重岡大毅&上白石萌音が感じたお互いへのリスペクト「ひとりではお芝居はできない」
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インタビュー

上白石萌音、重岡大毅 (撮影/友野雄)
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映画『35年目のラブレター』が3月7日(金)に公開となる。
過酷な幼少期を過ごしてきたがゆえに読み書きができないまま大人になった保(笑福亭鶴瓶)と、そんな保を支え続けた妻・皎子(きょうこ・原田知世)の実話を元に制作された感動作だ。
現在と過去を描く温かな物語となった本作で、重岡大毅と上白石萌音が若かりし頃の保と皎子を演じる。映画『溺れるナイフ』以来の共演となったふたりに、お互いの演技についてや物語のキーとなる「手紙」にまつわる思い出を訊いた。
共通の想い「演じることが嬉しかった」

――今回、鶴瓶さんと原田さんのお若いときを演じると聞いたときの印象を教えてください。
重岡大毅(以下、重岡) え、どう思った?
上白石萌音(以下、上白石) ははは! どう思った?
重岡 びっくりしたよね。
上白石 何に?
重岡 鶴瓶さんや! と思って。嬉しかったですけどね。いろいろと共演させていただいたこともあって、シンプルに鶴瓶さんのことが好きだったし。
鶴瓶さんって……もう鶴瓶さんじゃないですか。唯一無二やし、みんな鶴瓶さんのこと好きなんじゃない? テレビで観てても、直接会っても一緒やし、包み込む感じというか……大先輩に言うのはあれやけど、一番わかりやすい言葉でいったら本当に人たらしというか。もう人たらしのトップじゃないですか。保さんという役を通してですけど、その鶴瓶さんの若いときを演じるのは嬉しさとプレッシャーを感じました。あと、「なんで俺やったん?」っていろんな関係者に聞きたかったですね。
――聞きました?
重岡 聞きました。なんでっ?て。
上白石 なんでだった?
重岡 ちょっと笑った顔が似てたんやて(笑)。
上白石 でも、それは映画を見て思った。
重岡 ほんま?
上白石 重岡さんも人たらしだから。
重岡 そうかなあ。え、どうでした?
上白石 私はどうしよう、似てないって思いました。(原田さんに)顔が似てなさすぎてこれはどうしたらいいんだろうって。
重岡 顔は俺も似てへんから、全然!(笑)。
上白石 そっか、確かに(笑)。私も原田さんが大好きで、出演なさっている作品も観ていましたし、歌声が大好きで、ずっとCDも聴いていたのですごく嬉しかったです。
ただどうやったら、自然な形でバトンパスができるんだろう、ということは一番考えるところでしたね。
――上白石さんは、どうして自分がこの役か、というのは聞かれたんてすか?
上白石 聞いてないです! 今度聞こう!(笑)
お互いの演技にいい意味で「腹が立った」

