稽古はいよいよ核心へ、3カ国語が飛び交う市原佐都子「キティ」稽古場レポート
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市原佐都子 / Q「キティ」稽古の様子。左からバーディ・ウォン・チンヤン、市原佐都子。
市原佐都子 / Q「キティ」の稽古が京都・ロームシアター京都で進行中だ。ステージナタリーでは2月上旬、稽古場を取材した。
「キティ」は、ロームシアター京都の「レパートリーの創造」シリーズの第8弾で、“かわいい”を象徴するような存在、子猫(kitty)をタイトルに掲げる市原の新作。出演者には、以前も市原作品に出演経験があるソン・スヨン、永山由里恵、バーディ・ウォン・チンヤン、そして京都を拠点に活動するダンサーの花本ゆかが名を連ねた。
稽古場のアクティングエリアには、明るい緑のマットの上に業務用といった感じの無機質なテーブルと椅子、そして赤に塗られたカゴ台車が置かれ、舞台上部には字幕用の細長いスクリーンが吊るされていた。定時になって市原が稽古場に姿を現し、朗らかな様子で「2場を、コスチュームありでやってみましょう」と声をかける……と、通訳のスタッフが即座に、韓国語と英語でスヨンとバーディに市原の言葉を伝えた。
本作では、主人公のねこが家庭の中、そして社会の中で出会うさまざまな“かわいくない”出来事に違和感を感じていく様が描かれる。ねこ役はシーンごとに演じ手が代わり、ねこが社会人となり会社の受付嬢として働く2場では、永山がねこを演じた。なお台本上、セリフは日本語・韓国語・広東語・日本語メインのミックス・韓国語メインのミックス・広東語メインのミックスで色分けされており、稽古では俳優たちが自分の母国語でセリフを発していたが、本番では俳優は肉声では発語せず、セリフは俳優の生の声から生まれたAI音声により字幕付きで語られる。
舞台の奥から体を捻りつつ摺り足するような、不自然な動きで歩み出てきた永山演じるねこは、笑顔を武器に受付嬢の仕事を得たと自信を見せる。不自然な動きのワケは、ポイントを変えて俳優の動きをキャプチャし、そこから生成された動きを俳優が“振り”として身体に落とし込んでいるからで、永山は手足を身体に絡ませるような姿勢でモノローグを語った。そしてねこは、バーディ演じる先輩受付嬢ララと共に受付に立つ。「なにがあっても慌てずに笑顔で前を向いていること」というララの教えを守ろうとするねこだが、突如“カメラマン”と“男優”が目の前に現れて、ねこの隣で信じられないことが起こり……。
ねこ以外の登場人物は、動き自体は自然だが、グロテスクできらびやかな着ぐるみのようなコスチュームゆえに、ちょっとした動きもコミカルに映る。稽古中も、その大きさのため衣裳がぶつかり合ったり、届くべき場所に手が届かないということが起こり、そのたびに稽古場の空気が和んだ。コスチュームを着ている俳優の動きがどうしても大きくなる点については、市原が「相手役に対してわからせるための“この世界でのジェスチャー”は必要だけれど、お客さんにわからせようとするジェスチャーはいらないと思います」と話した。
また稽古では、出演者たちからも活発に質問やアイデアが挙がり、通訳を介しつつ、市原自身も英語と日本語を交えながら対話を深めていった。さらに稽古の途中で衣裳を手がけるお寿司・南野詩恵も姿を現し、動きの様子を見つつ、俳優や市原の意見を真摯に聞いていた。京都での本格的なクリエーションが始まって2週間、初日まで2週間を切り、稽古はいよいよ核心へと向かっていた。
なおこのたびアフタートークも決定。2月21日19:00開演回終演後、市原とソン・スヨン、永山、バーディ・ウォン・チンヤンが登壇し、Artocrite Theaterのケイラブ・チェン・チャンノンが司会・進行を務める。さらに22日14:00開演回終演後、「感想シェアピクニック」を開催。こちらは参加無料で定員40人(事前申込優先)となる。
市原佐都子 / Q「キティ」は2月17日から24日までロームシアター京都 ノースホール、3月1・2日に東京・スパイラルホールで上演される。
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