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チャオ・リーイン、リウ・イーフェイ、アンジェラベイビーはなぜファンの心をつかむのか?|中国ドラマ女優放談 Vol. 1(後編)

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中国ドラマを彩る女優たち。左からチャオ・リーイン(趙麗穎)、リウ・イーフェイ(劉亦菲)、アンジェラベイビー(楊穎)

近年、日本でファンを増やし続けている中国ドラマ。豪華絢爛な宮廷劇や、幻想的な世界が描かれるファンタジー、等身大の恋愛を描いた現代劇など、そこで生きる女性を見事に演じる女優たちに心つかまれる人も少なくないだろう。

連載「中国ドラマ女優放談」では、作品を彩る女優たちにフォーカス。第1回となる今回は、ライターの小酒真由子と島田亜希子にヤン・ミー(楊冪)、ティファニー・タン(唐嫣)、リウ・シーシー(劉詩詩)、チャオ・リーイン(趙麗穎)、リウ・イーフェイ(劉亦菲)、アンジェラベイビー(楊穎)という1980年代生まれのトップ女優たちについて前後編にわたって語り合ってもらった。

前編はこちらから

取材・文 / 金子恭未子

チャオ・リーイン(趙麗穎)はかわいいけど、くせ者といったバランスをうまく演じてくれる(小酒)

──前編ではお二人にヤン・ミー(楊冪)、ティファニー・タン(唐嫣)、リウ・シーシー(劉詩詩)についてトークしていただきました。後編のトップバッターは、1987年10月16日生まれで、85后を代表する1人チャオ・リーイン(趙麗穎)です。Weiboのフォロワー数は約9210万人(2025年2月時点)。東京国際映画祭で来日しましたが、すごい歓声で、人気の高さを改めて感じました。

島田亜希子 チャオ・リーインは国内・海外ともに人気が高いハイブリッド型という印象です。「楚喬伝(そきょうでん)~いばらに咲く花~」が欧米で人気だったり、「明蘭~才媛の春~」が日本でも話題になっていたり、海外での評価がとても高い女優さん。可憐で控えめで、ガツガツキャリアを積み重ねていくぞ!みたいな印象はあまりないんですが、近年は「風吹半夏」(邦題「鋼の華 ~半夏が咲く~」)のようなヒューマンドラマでも成功していて、中国電視劇飛天奨で優秀女優賞、中国電視金鷹奨で最優秀主演女優賞を獲っていたり、賞レースでもどんどん名前が上がってきている。1985年以降生まれの「85后」と呼ばれる女優さんたちの中でも、頭1つ抜けた存在かなと。2023年ぐらいからは、映画にもバンバン出るようになって、幅広い活躍が国内外で注目されていますよね。

──小酒さんはどんな印象を持っていますか?

小酒真由子 私は「お昼12時のシンデレラ」を観たときに、なんてかわいらしいんだ!と。彼女の場合はただ愛らしいだけじゃなくて、一筋縄ではいかない雰囲気も感じるんです。だから「明蘭」や「与鳳行(よほうこう)」のようなヒロインが似合う。かわいいけど、くせ者といったバランスをうまく演じてくれるイメージがあります。あと、童顔だと重厚感のある映画ではハンデになる場合もありますけど、チャオ・リーインはいろんな役にハマって、「チャオ・イェンの思い」のようなシリアスなものも上手に演じてくれる。私は彼女に底知れないパワーを感じていて、すごくガッツがあるというか、ハングリー精神もある人なんじゃないかなと思っています。

島田 見た目が癒やし系だから、最初はそっちのイメージに引っ張られて、ふんわりしているっていう印象は受けるかもしれないです。

小酒 そうそう。私は強い女性なんじゃないかなと思うんです。「明蘭」のように、意地悪に対してやり返して、してやったりみたいなものも上手に演じてくれる。チャオ・リーインが演じたからこそ、「明蘭」は面白くなったと思うんですよね。ウィリアム・フォン(馮紹峰)が演じた役も一筋縄ではいかない男性だったので、カップリングも面白かった。

島田 チャオ・リーインと共演すると俳優さんの評価がさらに上がる印象があります。チャン・ハン(張翰)とか、ケニー・リン(林更新)とか、ウィリアム・フォンも。そういう意味でも持っている人なのかなと。彼女は、名門大学出身ではなく、オーディション番組出演がデビューのきっかけで。そこでフォン・シャオガン(馮小剛)に見初められた。だから天性の才能があったんでしょうね。瞬発力というか。

小酒 彼女の出演作は評価が高くて、印象に強く残る作品が多いですよね。「あー、またこのパターンね」とならず、いい作品に出ている。だから海外でも人気があるのかなと。

島田 自分に合った作品をうまく選んでいるのかなと思います。彼女の作品に惚れる人が多いし、そこでの彼女の演技も素晴らしいから支持される。あと、彼女はアクションがうまいと言われていて、しっかり努力する、芯の強さがあるんじゃないかと思います。

──彼女の出演作の中でお薦めの作品を挙げるなら?

