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【栗山英樹さんインタビュー】「言葉には世の中を巻き込む力がある」

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栗山英樹

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北海道日本ハムファイターズを監督として10年間率いた後、2023年WBCで「侍ジャパン」監督として野球日本代表を世界一に導いた栗山英樹さん。現在は北海道日本ハムファイターズのCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)として活躍し、新人の育成にも力を注いでいます。

そんな栗山英樹さんの著書『栗山英樹の思考 若者たちを世界一に導いた名監督の言葉』が昨年10月に刊行され、話題となっています。

幼少期から現在までの野球人生を記した文章と、監督としての12年間に語った「名言」を収録した「栗山英樹語録」、愛読書を語る「栗山英樹の本棚」の3部構成で、名監督・栗山英樹の「思考」を読みとく1冊です。

その刊行を記念して行われた書店イベントで、栗山さんに著書『栗山英樹の思考 若者たちを世界一に導いた名監督の言葉』について、お話をお伺いしました。

本当に「信じる」ことで、選手は力を発揮できる

──「栗山英樹語録」は、ファイターズと侍ジャパンの監督を務められた2012~2023年に、取材やインタビューで語られた言葉を収録した名言集です。監督として、言葉を発するときに心がけていたことはありますか?

「言葉には世の中を巻き込む力というか、そういうものがあると思います。特にプロ野球や日本の野球は、みんなが話題にすることで、世の中にとって大切なことを伝える力があると思うんです。なので、どうやったら世の中を巻き込めるのかっていうことは、言葉を発するときに常にイメージはしていました。

例えば、2023年のWBCで日本代表メンバーに日系メジャーリーガーのラーズ・ヌートバー選手を選んだときは、“魂を持って、思いをひとつにしてやっていきたい”という思いを伝えながら、ファンの人たちにも“そういうのやろうぜ!”っていう空気を起こさないと、と思いました。だから、どういう言葉でこの思いを伝えるか、どう言葉を発したらファンの人たちが反応してくれるか、というのはすごく考えましたね。

でも、いまこの本を読み返してみると、何を伝えるかを意識して、考えて発した言葉もあれば、思わず本音が出てしまっている言葉もありますね。意識はしているけど負けた悔しさでつい出てしまった言葉とか。このとき本当に悔しかったよなーって思いますし、まだまだ人間が練れてないなとも感じました(笑)」

──「栗山英樹語録」に収録された数多くの言葉の中でも、「何が起こっても、僕は選手を信じる」(2023年1月、WBCメンバー先行発表で)と、「挑戦し続けなさい。そして信じ続けなさい」(2023年4月、大学の入学式で新入生へ贈った言葉)という言葉は印象的でした。「信じる」という言葉は、栗山さんにとって重要なワードのように思われます。

「監督というのは、自分が決断して選手にやってもらうわけですから、例えば『頼むよ』って選手に言うときに本当に自分が心の底から思っている、その気持ちが大事なんです。言葉で『頼む』って言ってるのに心の底から頼んでないとうまくいかないし、後で一番後悔する。

例えば僕がテスト生でプロ野球に入った頃ぐらいの昔の野球というのは、『お前ができるかどうかはわかんないけど、まあやってみろよ』みたいな雰囲気だったんですね。

でも自分が監督になって思ったのは、それよりも、選手に対して『本当に信じてる、ここはあなたしかいないんです』って心から思って、言葉にして言ったほうが、おそらく選手たちは力を発揮しやすいということなんです。僕にとっての“信じる”っていうのは、そういうことかなと思います」

──選手を信じる気持ち、自分を信じる気持ちを自分の中で生むために何をするのか、また困難にあった時にどうやって自分を奮い立たせるか、栗山さん流のやり方はありますか。

「これは本当に経験ですね。結局生きるって大変だし苦しい。でも、うまくいかなくてもがき苦しんで、何かちょっとだけ前に進む。そういうときに自分が変わっていくと、良かったな、と思える瞬間がやっぱりあるんですよ。

苦しめば苦しむほど、嫌なことがあればあるほど、『これを乗り越えれば』って思うとほっとするっていうんですかね。選手たちの成長を見ていても、艱難辛苦にぶち当たったときに、どう乗り越えるかというところで、やっぱり人は良くなっていくと思います。

だから今は、うまくいかないことがあると『いいね、宿題。俺まだ大きくなれるね』みたいに思ったりするっていうのはありますね」

──「栗山英樹語録」でもうひとつ印象的なのは「やっつける」という言葉でした。例えばWBCでは「アメリカをやっつけて勝つ」と何度も言われています。これも自分を奮い立たせる言葉なんでしょうか。

「『やっつける』って、僕としては子どものときの喧嘩のような感じで、正々堂々と体ごとぶつかって戦って、そして相手を上回る、というイメージがある言葉なんですね。だから、自分としては『やっつける』という言葉を使うときは相手へのリスペクトが大前提にあるんです。

