ナタリードラマ倶楽部 2025年冬クールを語り尽くす(後編)
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「御上先生」ポスタービジュアルのポーズを再現する綿貫大介(左)と明日菜子(右)
放送・配信中のドラマについて取り上げる連載「ナタリードラマ倶楽部」。今回も、本連載でおなじみのドラマウォッチャー・明日菜子と綿貫大介の座談会をセッティングした。Vol. 16となる今回は、2025年冬クール編の後半戦。取材は2月3日に行い、1月15日以降にスタートした作品を対象とする。
明日菜子と綿貫は、“特殊能力被り”が目立つ今クールのドラマ設定が気になる様子。日曜劇場「御上先生」にはそのメッセージ性に拍手を送るも、心のどこかで王道学園ドラマの展開が恋しいという。ドラマが大好きな2人のトークをたっぷりとお届けする。
取材・文 / 尾崎南・脇菜々香 題字イラスト / トモマツユキ
「秘密~THE TOP SECRET~」板垣李光人×中島裕翔バディのブロマンスに期待
──後編の座談会では、1月15日以降にスタートした作品を対象にお話を伺います。1月27日にはフジテレビで10時間以上にわたる会見がオンエアされ、放送予定だったドラマが延期になりました。
明日菜子 びっくりしました。月9の「119エマージェンシーコール」も放送されませんでしたし。
綿貫 「秘密」もまだ第1話(座談会実施時点)しか放送されていない。第1話の最後は貝沼(國村隼)が突然自分の首を切るというまさかの展開で、続きが気になっていた人も多かったはず。2週間空いてしまったのはもったいなかったです。この作品は薪(板垣李光人)・鈴木 / 青木(中島裕翔、2役)・雪子(門脇麦)の関係性が軸になっているのですが、身長差含め、特に薪と鈴木 / 青木のブロマンスをかなり意識しているのではと思います。サスペンスが主題ではあるけど、その関係性を見どころとした作りを意識しているのでは。
編集部注:「秘密~THE TOP SECRET~」は、死者の生前記憶を映像で再現できる特殊なMRI技術を用い、科学警察研究所の法医第九研究室、通称“第九”が事件の真相を解き明かす物語。第九の室長である薪と同僚の鈴木は親友同士だが、ある事件により鈴木は亡くなる。やがて鈴木に瓜二つの新米捜査員・青木が配属され、2人はかけがえのないバディとなっていく。
明日菜子 同感です。第1話の薪と鈴木の関係性が素敵だったので、今後ブロマンス感が強くなってくるとさらに面白くなりそうですね……! 設定が盛りだくさんで情報量が多いドラマではあるのですが、第1話はキャッチーでとても観やすかったです。原作マンガの絵を見たら、特に板垣さんが薪にそっくりで。キャスティングも素晴らしく、どんな作品になっていくのかワクワクしています。ストーリー面では、薪が死人の脳をのぞき見ることに葛藤する描写にすごく引き込まれました。申し訳ないけど板垣さん、もっともっと悩んでくれ……その姿も美しすぎるので……。
綿貫 「秘密」がタイトルに入っている作品はたいてい、誰かが何かを隠していて、そのネタバレがキーになるじゃないですか。この作品では何が“秘密”にあたるのか、注目していきたいです。
「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」「相続探偵」今クールは特殊能力祭り!
