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2025年度の世田谷パブリックシアターは“この世界にどう生きるか”問う、杉原邦生は宮川彬良とのタッグに興奮

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世田谷パブリックシアター2025年度ラインナップ発表会の登壇者。

世田谷パブリックシアターの2025年度ラインナップ発表会が、本日2月19日に行われ、芸術監督の白井晃をはじめ、2025年度の主催公演に携わる上村聡史、田中麻衣子、生田みゆき、長田育恵、高橋萌登、杉原邦生、瀬戸山美咲が登壇した。

冒頭では、2022年から芸術監督を務め、昨年から主催公演のプログラム作成を手がける白井が、ラインナップに込めた思いを語った。白井は「今年は『わたしは、この世界にどう生きるか』というテーマでプログラムを作りました」と述べ、「この数年で舞台芸術を取り囲む環境が大きく変わり、演劇離れが起きていると感じる。チケット代の高騰や動画配信サービスの発達で、若い世代が生の舞台に触れる機会が減った。昔の演劇を観ていない若いアーティストも多く、縦の系譜が途切れているという危機感があります」「公共劇場の存在意義が問われる時代になった」と思いを込めた。

6・7月に上演される「みんな鳥になって」では、レバノン出身のワジディ・ムワワドの作品を上村の演出で立ち上げる。過去にムワワドの「炎 アンサンディ」「岸 リトラル」「森 フォレ」を手がけた上村は「“イスラエル”という固有名詞が登場する本作は、ユダヤとアラブの対立・分断が市民生活を破壊していくという悲劇が意識されている」と話す。また上村は「炎 アンサンディ」に「鳥は複数形でなく、単数形で言わなければならない」という旨のセリフがあることを紹介し、「我々の生活に“分断”が迫っている。演出者としては、孤立に近い単数形と、慣例に従い共同体を作る複数形のどちらを選んで生きるべきか?という究極の問いを、本作を通じて投げかけたい」と言葉に力を込めた。

さまざまな芸術が“生まれ、育ち、花が咲き、実がなる”ことを目指すプログラム「せたがやアートファーム」では、7・8月にアリスター・マクドウォール作の一人芝居「キャプテン・アメイジング」を上演。1人の俳優が10以上の役柄を演じ分け、ある男とその娘の6年間が描かれる。演出の田中は「余白が多い戯曲ですし、トリプルキャストそれぞれによって異なる印象を味わってほしい。また作者はアメコミ好き。スーパーヒーローに詳しい方は『そう来たか!』と楽しめるオマージュもあります」と述べた。

世田谷パブリックシアターは、国内の若手クリエイターを育成し、国際的に発信する企画・あたらしい国際交流プログラムをスタート。その第1弾となる8月のリーディング公演「不可能の限りにおいて」では、国際赤十字社や国境なき医師団の支援者の証言をもとにした作品が展開する。生田は「“可能な範囲で”という言葉はよく使われますが、作品の元になった人道支援者の皆さんは、不可能がベースにある環境で働いています」「1人の力で世界を変えるのは難しい。かといって何もしないわけにはいかない。そのジレンマを持ちながら活動している方の証言を日本でご紹介できるのは、とても意義あること」とコメントした。

11・12月に上演されるのは、ヘルマン・ヘッセの小説を原作に、長田が劇作、白井が演出する「シッダールタ」。同作では、仏陀と同じ名を持つ青年シッダールタの物語が展開する。ヘッセを愛読し、本作の舞台化を強く望んでいたという白井は「自分で言うのもなんですから、長田さんお願いします」と投げかけ、記者を和ませる。白井と初タッグとなる長田は「劇作家として最高難度の作品になる」「シンプルに、自分の自我がどこに向かうのか、人間という存在は重要なのか?という問いを突き詰める作品になると思います」と言い、「作品を通じ、最後は深いところにたどり着けたら」と意気込みを述べた。

12月のシアタートラム・ネクストジェネレーション vol.17-フィジカル- 高橋萌登・MWMW「新作公演」で構成・演出・振付を担う高橋萌登は作品のテーマを「人がいないはずなのに妙に懐かしさや不安を感じさせる場所として、インターネット文化で注目されている“リミナルスペース”」と説明し、「私はクラシックバレエとストリートダンスを織り交ぜて振付をしており、ジャンルのどこにも属さず“狭間”にいる感覚がある。そのあいまいさを作品に落とし込みたい。普段ダンスを観ない方にも面白く観てもらえたら」と構想を述べた。

来年2月の「黒百合」は、泉鏡花の作品を元に藤本有紀が脚本を担う。演出の杉原は「泉鏡花は、人間という生き物が自然の一部であることから目をそらさず作品を立ち上げていることが印象的」と話し、本作の音楽を宮川彬良が手がけることについては「宮川さんは、僕が人生で一番観ている演劇『身毒丸』と、僕がディズニーランドで一番観ているショーの両方で音楽に携わっているんです!! ご一緒できることに興奮していますし、皆さんも興奮して帰れる舞台になれば良いなと思います」と瞳を輝かせた。

来年3月の音楽劇「コーカサスの白墨の輪」では、ベルトルト・ブレヒト作品をもとに、瀬戸山が上演台本・演出を担当。瀬戸山は「作品を時代に即した形でお届けするために、台本と演出を考えたい。本作には、今起きている戦争が終わったあとどんなことが起きるかが描かれています。ですので今回はあえて本作を今より未来の物語に書き換え、戦争が終わったあとの世界を舞台として再構成したい」と構想を口にし、「頭と身体を両方刺激する作品にできたら」と抱負を述べた。白井は瀬戸山の言葉を受け「未来の設定ですか! 驚きましたし、すごく楽しみになりました」と目を丸くし、「皆さんのお話を聞いていて、『今年のラインナップは面白そうだなあ』と思いました」と笑顔を浮かべた。

このほか2025年度も、海外からさまざまなサーカス、ダンスカンパニーが来日。7月にはアメリカから初来日するアロフト・サーカス・アーツ「ブレイブ・スペース」が上演されるほか、9月にはベルギーからピーピング・トム「トリプティック」、10月には6年ぶりの来日となるカンパニー・ルーブリエ / ラファエル・ボワテル「Ombres Portées / キャストシャドウ」が予定されている。

そのほか世田谷パブリックシアターの公演事業としては「フリーステージ 2025」「せたがや 夏いちらくご」や、世田谷アートタウン 2025「三茶 de 大道芸」、そして「地域の物語 2026」を開催。また学芸事業として、小学生から22歳までの年齢の人たちが一緒に演劇を作る“子どもごちゃまぜ演劇ワークショップ”や、演劇にじっくり取り組みたい中学生を対象としたワークショップ”世田谷パブリックシアター中学生演劇部”など、さまざまな企画や試みが行われる。

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世田谷アートタウン 2025「三茶 de 大道芸」

2025年10月
東京都 キャロットタワー周辺

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