北野武監督「自分の映画のキャリア自体を“壊す”」 Prime Video『Broken Rage』配信記念記者会見レポート
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『Broken Rage』配信記念記者会見より
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すべて見る2月14日(金) よりPrime Videoにて世界独占配信される北野武監督最新作『Broken Rage』の配信記念記者会見が行われた。
本作は、北野監督が「暴力映画におけるお笑い」をテーマに制作し、型破りな演出と予測不能な展開で映画界の常識を打ち砕く“新しすぎる実験映画”だ。
会見には、本作の監督・脚本を務め、主人公のねずみを演じた北野武をはじめ、ねずみを麻薬捜査の覆面捜査官として捜査協力させようとする井上刑事役を演じる浅野忠信、井上刑事とコンビを組む福田刑事を演じる大森南朋、麻薬売買を取り仕切るヤクザの若頭・富田役の白竜、クスリの売人役の國本鍾建の5名が登壇した。
北野監督は登壇すると、「Amazonという会社の配信ということで、お茶の間でみる映画とはどういうものかと悩みまして、かなり実験的なものを作らせてもらおうと思って、無理な相談ですがAmazonの方にお伺いしたらやって構わないということで実現できました。劇場とテレビというのは意識していなくてもやはりこれだけ違うものになってしまうのかと。映画が完成した後、エンターテインメントは見る方も作る方も環境が変わると、内容もこれほど変わってしまうのかとつくづく分かるようになりました」と、自身が“実験作”と称する本作の制作を振り返った。
北野監督からオファーを受けた浅野は、「このお話をいただいた時に、『首』の作品の中でも監督と大森さんとやらせていただいていたので、これよりも先にいけるんじゃないかと期待がありましたし、台本を読んだ時に『これは予想以上にすごいものになるな』という風に思いました。シリアスなパートもコメディのパートも読み直していると本当に面白くて、面白いと同時に現場でも更なるハプニングが生まれるんじゃないかと不安と期待が入り混じっていました。現場では本当に緊張しましたし、新しいことをやって鍛えられた部分もありました。そばに大森さんと監督がいてくれたので楽しむことができました」と語った。
本作で5度目の北野監督作品出演となる大森は「監督の作品に呼んでいただくことは幸せなことです。監督の前で“笑い”をやるプレッシャーたるや、僕も浅野くんもハンパない緊張感の中でやっていて、『特にウケなかったけどまあオッケーか……』みたいなことを繰り返しながらですが、本当に現場に行くのが楽しくて幸せな時間でした」と明かし、「最後に浅野くん、ゴールデングローブ賞受賞おめでとうございます」と、浅野にメッセージを贈った。
白竜は「北野監督の作品にはたくさん出させていただいているんですが、今回も『(監督に)お任せします』と。監督に『いくらでも料理してください』という気持ちでやらせていただきました。現場は和気あいあいとしていて、楽しい現場でした」と振り返り、國本は「監督からのオファーはいつでも嬉しい気持ちになって幸せな心もちになります。ただただ感謝の気持ちに尽きます」と、キタノ組の“新たな試み”に参加できた喜びを明かした。
本作は日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され、鑑賞後の観客からは惜しみない拍手と歓声が送られ、鳴り止まないスタンディングオベーションを北野自ら制止するほど絶賛と高い評価を受けた。
北野監督とともにベネチア国際映画祭に登壇した浅野は「僕も皆さんがどうやって見るのかを本当に楽しみにしていたんです。シリアスパートが始まった時はキタノ映画を観るテンションを感じていたんですけど、Bパートが始まって皆が最初に笑ったとき、いきなり劇場の雰囲気が変わって、アットホームな感じになったんです。家族で同じ面白い映画を観ているような感じになって、僕も一緒になって笑っていました」と、肌で感じた観客の反応を明かした。
大森は「劇場に入るところで武さんのファンがたくさんいらっしゃっていて、サインしてくれと写真を差し出すんです。僕のもたまにあるけど、『サインください』と差し出されたのは浅野君の写真だったんです。大森って書いておきました(笑)」と、ベネチアで起きたまさかの出来事を話して会場を笑わせた。
また、会場では集まったメディアによる質疑応答も。本作は約60分の映画を前半と後半のパートに分けており、前半では警察とヤクザの間で板ばさみになった殺し屋が生き残りをかけて奮闘する骨太のクライムアクションを、後半は前半と同じ物語をセルフパロディという手法を使ってコメディタッチで描く。そんな「世界のキタノ」による映画としての新たな試みについて質問されると、北野監督は「編集する前は2時間半くらいあるかなと思っていたし、映画館で上映する作品ならもう5秒延びるところもあるなと思ったけど、お茶の間で見る感覚で編集したらだいぶ短くなったんです。同じテンションで撮っているのに、これだけ変わるのかと思いました」と明かした。
また、北野監督の代表作のひとつである『アウトレイジ』シリーズを彷彿とさせる、本作のタイトル『Broken Rage』に込めた想いについて聞かれると、北野監督は「おかげさまで『アウトレイジ』シリーズはそれなりの成功を収めたので、暴力映画としては自分なりに昔のヤクザ映画じゃない、現代的な映画が撮れたと思っているんですけど、それに対するパロディという意味もあります。自分の映画のキャリア自体を“壊す”という意味で、タイトルにつけました。あまり深い意味はないんですよ」と、挑戦作となった本作のタイトルに込めた想いを明かした。
さらに、本会見には海外のメディアもオンラインで多数参加しており、その中からも質問が多く寄せられた。これまでのお笑いでのキャリアが映画監督としてどう生かされているかという質問には、北野監督は「映画は総合芸であって、音楽や美術や歴史やあらゆる要素を含んでいるから映画は面白いと思う。小説で細かく書こうが、映像で一瞬見せたらすべて分かってしまうこともある。映画は総合芸術の中で、今はNO.1だと思っていますが、それに関われて仕事にできているのは非常に嬉しいことで、今考えればコメディアンとして舞台に立っていたことやいろんなものを経験していたことが、最終的に映画に繋がってくるなと。今、自分が楽しめる一番のエンターテインメントは映画だなと思います」と答えた。
そして、北野監督は「映画自体は無声映画から始まって、その前には8コマとかの時代があって、70ミリになったり、音響効果があったり、ネズミを放したり、映画がお客さんを楽しませるために努力したり無茶をやった時代があった。映画を撮っている時は我々もお客さんを楽しませることを意識していますし、見せ方もいろいろ考える。今までは劇場に足を運んでくれるお客さんを対象にしてばかりいましたが、これだけ発達した時代にエンターテインメントはどういう方法をとるのかなと、過渡期というか試されている時期なので、その渦中にいる我々はいろいろチャレンジしたいと思っています」と、映画監督としてこれからの“エンターテインメント”の可能性について熱く語った。
会見の最後に、北野監督は「自分としてはかなり実験的な映画なんですけど、グレードとしてはひどくない。すごいとも言いませんが、あまり損したとは思わないだろうという感覚です。おかげさまでここにいる役者さんたちが上手くて、一生懸命やってくれたので映画としての形にできましたし、この映画の目指すところはまた違う映画として花咲くと思います。できたら、是非見てほしいと思います」と、本作の配信を楽しみにしている人々に向けてメッセージを贈り、会見は幕を閉じた。
<作品情報>
Amazon Original 映画『Broken Rage』
2月14日(金) Prime Videoにて世界独占配信
(C)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
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