──同じくフジテレビでは火曜21時から「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」が放送中です。「火9」は2024年10月期に8年ぶりに復活したドラマ枠で、「オクラ~迷宮入り事件捜査~」に続き2作連続で刑事ドラマとなりました。
綿貫 火9は「踊る大捜査線」の放送枠ですしね。フジテレビはその幻影をずっと追って刑事モノを作り続けている気がします。「アイシー」の主人公・氷月(波瑠)は瞬間記憶能力“カメラアイ”を持っているのですが、月9「119エマージェンシーコール」の主人公・粕原(清野菜名)も一度聞いた声は忘れないという特殊能力を持っている。同クールのフジテレビ系ドラマで特殊能力被りはどうなんでしょう。
明日菜子 氷月が粕原とタッグを組んだら最強ですよ。
綿貫 粕原は正義感も強いので「教場」の警察学校に通ってから「アイシー」に来てほしいですね。
明日菜子 すべてがつながる!(笑) 男だらけの警察社会で女性がリーダーの捜査班の活躍を描くという点では、「ストロベリーナイト」を思い出します。
綿貫 「アンフェア」「ストロベリーナイト」に次ぐ女性刑事作品として作られているので、かなりその流れを汲んでますよね。このジャンルが好きな方も多いと思いますし、実際そのファンに向けた作品だと思います。
明日菜子 特殊能力被りと言えば、「相続探偵」第2話にも氷月と似たような能力を持ったキャラクターが登場しましたよね。
綿貫 そうそう! 「相続探偵」の紗流(宮内ひとみ)の特殊能力は正直、氷月よりすごいよね? 見たものを記憶できるうえにそのまま再現できるって、強すぎる。
明日菜子 他人の文字も絵も完璧に再現できるなんて、なんでもできちゃいますよ(笑)。「相続探偵」は日テレミステリードラマの王道を走っている印象です。「こっち向いてよ向井くん」に続き、日テレドラマの赤楚衛二さんはやっぱり最高! 灰江(赤楚衛二)、令子(桜田ひより)、朝永(矢本悠馬)の3人組もかわいくて。
綿貫 本当にキャストが魅力的です。ただドラマの雰囲気を見ると小・中学生も楽しめる作品を作ろうとしていると思うのですが、それにしてはテーマが大人向けすぎる。相続問題って出てくる単語も難しいし、そのチグハグ感が気になります。テーマとしては「プライベートバンカー」とも被っていて、間の悪さも残念……。
明日菜子 「相続探偵」は、「妖怪シェアハウス」の西荻弓絵さんが原作を担ったマンガがもとになっています。西荻さんはドラマの脚本も執筆していて、マンガは掲載雑誌が休刊になり打ち切りになったので、ドラマでもう1つの結末が観られるのが楽しみです。
「晩餐ブルース」は「ずっと観たかった物語」
──今期はおいしいグルメが登場するドラマも放送中です。お二人は「晩餐ブルース」について語りたいとおっしゃっていましたね。高校時代の友人である優太(井之脇海)と耕助(金子大地)が晩餐活動=晩活を通して心を通わせていく物語です。
明日菜子「晩餐ブルース」と同じくプロデューサーの本間かなみさん、脚本の山西竜矢さんがタッグを組んだ「今夜すきやきだよ」という神ドラマがありまして。恋愛体質なあいこ(蓮佛美沙子)と他人に恋愛感情を抱かないアロマンティックのともこ(トリンドル玲奈)が共同生活を送るグルメドラマなのですが、あいこの彼氏・ゆき(鈴木仁)とともこの男友達・しんた(三河悠冴)が仲良くなるシーンがあるんです。この男性2人の関係性をフィーチャーしたのが「晩餐ブルース」なのかなと。昨今シスターフッドを描くテレビドラマは増えてきましたが、その逆は少ない。もちろん「晩餐ブルース」の3人に恋愛要素が入ってもいいし、それによって今後関係性が変わってもいいんです。ただ、切り口としてはすごく斬新で、ずっと観てみたかった物語だなと思いました。
綿貫 まず前提として、とても期待していましたし楽しく観ています。ただ、まさに「こういう作品が観たかった」という意見をよく目にするのですが、なぜ男性同士のケアを描く作品を今観たいと感じるのかという点が気になります。というのも私は、今はまだシスターフッドの作品を観るべき段階だと思っているんです。これまでドラマはほぼ男性同士の連帯(ホモソーシャル)の土壌の上で描かれ、フェミニズムのバックラッシュ以降は女性同士の分断・対立ばかりを煽る作品も多かった。だからこそやっとまたシスターフッド作品がフィーチャーされているのはいい流れだと思っていて。「シスターフッド作品が多すぎる」とするのはまだ早いと感じてしまうんです。たしかに男性同士のケアというのは大事な話です。ただ「晩餐ブルース」で優太が抱えている苦悩は今のところ“男であること”が理由の悩みではない。この会社では女性社員もモヤモヤを抱えている。ならそっちを主題にしてもいいのでは?という気持ちもあるんです。個人的には男性同士のケアを題材にするのなら、まさに「今夜すきやきだよ」のゆきとしんたのように、“男らしさからの解放”も描くべきだと思うんです。それなしに男同士の連帯を描くと、それはミソジニー、ホモフォビアを含んだ実社会のホモソ文化の強化につながりかねない。
──「なぜ男性同士のケアを描く作品を今観たいと感じるのか」がポイントとのことですが、綿貫さんはその理由をどうお考えですか?
