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〝理想の笑福亭鶴瓶像〟なんて一切なし。理想どおりになった試しがないですから(笑)。

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笑福亭鶴瓶 (撮影/源 賀津己)

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ノンストップで2時間以上もしゃべり倒す「鶴瓶噺」は、ランキング形式じゃない点も独特だ。たとえば、「2024年に思い出深かったエピソードTOP10」などではなく、有名無名、老若男女を問わず、笑福亭鶴瓶が出会った人々との出来事が縦横矛盾にしゃべり倒されていく。共通項はただひとつ「本当にあったことが一番おもしろい」だけ。取材現場でも「こんなのどう?」と、正月休みをすごしたハワイの思い出から語られたのだった。

「正月休みはハワイですごしたんですけど、ある時、赤ワインを買おうとしたら『IDを見せてください』と店の方が言うんですよ。『え?』と思いつつも『いくつから上ならOKなんですか?』と聞いたら『21歳以上です』って。ウソでしょと。微妙な年齢だったらわかるんですけど、僕、73歳ですから(笑)。そのハワイにはマネージャーもいっしょだったんですが、彼は意外と辛辣な人なんです。東京や大阪で、ずっと話しかけてくるタクシーの運転手さんがたまにいるんですね。僕は全然気にしないんですけど、ある時、うちのマネージャーが『運転手さん、集中してください!』って。車内が気持ち悪いぐらいシーンとなりました(笑)」

ハワイから戻ったばかりだというのに、『鶴瓶噺2025』への準備はすでに始まっていた。鶴瓶噺の素となるキーワード1000個ほどが手書きで抜き出されていたのだ。鶴瓶噺は直近のエピソードも語られるが、何年も前の出来事が舞台上で思い出されることもある。つまり、鶴瓶噺の素は年々増加していくわけで、本番前の準備も大変さが増していく。

「大変といえば大変なんでしょうけど、でも、結局は好きなんでしょうね、鶴瓶噺が。自分の身の丈にあってるし、嘘がない。もちろんね、忘れている出来事はやっぱりあるんです。考えたら、高校を卒業してからだって、もう60年近くたってるわけでしょ? 当時からいまだに付き合ってる連中がめっちゃ多いんですけど、公演後の僕の楽屋は、ちょっと珍しい感じかもしれません。高校時代からのツレだけじゃなくて、幼稚園からの幼なじみや中学時代からの友達、学校の先生も来てくれたりして50人ぐらいが集まるから(笑)。そんな友達から『最近、高校時代の話はしてへんな?』とも言われましたし、今回は昔のこともしゃべろうかなぁとも考えています」

1972年の入門から数えても50年以上。若くしてブレイクした笑福亭鶴瓶だが、師匠から落語を教わることはなく、やがて独自の話芸=鶴瓶噺を確立するに至る。まだまだこれからだった若手の頃、理想の笑福亭鶴瓶像はあったのだろうか?

「いやいや、まったくなかったです(笑)。だって、こうなりたいまでいかなくても、小さな理想だって、そのとおりになった試しがないですから(笑)。いまでも自分自身に言い聞かせるのが『順番に順番に』という言葉なんですけど、急に理想なんて掲げたってうまくいくわけがない。鶴瓶噺の準備だってそうで、順番に順番に、ちょっとずつちょっとずつやっていかなければ、自分がおもしろいと思う形になんてならないですから。でもまぁ、いまやっている準備は、昔のお母さんたちの内職のようなコツコツさですけど(笑)」

〝コスパ〟や〝タイパ〟とは無縁の笑福亭鶴瓶流モノづくりの真髄。インタビューが終わろうとする頃も「こんなのどう?」と鶴瓶噺の素は無限にあるかのように紡がれるのだった。

取材・文/唐澤和也
撮影/源 賀津己

<公演情報>
『TSURUBE BANASHI 2025』

■東京公演
公演日程:2025年3月6日(木)~9日(日)
会場:世田谷パブリックシアター

■大阪公演
公演日程:2025年3月13日(木)~16日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/tsurubebanashi2025/

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