と、「素晴らしい俳優さんと素晴らしい戯曲がもう揃っているのでその良さは損なわないようにして、あとはお客さんが期待しているもの、それ以上のものを見せられるように、工夫を凝らして作っていきたい」と話す堀越。濃密な舞台の本番は、もうすぐだ。
取材・文/藤野さくら
<公演情報>
『ナイト・ウィズ・キャバレット』
2025年2月13日(木) ~23日(日・祝)
シアターグリーン BOX in BOX THEATER
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/nwc/
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