綿貫 悪しき価値観ですが、これまで男性をケアする役割は女性に押し付けられてきた。そのため、女性は男性同士がケアしあっている姿を見たいと思うのかなと想像していますが……明日菜子さんはいかがですか?
明日菜子 「なぜ恋愛要素を含まない男性同士の連帯を描く作品は少ないんだろう?」と疑問に思っていたので、シンプルに「観てみたい」という気持ちがありました。たしかに男性たちの物語ばかりが作られてきたという歴史はありますが、シスターフッド作品が増えてきた今、井之脇さんや金子さん世代の男性の物語がちょうど抜け落ちているような感覚があったので、「晩餐ブルース」のような作品が出てきてうれしかった。優太が仕事に忙殺されToDoリストを眺めながら涙を流すシーンが印象に残っているのですが、やるべきことはたくさんあるけど、自分が本当に何をしたいのかわからなくなるという描写は、令和の若者像を象徴していると思いました。
綿貫 キャストの井之脇さん、金子さん、草川(拓弥)さんの3人はBL・クィアドラマでゲイ役を演じてきた経歴がある。そのイメージもあるので、「晩餐ブルース」でも有害な男性性のない役を演じていくのではと期待しています。
「バニラな毎日」お菓子教室は人生の避難場所
──ドラマの世界では“ケア”の象徴としてグルメが登場することが多いですよね。
明日菜子 やっぱり食べることは、自分を労ることの基本なんでしょうね。グルメドラマは世の中にたくさんありますが、観ていて飽きません。NHKで放送中の「バニラな毎日」は、舞台がお菓子教室。お菓子教室が人生の避難場所としての役割を持つというくだりがあって、「このドラマもケアの物語だ」と思いました。
綿貫 お菓子教室がカウンセリングの場になっていますもんね。自分の気持ちを話しながらおいしいお菓子を作って食べるなんて、最高です。
明日菜子 お菓子はレシピ通りきっちりやれば見た目もきれいなものができると思うし、登場人物が没頭する描写は説得力があります。料理研究家・佐渡谷(永作博美)のキャラクターもいいですよね。まさに“大阪のおばちゃんマインド”で、この時代に人の心にズンズン入ってきてくれる存在って大事な気がします。
綿貫 劇中に出てくるスイーツが本当においしそうで、ドラマを観てザッハトルテ買いに行きました(笑)。夜落ち着いて観るにはぴったりなドラマです。
──NHKでは獣医師を目指す主人公・岸本聡里(山田杏奈)の青春物語「リラの花咲くけものみち」も放送中です。
綿貫 これまでも獣医師をフィーチャーした作品はありましたが、中でも映像の美しさが群を抜いています。北海道の四季の花々や動物たち……とにかく映像がすごい! 第1話の馬の出産シーンもとてもリアルでしたし「専門家と相談の上、動物にストレスを与えない形で撮影を行い 動物を傷つける行為は一切行っていません」というテロップにも安心しました。
明日菜子 もはや「ダーウィンがきた!」のような迫力です。やっぱり動物モノって泣いちゃう。
綿貫 動物たちを通じて命の大切さを学んでいく話ですが、北海道が舞台ということもあり、これは“主題歌・中島みゆき”でもいいのではってくらいの壮大さですよね。