――物語に対してはどういう印象を持たれましたか?
重岡 最初、台本を読んで、絶対にやりたいと思いましたね。
上白石 私も。
重岡 自分の手元にこうやってこの作品の台本が届いてうれしかったです。どうしてもこの作品を伝えたいな、と思いました。
上白石 実話ということにもびっくりしました。実話だと思って読むと、また味わいが深いというか。実際にこの世で起きた出来事の、その一部になれることがすごくうれしかったです。
あと、私は関西の人間じゃないので、関西人ならではのやり取りがとても関西しているな、というのが最初の印象です。
重岡 あー、そっか!
上白石 関西人が読むとあれはどうなの?
重岡 ……日常?
上白石 恐ろしい!(笑)
重岡 はい、はいっていう感じやった。そっかそっか、そうだよな。関西ちゃうもんな。
上白石 その関西人ならではのやりとりにすごくわくわくしました。
重岡 この作品の取材で、死ぬほど話すと思うけど、上白石さんは天才やと思った。それは聞いてくださったら喋ります!
上白石 聞いてください!
――(笑)。では、その天才だと思ったというお話を……。
重岡 まずですね!(身を乗り出し)
いや、本当にびっくりしたよ。鶴瓶さんも原田さんもいる読み合わせのときに、もう原田さんやったもん。そのときにびっくりして、うわー!と思ったし、それは監督やプロデューサーさんにも伝えた。関西弁も完璧やし。
上白石 わー、これ気持ちいいー!(笑)
重岡 やっぱり、言葉は気持ちやからさ。関西弁のイントネーションは別にいいのよ!気持ちが伝わればいいからさ! そこやん、大事なのって。関西人でも関西弁下手な人おるし。ハートやから、要は。でも完璧やってん。なんかもう腹立ってきて。
上白石 なんでやねん!(笑)
重岡 俺、ちょっと焦ったもん。何より原田さんがまとっている雰囲気とか、空気感とかオーラというものがもう出てたから「なんやねんこいつ!」と思ったね。それは本当にがんばらな、と思った。
上白石 でも、私も腹立ってました(笑)。重岡さんのお芝居が本当に好きで、初めて共演したときから「なんだ、この人!」って思ってます。
この脚本を読んだときはまだキャスティングを聞いてなかったんですけど、重岡さんにやってほしいな、って思ったんですよ。
重岡 嬉しい!それ、言ってくれてたね。
上白石 だから、本読みのときも「はい、そうそう、そうですそうです、これこれ!」って。あとはやっぱり関西弁で話しているときのイキイキとした姿とか。
本読みのとき、先に現代パートだったんですが、私たちは自分たちの本読みよりちょっと早めに入って鶴瓶さんと原田さんのお芝居を聞いてたんです。そのあとに私たちの番だったんですが、私ももう重岡さんに鶴瓶さんが見えました。
で、一度本読みが終わった後に監督からのディレクションをいただいて、だいたいそれで終わることが多いんです。でも、重岡さんが「もう1回やっていいですか」って。そのステキさにも腹が立って。
重岡 大汗かきながら言ったのよ。俺、こうやって汗かいてるときは焦ってるときやねんけど、でもここはもっかいやらしてくれへんかって。
上白石 それがステキだし、保さんだなってすごく思いました。この人についていこうって。
重岡 でも、本当にキャスティングで名前を聞いたときに、ああよかったって安心しました。
上白石 私もです。大丈夫だ、って思いました。
重岡 原田さんや鶴瓶さんほどじゃないけど、長い間続けていると、こういういいことがあるんだなっていうのは、と思いましたね。
「ひとりではお芝居はできない」

――お互い、俳優としてのリスペクトがあるのが分かります。おふたりは俳優として心掛けていらっしゃるのはどういったことですか?
上白石 どうして、セリフをあんなに自分の言葉にできるんですか?
重岡 そう聞こえる?
上白石 聞こえる。
重岡 どうやろな。あんま考えたことない。でも「自分」でやっているからかな。それは大きいかもしれない。
上白石 誰かになるというよりは、重岡さん自身でいる?
重岡 そうね。
上白石 すごく自由だよね。体の使い方とか自由だな、っていつも思う。
重岡 何かに縛られるのが多分苦手やねん。逆に、なんですか?
上白石 現場で対峙した相手の言葉をよく聞くとか見るとか。それでもらえるものを全部もらおうとしているのかもしれない。ひとりではお芝居はできないし。
重岡 わかる、わかる。塚本監督とはコロナ前ぐらいに別の作品でご一緒させてもらったんですけど、そのときからもうこの作品の話し合いが進められてたって聞いて。そんなときからやっていたんだ、とか、やっぱりいろんなところにプロフェッショナルっているんだな、ということは最近思っています。映画の脚本を書いたり、音楽作ったりとか、いろんな人がいて、今この場所があるんだなって最近はよく考えるのね。……いま、なんかええこと言ってる?
上白石 いいことを言ってる声で喋ってはいる(笑)。
重岡 ははは! まあ、ひとりでやれないっていうのは30代に突入して最近思うことかな。
上白石 そうだね。いろんな人が準備してきて、最後に役者が決定してしまう、みたいな怖さはすごくある。
重岡 俺さ、わりとバーッと自分のペースで喋んねんけど、あまりその説明に自信がないの。本当に……助かる! すごくまとめてくれる。
上白石 いいよ、まとめるよ!(笑)
「体温」があるから手紙は好き。

――今回、ラブレターがとても大切なキーになっていますが、おふたりの中で心に残っている手紙を教えてください。
重岡 手紙、よく書くって言ってたよね。
上白石 うん、よく書く。
――どんなときに書くんですか?
上白石 誕生日とか、お世話になっている人とか。


