ホアン・ジー監督&大塚竜治監督『石門』日本公開に感無量 今年4月から最新作を撮影することも発表
映画
ニュース
左から)大塚竜治監督、ホアン・ジー監督
続きを読むフォトギャラリー(5件)
すべて見る中国圏のアカデミー賞にあたる金馬獎で最優秀作品賞と最優秀編集賞を受賞し、世界各地の映画祭で絶賛を集める『石門』が公開中だ。監督を務めた中国・湖南省出身のホアン・ジーと日本の大塚竜治が3月1日、東京・シネスイッチ銀座で上映後の舞台挨拶に登壇した。
2019年、中国湖南省の長沙市。単発バイトでお金を稼ぎながら、フライトアテンダントを目指して勉強している20歳のリンは自分が妊娠1カ月であることを知る。子どもを持つことも中絶することも望まない彼女は、死産の責任を追及され賠償金を要求されていた両親を助けるため、賠償金の代わりとしてお腹の子を提供することを思いつくが……。
これまで一貫して女性の性に関する問題をテーマに映画を共同制作し、私生活では夫婦でもある監督コンビ。自身の作品が日本公開されるのは初めてで、ホアン・ジー監督は「感激と感動で胸がいっぱい」と感無量の面持ちだった。
本作の着想は「5歳になる娘が“なんで私を産んだの?”と質問してきたこと」だと振り返り、「実は私もなぜ自分が生まれたのか、そしてなぜ娘を産んだのか自問自答していた。簡単な言葉では答えられないが、その答えを見つけるためにこの映画を作った」と話していた。
望まない妊娠をした主人公の10カ月間を追いながら、女性の性、社会の歪みとそこにある人々の苦悩や痛みを、考え抜かれたビジュアルで描き出す問題作。撮影は物語と同じ10カ月間、リン役のヤオ・ホングイら、最低限の出演者とクルーで行い、本作が問いかけるテーマを丁寧に語り合いながら、進められたという。「その過程で生まれた新たなアイデアを瞬時に取り入れるには、やはり少人数で撮影を進めることが必要だった」(大塚監督)。
映画の題材となった卵子売買について、ホアン・ジー監督は「大学の女性用トイレに、電話番号が書かれたチラシが貼られていると知り、リサーチのために、実際にコンタクトをとり、取引業者に会いに行った」と明かした。また、ラストシーンは自身の妊娠、出産経験に抱いた「不安定な情緒や心の痛み」が反映されているといい、「性や出産などについては、誰かに相談しにくい悩みだが、この映画をきっかけに話ができるようになれば」と語った。
また、『石門』の公開を記念し、2人が手がけた『卵と石』(2012)、『フーリッシュ・バード』(2017)の日本公開も決定した。前者は少女の性被害を題材にしたセンセーショナルで社会派な監督デビュー作。後者は女子高生の性が搾取される様を描いており、どちらの作品もヤオ・ホングイが主演を務めている。
さらに舞台挨拶では、監督最新作の製作が発表され、客席からは大きな拍手が。現時点のタイトルは『A Woman Builds』だといい、今年4月から撮影が開始される予定だ。ホアン・ジー監督は「ある女性が母親、娘、妻というさまざまなペルソナから解放され、完全な自分自身の空間を作り出す(Builds)という物語です」と説明していた。
取材・文・撮影:内田涼
<作品情報>
『石門』
公開中
公式サイト:
https://stonewalling.jp
フォトギャラリー(5件)
すべて見る