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菊之助が5月歌舞伎座での襲名披露で玉三郎との『京鹿子娘道成寺』共演 團十郎との『勧進帳』も調整中

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2025年2月14日、歌舞伎座で5月、6月に上演される「尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎 尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露」を控えた尾上菊之助の取材会が都内にて実施された。松竹創業百三十周年という記念すべき年の、数々のハイライトのひとつとなる公演だ。上演演目については、5月の公演での『京鹿子娘二人道成寺』『弁天娘女男白浪』、6月の『菅原伝授手習鑑』「車引」「寺子屋」、『連獅子』などがすでに報じられているが、この日は菊之助自身から襲名演目に関する新たな発表があった。

紋付袴姿で登場した菊之助は、冒頭の挨拶で、襲名演目についてこう報告した。

「最初の発表では5月の襲名演目を『二人道成寺』とさせていただいておりましたが、それを、『京鹿子娘道成寺』三人花子にて相勤め申し候、と変えさせていただこうと思っております。(坂東)玉三郎のお兄さんにお入りいただき、(玉三郎、菊之助、丑之助の)花子三人で勤めさせていただきます。同時に、5月は「團菊祭」。実は会社にお願いしていることがあります。この襲名演目の前に、(市川)團十郎さんと『勧進帳』を、團十郎さんの弁慶、私が富樫でさせていただきたいと思っています」

初代菊五郎は、二代目團十郎に見出されて江戸に出てきたという歴史がある。菊之助は昨年、初代菊五郎と二代目菊五郎の京都の墓、また大阪にある墓の一部を再建する縁を得たというが、そこには「初代から現在の七代目の、すべての菊五郎に対する尊敬と、すべてを受け入れて八代目を襲名したい」という強い思いがあったという。九代目團十郎、五代目菊五郎は「團菊」と並び称され、十二代目團十郎、菊之助の父である七代目菊五郎が「團菊祭」を守ってきたことも大きい。「八代目を襲名した折には、これは異例なことかと思いますが、襲名演目の前に、ぜひ團十郎さんと舞台に立たせていただき、菊五郎のスタートを切りたいと思っています」。

その後、松竹株式会社演劇部歌舞伎製作部の貞綱氏が、演目決定の経緯について説明。玉三郎に5月公演への出演について相談する中で、玉三郎から「襲名披露の演目にお付き合いさせていただけないか」と申し出があり、玉三郎と菊之助がふたりで『道成寺』を勤めてきたことも踏まえ、今回、菊之助、丑之助の『道成寺』に玉三郎が華を添えることになれば、と検討を進めたという。團十郎、菊之助の『勧進帳』についても現在調整中とのことで、詳細の発表が楽しみだ。

報道陣からは、襲名披露の演目への思い、今後の展望についてなど、次々と質問が寄せられた。襲名披露の日が刻々と近づくいま、どのような心持ちでその重みを感じているのか、と問われると、菊之助はこう答えた。

「古典演目を大切にしつつ、復活狂言、新作歌舞伎という三本柱に加えて、『新古演劇十種』の復活に取り組みたい。門閥の方とお芝居を作り上げていくことはもちろん、名題さん、名題下さん、部屋子さん、幹部の方と、枠を飛び越えて、一緒に、後進の指導をしつつ、開かれた歌舞伎を目指していきたいと思っております」

同時に、女方から始まり、江戸に出て立役に変わったという、初代以来の歴代菊五郎の偉業に思いを馳せる。

「当時は女方と立役を兼ねるのは難しいと言われていましたが、初代さんはそれを成し遂げ、三代目さんに関しては立役、女方、敵役、道化方と、天保の番付にもその幅広い役、全てをこなすとあります。歴代の菊五郎が築き上げてきた、立役、女方の両方を研鑽することは、私も引き継いでいきたいことです」

玉三郎との共演が、丑之助の大きな糧に

玉三郎の登場については、「ありがたい気持ちでいっぱい」と話す菊之助。長男・丑之助にとって、玉三郎とともに舞台に立つ機会がいかに意義深いことか──。菊之助は、自身の体験を振り返る。