明日菜子 「ダーウィンがきた!」つながりで、MISIAさんの曲も合いそう! 聡里と綾華(當真あみ)は寮のルームメイトなんですけど、最初衝突してすぐに仲直りするのがかわいかった(笑)。そして佐藤寛太さんの上級生役がぴったりすぎて、もはや自分の先輩だったという存在しない記憶が作り出されています。
綿貫 (笑)。萩原利久さんのオタクっぽい同級生役や石橋静河さんの上級生役もいいですよね。
「クジャクのダンス、誰が見た?」で考える冤罪・死刑制度
──TBSの金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」はいかがでしょう? クリスマスイブの夜に元警察官の父・春生(リリー・フランキー)を殺された心麦(広瀬すず)が、遺された手紙を手がかりに真相に迫るサスペンスです。
明日菜子 毎週楽しみに観ています。この作品は、視聴者だけでなくキャストにも犯人が明かされておらず、キャスト同士で疑い合っているのを見るのが楽しいです。放送後に「あいつ怪しくないか?」と視聴者と一緒にキャストも考察している(※)のがテレビドラマの楽しみ方として新しいですよね。
※編集部注:弁護士・松風義輝役の松山ケンイチがXで「怪しい人選抜選挙」を実施し、話題を集めている。
綿貫 物語の要素を挙げていくと「主人公が家族を殺された生き残り(現状フラグ)」「オープニング映像の森の描写」「クリスマスイブに殺人事件」「冤罪」……というピースがそろった。これ、「眠れる森」という1998年放送の中山美穂さん・木村拓哉さんダブル主演のミステリードラマとまったく同じ要素なんです。独自性として言及するのであれば、「クジャクのダンス、誰が見た?」は、冤罪や死刑制度への疑問、懸念を問う作品だということ。容疑者の遠藤友哉(成田凌)だけでなく、22年前に起こった東賀山事件の犯人として逮捕された死刑囚・遠藤力郎(酒向芳)は、実は冤罪だったかもしれない。「エルピス」が放送され、袴田巌さんの無罪確定の経緯までを見守った私たちが、国家による最大の人権侵害の1つである冤罪、そしてそれに伴う日本の現行の死刑制度とどう向き合うかを示してくれているのではないかと想像しています。
明日菜子 脚本を手がける金沢知樹さんは同クールの「東京サラダボウル」の脚本も執筆していますが、どちらも面白い! 東賀山事件も絡んでいながら、物語の主題は春生を誰が殺したのかという点。第2話の時点で弁護士の波佐見(森崎ウィン)を大好きになってしまったので、彼が真犯人だったら人間不信になる……。あとこのドラマを観ると毎回ラーメンが食べたくなります(笑)。
綿貫 わかる、あの屋台のラーメン屋さん気になる。スカイツリーも見えるしロケーション最高だよね。あとは、心麦の背負ってるものが大きすぎるので、できれば平穏な大学生活を送ってほしい……。
「御上先生」は学園ドラマというより、社会派に分類される作品
──同じくTBSの日曜劇場枠では「御上先生」が放送中です。
明日菜子 日曜劇場という大きな枠で、現代社会のあらゆるところにジェンダーバイアスが潜んでいることを突きつけている。すごく意欲的なことをしている作品だと思います。ただ脚本がテクニカルだからこそ、視聴者はある意味、距離を置きながら観るべきだと思うんです。メッセージ性が強くて真っ当なことを言っているけど、一番危険なのは劇中のセリフを聞いて世の中のことをわかった気になってしまうこと。作品としてもディスカッションすることや考えることの大切さを伝えていると思うので、ただすべてを鵜呑みにするのではなく、作品を通して自分自身で考えていくことが大事だと思います。