島田 私は「明蘭」がすごく好きですかね。役にとても合っていました。

小酒 私は「お昼12時のシンデレラ」をぜひ!と。ヒロインがお昼に、社長の隣でもぐもぐお弁当を食べている姿がすごくかわいらしいんです。でも、主人公が彼女を好きになったのは、ただかわいらしくもぐもぐ食べてるからじゃないぞっていう魅力があって。チャオ・リーインのよさが濃縮されています。

──2人にご出演いただいた中国の現代ドラマコラムでも小酒さんは、「『お昼12時のシンデレラ』が1番最初に日本でウケた中国の現代ドラマという印象がある」とおっしゃっていましたよね。

小酒 そうですね。日本でもインパクトがあった作品ということでぜひ観てほしいドラマです。

リウ・イーフェイ(劉亦菲)は仙界から降りてきた感じ(小酒)

──続いてお話しするのは、1987年8月25日生まれのリウ・イーフェイ(劉亦菲)です。Weiboのフォロワー数は約7350万人です(2025年2月時点)。

島田 彼女は海外発展型のスターというイメージもありつつ、国内に戻ってきてからも「夢華録(むかろく)」や「玫瑰的故事」をヒットさせているので、やっぱり中国での人気も高い。私の中ではずっと「神鵰侠侶」の小龍女の印象が強かったので、「夢華録」での貫禄ある姿に、びっくりしました。若く見せようとかそういうんじゃなく、いい歳の取り方をしていて、美しい。全体から魅力があふれ出ているというか。女性のファンも多いんじゃないかと思いますね。

小酒 昔はキラキラした若さがあって、そこから歳を重ねて、年相応のオーラが出てきたなと、「夢華録」を観たときに思いました。彼女の作品は、視聴者の記憶に鮮烈に残っているものが多いので、ハリウッドに行って、戻ってきても、変わらず中国で人気が高いのかなと。リウ・イーフェイってアメリカ育ちの自立した女性のイメージがある一方で、昔から古風な時代劇が似合うんですよね。そういうところが唯一無二だなと。

──時代劇の衣装、すごく似合いますよね。

小酒 そうなんですよね。今でも「仙女様」って呼ばれている。

島田 「夢華録」で共演した、クリス・スン(孫祖君)も彼女のことが大好きで、インタビューで「仙女、仙女」って言ってました(笑)。俳優さんにとっても憧れの存在で、スターなんだなと思います。

小酒 シュー・ハイチャオ(徐海喬)もリウ・イーフェイとの共演に、はしゃいでいましたよ(笑)。彼女と共演できるから、この作品に出演したいと俳優が思う、そういう影響力がある。選ばれしものというか、仙界から降りてきた感じ(笑)。

島田 浮世離れしていて神秘的で、特別なところに惹き付けられます。金庸原作の武侠作に出ても似合うし、現代劇でもやっぱり魅力的。

小酒 中国の伝統的な美を体現しているイメージがあるんですかね? ちょっと古風なよさというか。

島田 欧米の人が考えるアジアンビューティーのイメージ通りという感じもします。

小酒 中国が求めている美と、世界が求めているアジアの美を兼ね備えているのかもしれないですね。

──彼女の出演作の中でお薦めの作品を挙げるなら?

島田 「神鵰侠侶」ですね。仙女な彼女を観るならこれでしょ!と。

小酒 私は「仙剣奇侠伝」です。清純な魅力と輝く若さで、すごくキラキラしているんです。フー・ゴー(胡歌)演じる主人公とともに、異世界に連れて行ってくれるというか、もう本当に2人がアップになるたびにうっとりしてしまうんですよ(笑)。こんな輝かしい人を目の当たりにしていいの!?ってぐらい(笑)。「夢華録」でリウ・イーフェイを知った人はさかのぼって観たら衝撃を受けるんじゃないかと思います。「神鵰侠侶」の仙女はもちろん、「仙剣奇侠伝」のキラキラ感もすごいです。

──「仙剣奇侠伝」は今ならああいうふうには作れないんじゃないかな?と思ったりもしますし、リウ・イーフェイの歴史を振り返るうえでも観てほしいです。2024年にリメイクされた「逍遥(しょうよう)と花嫁~記憶に眠る愛~」はまだ観られていないのですが、とても観るのが楽しみです。

小酒 確かに、リメイク版は今の中国ドラマに合わせたキャラ設定とストーリー展開に変わっていますね。「仙剣奇侠伝」は、台湾、香港の俳優さんとスタッフが関わっていて、一緒に面白いものを作ろうとしていた当時の業界の勢いを感じさせる作品。あの時代のリウ・イーフェイのかわいらしさを本当に観ていただきたいです!