「祖父(七代目尾上梅幸)と父(七代目尾上菊五郎)との『京鹿子娘三人道成寺』(1992年)が強く記憶に残っています。そのとき、私はとても手が出ず、大変な思いをしました。それが、芸に向き合う姿勢の、第一の転換期だったような気がしております。今回、玉三郎のお兄さんにお入りいただき、祖父もすごく喜んでいるのではないかなと思いますし、丑之助が、身近にいる私と、現代最高峰の女方である玉三郎のお兄さんと一緒にさせていただくのは、とても大きな糧になる。私も、玉三郎さんと一緒に踊って教えていただいたことが糧になっていますし、一人のときも、時々、横に玉三郎のお兄さんがいるつもりで踊ることがあります」

祖父、父との舞台で、自分の至らなさを痛感したという菊之助。「偉大な先輩方は、大変なことをいとも簡単にやる。足元にも及ばない。父は直接指導というよりも、考えさせる指導方法でしたから、自分でもっとこうなりたいという理想を高く持つことができましたし、これから偉大な先輩方に近づくために、もっと努力しなければいけない。その基礎を作ってくれたのが、祖父や父です」。

が、いざ丑之助の指導となると「私は、結構直接指導してしまうんです(笑)」という。「細かく教えますけれども、心情は大事にしなさいということは常に申し伝えております」。もちろん、玉三郎から多くを学んでもらいたいという思いも。「舞台に対する姿勢、それから作品を捉えるその考え方、そして踊り方、『道成寺』の作品というものはどういうものか、私は玉三郎さんに細かく教えていただきました。それを丑之助に伝えますが、やはり、一緒に踊るということは、何ものにも変えられない時間。私が初めて玉三郎さんと『二人道成寺』をさせていただいたとき、1日目は緊張と重圧で39度ぐらい熱が出ました(笑)。玉三郎のお兄さんも、丑之助にいろいろ話すねとおっしゃっていただいているので、非常に楽しみです」。

いっぽうで、「いまは、3月の『仮名手本忠臣蔵』に向けての重圧のほうが強いですね」と笑って明かす場面も。さらに5月、6月の歌舞伎座のあとは、7月の大阪松竹座での『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』が控えている。「世話物に関しては、五代目菊五郎、六代目菊五郎、そして二代目松緑のおじさまからうちの父へ、と伝わってきたものがある。それはこれからも大事にしていきたい。『髪結新三』、『魚屋宗五郎』、『文七元結』など、江戸の庶民が大事にしていた人情──困っている人がいたら、必ず助けるという江戸っ子の心意気というものを残していく。現代でも大切なことですし、先人たちから芸を受け継いで発展させて広めていくことこそが、襲名。お客さまの心に、昔の人が大事にしていた心をお届けすることが、古典演目をやる役者の役目だと思います」。

歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』特別ビジュアル。白拍子花子=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』特別ビジュアル。白拍子花子=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『弁天娘女男白浪』特別ビジュアル。弁天小僧菊之助=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『弁天娘女男白浪』特別ビジュアル。弁天小僧菊之助=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 車引』特別ビジュアル。梅王丸=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』特別ビジュアル。松王丸=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『連獅子』特別ビジュアル。狂言師右近=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、狂言師左近=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
歌舞伎座『連獅子』特別ビジュアル。親獅子の精=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、仔獅子の精=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)