綿貫 ビジュアルに書かれているキャッチコピーは「辞令 日本教育の破壊を俺に命ずる。」。日本の教育にメスを入れるというテーマはこれまでの学園ドラマにあまりなかったので、めちゃくちゃ楽しみでした。というのも、友人らと日本社会の構造や問題について話す際に結局「学校教育が悪い」という話に落ちてしまう。日本の学校制度は、上の言うことを聞くサラリーマン養成所。詰め込み型教育で、性教育をはじめとする人権教育も不十分だと思うんです。だからこそ、そこに切り込んでくれるか?と期待したので、思っていたのとは違ったなというのが最初の印象です。ただ社会派ドラマは好きなので期待しています。
明日菜子 御上(松坂桃李)の過去や、試験会場で起きた殺人事件の犯人・真山弓弦(堀田真由)をめぐる真相も、今後明かされていくんでしょうね。
綿貫 御上と官僚の同期・槙野(岡田将生)の関係性がどうしてこじれてしまったのかも気になります。まだまだ謎が多いので、これからも一番大事な生徒たちが置いてけぼりにされないといいな。1月に始まった学園ドラマですから、3月の最終回で熱く卒業シーンを見たいんですよ!
明日菜子 わかります! 副担任の是枝(吉岡里帆)がコテコテ学園ドラマである「金八先生」のDVDや「GTO」のマンガを集めているというシーンもありましたが、全体的に殺伐とした雰囲気なので、いっそのこと御上先生と生徒が一緒に河原を走るシーンとか見たい! 「御上先生!!(涙)」と先生に駆け寄る青春シーンは今のところ想像できませんが(笑)。生徒たちが御上先生に触発されて、さまざまなことを考えて明るい未来に進んでほしいなと思います。
綿貫 学園祭シーンとかないかな……? 生徒たちが演劇を通じて社会の問題点を伝えたら御上先生が喜んでくれるかも。是枝も視聴前は「熱血タイプで御上とぶつかるキャラクターなのかな?」と予想していましたが、そういうわけでもないところがいい。うちに抱えているものがすごく多い等身大の教師像で、これから御上と共闘していってほしい。
──お二人は学園ドラマには、どうしても王道の要素を求めてしまうのですね(笑)。
明日菜子 (笑)。「御上先生」はやっぱり学園ドラマというより、社会派に分類される作品なんだと思います。
綿貫 そうですね、学園ドラマのファンというよりは、映画「新聞記者」など社会派作品に興味がある人にお薦めしたいです。劇中で御上先生が「Personal is political.(個人的なことは政治的なこと)」と口にしますが、これはフェミニズムを学んでいると必ず出てくる言葉。ドラマを通じてこの言葉を伝えるというのは、本当に素晴らしいと思いました。難しい議題に切り込んでいくから視聴者の情報整理能力は問われますが、勉強になる作品です。
「法廷のドラゴン」の“セーラームーン方式”が好き
──そのほか、お二人が語りたいドラマはありますか?
明日菜子 「法廷のドラゴン」はテレビ東京ならではの安定した作りと豪華なキャスティングが掛け合わさった良作です。作風からマンガ原作かと思っていたので、オリジナルだったとは驚きました。竜美(上白石萌音)と虎太郎(高杉真宙)のコンビも応援したくなる!