――もらった手紙で心に残っているものはありますか?
上白石 パッと思いだしたのは中学校3年生のときのことですね。鹿児島出身なんですが、東京の高校を受験しに行く前の日に、そのときの一番の友達がノートの端っこをピリッと破って「東京に行くんだね。すごいね、頑張っておいで」って書いてくれて。それは今も取ってあるんですよ。
重岡 へー!
上白石 もちろん、綺麗な便箋を準備して書いてもらった手紙も嬉しいです。でも、ノートの切れ端ってそのときの臨場感しかないじゃないですか。破ったあとに急いで書いた筆跡とか、そういうのがいいな。言葉だけではなくて文字に残してくれたのが嬉しかったです。それをポッケに入れて受験会場に行きました。
重岡 とってもええやん!手紙なあ。あんまりせぇへんかったんですけど、親には20歳になったときに書きましたね。育ててくれてありがとう、みたいなのはこっぱずかしくなりながらもやっておこうと思って、メッセージカードに書きました。ほんなら、オカンがその日、仕事から帰ってきたおとんにこっぱずかしそうに見せてた。おとんも、「……あぁ」って。全員が慣れてないから、どうしていいかわからないんですよね(笑)。
あと、俺字汚いんやけど、手紙っていうのがすごく好きだから、最近はわりとよく書くね。例えば、俺が作った曲をメンバーが歌ってくれたりするから、そのときにひとりひとりに自分の思いを手紙で渡したりするな。
上白石 マメ!
重岡 マメやな、でも時間かかってすごく大変やねん。
――メンバーの反応はいかがですか?
重岡 「何書いてるかわからへん」って言われてます(笑)。でも、それで返ってくる歌が全然違うんですよね。やっぱり気持ちが乗っかるね。血が通うよな。体温があるから手紙が好きですね。
35年後は「元気いっぱいでいたい」

――「35年目のラブレター」ということで、理想の35年後を教えてください。
重岡 70手前ぐらいか。どうやろなあ。でも、俺、ひとつ決めてんのはでっかい犬を飼いたいの。
上白石 名前決めてるって言ってたね。
重岡 そう、名前決めてんねん。
――それを教えていただけたりは……。
上白石 秘密なの?
重岡 うーん、秘密……ええか……いや、やっぱり秘密で(笑)。
上白石 私は聞いて爆笑した。重岡さんがつけそうな名前だったね(笑)。
重岡 大型犬を散歩して走りたいねん。「アルプスの少女ハイジ」に出てくる生活ええな、って。悠々自適な感じがいいんやろな。田舎に引っこみたいのよ。
上白石 70歳で大型犬と走ってるのすごいね。すごく体力がある。
重岡 そうね、元気いっぱいでいたい。仕事とかプライベートとしてはよく分からないけど、元気いっぱいでいたい。
上白石 私は還暦過ぎぐらいですね。なんだろうな……猫は飼いたいですね(笑)。
重岡 いいなー!
上白石 猫を飼って、こたつを置いて……。縁側に座ったりもしながら。
重岡 とってもええやん。
上白石 で、ゆくゆくは髪の毛を真っ白にしたいので、その準備を始めていると思うのでグレーぐらいですかね。
――ちなみに猫の名前は……
上白石 まだ決めてないです! 35年かけて決めます(笑)。
この作品を一緒にできてよかった

――息ぴったりなのが伝わってきますが、久しぶりに共演されて、何かお互いの変化は感じられましたか?
上白石 何にも変わらないですね。
重岡 俺もそうやわ。ほんまに。
上白石 でも変わらないってすごいことだなって思うんですよね。この9年って一番人が変わる9年でもあると思うのに、本当に変わらなくて。それが嬉しかった。
でも人としての円熟味というか。言葉に重みがあります。だから、きっとこの9年で酸いも甘いもいろんなことを経験して、その結果、言っているこの言葉なんだな、って。変わらないんだけどより深くなってる感じがした。
重岡 そう、まさにそうだね。変わってないなって思ったし、ステキですよね。俺、いろいろ質問攻めにしたのは覚えてる。
上白石 そうだっけ。
重岡 人生でこれ!っていう1冊なに?って聞いて、教えてもらってすぐ読んだもん。
上白石 私もなんでこんなにお芝居がステキなんだろう、っていうことでいろいろ聞いて教えてもらいました。本を教えてもらってすぐ買って。
重岡 あれ難しくない?
上白石 そう、難しくてまだ途中。
重岡 俺も途中(笑)。でも、今後もちょっと追っかけたいな、と思う人ですよね、作品もそうだし、歌も。
上白石 私もですね、追っかけます。
重岡 本当にこの作品で一緒にできて良かったです。
上白石 こちらこそ!
撮影/友野雄、取材・文/ふくだりょうこ
<作品情報>
『35年目のラブレター』
公開日:2025年3月7日(金)
©2025「35年目のラブレター」製作委員会

出演:笑福亭鶴瓶 原田知世
重岡大毅 上白石萌音
徳永えり ぎぃ子 辻󠄀本祐樹 本多 力
江口のりこ 瀬戸琴楓 白鳥晴都 くわばたりえ
笹野高史 安田 顕
監督・脚本:塚本連平
配給:東映
公式サイト:https://35th-loveletter.com/
公式Xアカウント:@35th_loveletter
公式Instagram:@35th_loveletter
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