戦う相手が大きな存在である、リスペクトできるすごく大きな存在であるって、僕にとってはうれしいんですよね。例えば中学生の頃から憧れの存在である原辰徳さんと、ジャイアンツの監督とファイターズの監督として戦った2012年の日本シリーズであるとか。

2023年のWBCも、僕はアメリカのメジャーリーグが大好きで、数えきれないぐらいアメリカでメジャーの試合を見ましたけど、そのメジャーのスター選手たちと勝負ができるっていうのは、もうこのうえない喜びだったんです。だからこそ、どうしても“アメリカをやっつけたい”って思ったんですね。

だからどうしても決勝まで行きたかったし、今思ってもあれ以上の喜びはないっていうぐらいうれしかった。『やっつける』と言う相手ほど、リスペクトがすごく大きい、自分にとって大きな存在だと思います」

本を読むことはひらめきになり、学びになる

──いっぽう、『栗山英樹の思考』の「栗山英樹の本棚」では、読書家で知られる栗山さんの愛読書が紹介されています。『論語と算盤』から『坂の上の雲』『博士の愛した数式』まで、ジャンルも幅広いですね。

「幼い頃から本を読んではいましたが、いろいろな本を読むようになって、本当に本好きになったのは30代、40代頃からなんです。監督時代は本が支えになりましたし、本を読むことで、新しい情報や考え方を取り入れられます。選手たちにも、空いた時間で本を読むようにと言ってきました。本を読むことで学びになるし、ひらめきを得ることもできる。そう考えているからです。

ここでは、『論語と算盤』『生き方』などの経営者が書かれた本や、『坂の上の雲』『真田太平記』などの歴史小説、『男子の本懐』などの伝記小説、そして『球道恋々』『風が強く吹いている』など、野球・スポーツの小説も紹介しています」

──今年のシーズンオフの間はどんな本を読まれて、どんなふうに過ごしていたんですか。

「年末年始は、今まで読んだ本をまたひっくり返して読んでいたっていう感じですね。2024年1月からファイターズのCBOを務めていますが、2025年はますますしっかりと仕事をしていく年だと思っているので、自分でもう一度原点に返るためにも、世の中でよく読まれている哲学書とか、いわゆる書店さんで売れ筋No.1の本とか、そういう本をもう一度読み直していました」

──書店に行くのもお好きだそうですね。

「ものすごく好きですね(笑)。いつも行く都内の大きな本屋さんがあるんですが、行くたびに本をすごくたくさん買ってます。ラフな格好でうろうろして、面白そうな本を見て、『ああ、いまこんな本が売れてるのか』って思ったりして。本屋さんにいるときは本当に幸せですね。

本屋さんもだんだん少なくなっていますけど、駅を降りたら小さくても本屋さんがある、っていうのはいいですよね。この街ではどんな本を一番前に置いてるのかなって見ることとかが、うれしいですね」

<プロフィール>
栗山英樹(くりやま・ひでき)

1961年生まれ。1984年ドラフト外でヤクルトスワローズに入団。1990年に現役を引退後、テレビ番組のスポーツキャスターとして活躍。2011年、北海道日本ハムファイターズの監督に就任し、監督1年目の2012年シーズンでパ・リーグ優勝を決める。2016年、ファイターズは7度目のリーグ優勝、日本シリーズも制し10年ぶりの日本一に輝く。2021年ファイターズの監督を退任。2021年12月、野球日本代表「侍ジャパン」トップチーム監督に就任。2023年3月の第5回WBCを制し、世界王座奪還を果たす。2024年1月、北海道日本ハムファイターズのチーフ・ベースボール・オフィサーに就任。

<書籍情報>
『栗山英樹の思考 若者たちを世界一に導いた名監督の言葉』

著者:栗山英樹
発行・発売:ぴあ株式会社
発売 :2024年10月11日(金)
定価:1650円(1500円+税)
体裁:四六判 228P

●CONTENTS●
[栗山英樹語録]
第一章「勝利への原動力」
第二章「夢を信じる」
第三章「諦めない、やり尽くす」
第四章「侍ジャパン、世界一へ」
[栗山英樹の思考]
・1983-2012年 ドラフト外入団、現役引退、ファイターズ監督就任へ
・2012-2021年 ファイターズ日本一へ!大谷翔平の伝説が始まる
・2021-2024年 WBC世界王座奪還、そして日本野球の未来へ
[栗山英樹の本棚]
“心が泣ける”小説/野球・スポーツの小説/人生の道しるべとなる歴史小説/ 人としての在り方を学べる伝記小説 /四書五経、思想、仏教などの本/経営者・財界人の本/etc

購入はこちら:
https://www.amazon.co.jp/dp/4835646967
https://book.pia.co.jp/book/b652570.html

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