「歴代の菊五郎は名優揃い。恥じぬよう勤め上げたい」

新作歌舞伎への取り組み、枠を超えて幅広く開かれた歌舞伎をという発言には、さまざまな思いが込められている。

「この世界に憧れをもって入ってきてくださる方、研鑽を積まれている方にも、江戸時代は当たり前のように機会があった。初代菊五郎もそうでした。それを改めて見つめ直す、ということだと思います。コロナ禍が通り過ぎても、以前に観に来ていただいていたご贔屓の方たちが、本当に戻ってきてくださっているかというと、難しい状況。いま、エンターテインメントは多種多様、 “推し活”という文化もとても素晴らしい。歌舞伎のご贔屓という言葉は、長く文化を愛し、ともに成長し、見守り、愛しつつ、厳しい目で見守っていくということです。また、日本人が一番大事にしているのは、恕──人のことを想い、慮ることで、それをお伝えするのが古典演目であり、歌舞伎の大切な役目。ですが、古典演目にすぐ『いらしてください』というのは難しい。新作歌舞伎や、いろんな趣向を凝らすことも大切だというふうに思います」

やがて話題は、6月上演の『菅原伝授手習鑑』に。菊之助は「寺子屋」の松王丸を、丑之助は「車引」の梅王丸を演じる。菊之助が「車引」の桜丸を初めて勤めたのは15歳のときだったが、「15歳でしたか──。教えをいただき、それをどう体現するのかということを常に考えていました。本当に手一杯でしたね」と回顧する。丑之助の梅王丸を決めた経緯についても、「岳父(二代目中村吉右衛門)が、「寺子屋」梅王丸を大切にしていました。岳父が大切にしていた演目をさせていただき、丑之助に伝えよというのが岳父からの言葉だと思っていましたので、「寺子屋」を6月の襲名に選びました」。11歳での梅王丸は、大きなチャレンジだ。「大変、だと思います。衣裳も重いですし太刀を使うのも結構大変。ですが、彼の心の中には岳父が生きていて、常に岳父に守られながら舞台に立っている。亡くなった日は丑之助の誕生日に重なった。岳父が大事にした演目をやってほしいという期待をこめて、梅王丸を勤めさせる判断をしました」と語った。

自身の丑之助時代を、「皆さんにレールの上、お神輿の上にのっけていただいた」と語る菊之助。

「菊五郎という名前に向き合う自分を作ってくれたのは、本当に先輩方と歌舞伎界の温かい愛情。私は本当に不器用で、すぐにパッとできる人間ではないので、毎月本当に苦労しています。でも、先輩方が温かく見守ってきてくださり、優しい言葉や厳しい言葉をかけてきてくださったからこそ、いまがある。歌舞伎界の素晴らしさと温かさ、憧れというものを、自分の倅、後輩たちに伝えることができる役者になれればと思っています。私が父の背中を見てこの世界を目指したように、子どもに背中を見せ、生き様を見せられるような役者にならなければ。普段の稽古は厳しくしますが、子どもが生まれ、何よりも、後を継いでくれる人間がいるということのありがたさ。同時に、家の芸を伝えていかなければいけないという思いがあります。なかなか“名監督”にはなれないですけれども、試行錯誤しながら、自分も成長できれば」

3月31日には、神田明神にて成功祈願とお練りが予定されている。

「そこで、皆さまの前で菊五郎になる気持ち、より菊五郎に対する思いというものが高まっていくというふうに思っております。時代物、世話物、舞踊と、歴代の菊五郎は名優揃いですから、その方たちに恥じぬように勤め上げたい」

取材・文:加藤智子

<公演情報>
松竹創業百三十周年
尾上菊之助改め 八代目 尾上菊五郎襲名披露
尾上丑之助改め 六代目 尾上菊之助襲名披露
「團菊祭五月大歌舞伎」「六月大歌舞伎」

「團菊祭五月大歌舞伎」

演目
【昼の部】
『京鹿子娘道成寺』
三人花子にて相勤め申し候

【夜の部】
襲名披露 口上

『弁天娘女男白浪』
浜松屋見世先の場より滑川土橋の場まで

2025年5月2日(金)~5月27日(火)
会場:東京・歌舞伎座


「六月大歌舞伎」

演目
【昼の部】
『菅原伝授手習鑑』
車引
寺子屋

【夜の部】16:30~
襲名披露 口上

『連獅子』

2025年6月2日(月)~6月27日(金)
会場:東京・歌舞伎座

「歌舞伎美人」公演情報:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/

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