アンジェラベイビー(楊穎)は美しくて華があるからミステリーとの相性も抜群(島田)

──最後にお話しするのは、1989年2月28日生まれのアンジェラベイビー(楊穎)です。Weiboのフォロワー数は約1億500万人(2025年12月時点)です。

小酒 アンジェラベイビーは本当にお人形さんみたいで、演技よりビジュアルのほうが先行してしまうから、女優としては損しているなと思っていたんです。でも、「摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~」は、彼女の浮世離れした美しさがとても生きる役で、等身大のOLのような役より、ミステリアスな女性が似合うなと感じました。そういう意味では「風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-」もとてもよかった。日本ではモデルさんのイメージが強い人も多いと思うんですが、女優としてもずっとキャリアを積み重ねてきているので、今後すごい当たり役を見せてくれるんじゃないかと期待しています。

──あの美しさだからこそ、説得力のある役ってありますよね。

小酒 そうなんです。アンジェラベイビーは農村とかにはちょっと合わないというのが、女優として不利なところなんですが、逆にそれを逆手に取った役ってあると思います。

島田 もう私が言いたいこと、小酒さんが全部言ってくれました!(笑)

一同 (笑)

島田 モデルさんとしてのインパクトが強すぎて、どうしても演技よりそちらに目が向きがちだったと思うんですが、ミステリーと出会って、女優として注目度が高まってきたなと思いますね。美しくて華があるから、ミステリーとの相性が抜群。「風起隴西」みたいに、裏が見えない女性、ミステリアスなキャラクターもすごくいいなと思います。

小酒 本人は全然お高くとまってなくて、なんというか普通にとってもいい人そう。リアリティ番組に出ているのが功を奏していて、彼女の素敵な人柄がわかる。ただ現代劇で普通の役をやると、なんだろう……少し共感しづらいときもあるというか。だからカリスマ性がある役がハマる感じなんですよね。

島田 滅多にお目にかかれないぐらいの美人だからじゃないですか?こんなOLさん街にいないでしょ?(笑)。

小酒 そうそう。同じ人類であることすら納得できない自分がいますもん(笑)。

一同 (笑)

島田 小酒さんもおっしゃっていましたけど、ものすごく美しい一方で、バラエティでも大活躍していて、実は庶民派みたいなギャップが彼女の魅力ですよね。そのあたりのバランスが取れるような役があると、さらに女優として注目が集まってくるのかなと思います。

──彼女の出演作の中でお薦めの作品を挙げるなら?

小酒 やっぱり「摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~」です。最初に死んでしまうヒロインの役で、そこから時間をさかのぼっていくお話なんです。周囲の人がそれぞれの視点で語るヒロイン像を彼女がうまく演じ分けていて、本当はどういう人だったのかすごく知りたくなる。視聴者が興味を掻き立てられるカリスマ性が出せるのは、アンジェラベイビーだったからだと思うんです。ぜひ観てほしいですね。

島田 私は「風起隴西」をお薦めしたいです。男心を手玉に取る楽妓の役で、とてもうまく演じていました。バイ・ユー(白宇)演じる荀詡(じゅんく)の純情を利用しつつ、ニエ・ユエン(聶遠)演じる馮膺(ふうよう)を手玉に取って、みんながみんな彼女の美しさに夢中になってしまう。そして本当は……という。アンジェラベイビーじゃないとこの役はできないでしょ?と思ったので、今後もこういった役を観てみたいなと思います。

──今回は1980年代生まれの女優さんたちについてお話をしましたが、今後も例えば「宮廷ドラマ」「お母さん」が似合う女優さんなどさまざまなテーマでお話ししていけたらいいなと思っています。

小酒 優しいお母さん、厳しいお母さん、派手なお母さん、地味なお母さんとか、年齢層も幅広い。今、お母さんがテーマならズン・リー(曾黎)とかですかね。

──ズン・リーいいですね!

小酒 ドラマだと悪役もおいしかったりするので、悪女とかヒロインの親友ポジションとか。

島田 悪役からヒロインまで上がってきた、元悪役たちみたいなのも面白そう(笑)

小酒 脇役ポジションの女優さんは紹介したくてもする機会が少ないので、そういったこともお話ししていきたいですよね。

参加者プロフィール

小酒真由子

映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。雑誌「月刊スカパー!」、「見るべき中国時代劇ドラマ」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」「華流ドラマガイド」などのムック本、Cinem@rtなどのWeb媒体でアジアから欧米までドラマについて執筆している。

島田亜希子

ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「アジア俳優名鑑」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)、「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)などにも執筆している。