綿貫 竜美は将棋の天才で、将棋の戦法になぞらえて裁判していくんです。私は将棋の知識がまったくないんですが、きちんと説明してくれるのでありがたい。ただ、説明してもらったうえでも理解できていないので、その将棋の手が法廷での戦略とどうリンクしているかはよくわかっていません(笑)。
明日菜子 竜美がここぞという場面で勝負服に着替えるところが好き。
綿貫 わかる! 戦うときは変身する一種のセーラームーン方式ですよね。
「アンサンブル」明日菜子&綿貫コンビが宇井に言いたいこと
──同じくリーガルドラマで、かつラブストーリーの「アンサンブル」についても感想を伺いたいです。
明日菜子 ちょっとこの作品は……要審議ですよ(笑)。「瀬奈(川口春奈)は踏切にトラウマがある」「瀬奈は雪の降り始めが好き」「瀬奈の元彼は宇井(田中圭)」というのが物語のキーポイントなのですが、第1話のラスト2分間で突然全部そろうんです。踏切が鳴って、真戸原(松村北斗)が瀬奈の耳を塞いであげたら雪が降ってきて、そしていきなり宇井も現れて……急に詰め込みすぎじゃない!?
綿貫 唐突なシーンがけっこう多くてびっくりするよね(笑)。そもそも瀬奈と宇井は8年も音信不通だったわけで、たまたま近所に住んでるのおかしくない? 瀬奈と宇井の別れ方も謎。宇井から「別れよう」とメッセージが来て、瀬奈が彼のアパートに走って行ったらもう、部屋がもぬけの殻! これもはや失踪事件じゃん。
明日菜子 “リーガルラブストーリー”と銘打っていますが、もう第3話から法廷に立たなくなっていたし……。
綿貫 そうなんだよね。ということはラブストーリーが主軸なはず。だけど瀬奈は真戸原に気があると思うし、宇井との三角関係が見どころになるのか疑問なんですよね。
──ラブストーリーだと特に、現実ではありえない偶然の出会いやまさかの出来事が発生することがよくあると思います。そのような展開がスパイスになり視聴者が盛り上がることもありますが、今回のお二人のように「ありえないでしょ」と冷めてしまう場合も。その差はどこから来るんでしょうか。
綿貫 最終的に付き合うことが確定路線の2人だと、ありえない出会いをしていてもラブコメの醍醐味!と思えるんですが、この作品では偶然を呼び起こしているのが元彼の宇井なんですよ。たしかに真戸原も都合よく瀬奈の会社にやってくるんですけど、そっちは結ばれると信じているからあんまり気にならないというか。宇井はなんというか……ちょっと怖いよ。
明日菜子 宇井は娘もいますし、視聴者としては普通に瀬奈と真戸原カップルを応援してるので、唐突に現れる宇井にキュンキュンしにくいところはありますね。
──なるほど……。今回もたくさんドラマについて語っていただき、楽しかったです。ありがとうございました!
※記事初出時、一部記述に誤りがありました。お詫びして訂正します。
明日菜子(アスナコ)プロフィール
毎クール25本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。好きな学園ドラマは「野ブタ。をプロデュース」。
綿貫大介(ワタヌキダイスケ)プロフィール
エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。好きな学園ドラマは「3年B組金八先生(第5シリーズ)」。
記事に登場したドラマの放送日時はこちらから
月10ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」
カンテレ・フジテレビ系 毎週月曜 22:00~22:54
火9ドラマ「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」
フジテレビ系 毎週火曜 21:00~21:54
土ドラ9「相続探偵」
日本テレビ系 毎週土曜 21:00~21:54
水ドラ25「晩餐ブルース」
テレビ東京、テレビせとうち 毎週水曜 25:00~25:30
夜ドラ「バニラな毎日」
NHK総合 毎週月曜~木曜 22:45~23:00
土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」
NHK総合 毎週土曜 22:00~22:49
金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」
TBS系 毎週金曜 22:00~22:54
日曜劇場「御上先生」
TBS系 毎週日曜 21:00~21:54
ドラマ9「法廷のドラゴン」
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送 毎週金曜 21:00~21:54
土ドラ10「アンサンブル」
日本テレビ系 毎週土曜 22:00~22:54