舞台「華の天羽組-羽王戦争編-Powered by ヒューマンバグ大学」前編 インタビュー:馬場良馬×君沢ユウキ
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インタビュー

左から君沢ユウキ、馬場良馬 (撮影/石阪大輔)
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すべて見る実話を題材に“人間の闇”をテーマにした漫画動画を配信、カルトな人気を集めているYouTubeチャンネル「ヒューマンバグ大学」の人気シリーズを原作に、2023年に舞台化された「華の天羽組-天京戦争-」の続編ともいえる期待の新作、舞台「華の天羽組-羽王戦争編-Powered by ヒューマンバグ大学」前編が、5月17日に新宿FACEで開幕する。「天京戦争」に続いて主人公、天羽組の小峠華太を演じる馬場良馬、関西から進出し天羽組と対抗する天王寺組の中心人物、城戸丈一郎を演じる君沢ユウキのふたりに、作品の魅力、作品にかける思いを語りあってもらった。
――再び小峠華太を演じることになった馬場さんは、役柄をどう捉えていますか。
馬場 主人公ではあるけど、作品冒頭で「アラサーで中堅の極道だ」と語っており、突出して強いわけでもなく、むしろ負けたりやられたりすることの多いキャラクターです。気力で持ちこたえて駆けつけた兄貴分に救われる姿はとても人間くさくて、でも心だけは何があっても絶対に折れない、負けない。しかもその心で、相手の戦闘力を上回ってしまう瞬間すらある、唯一無二の素敵なキャラクターです。

――城戸丈一郎について君沢さんは?
君沢 「自分の手の内は絶対に守りたい」というところは共感できます。なぜ城戸はそんなに強いのか、その理由をしっかり表現したいと思っています。天羽組と天王寺組は二大勢力として対抗していくわけですが、たまたま立場が違ったことで敵対していますけど、貫く筋道や信念は実は同じようなもの。それが任侠ものの切ないところですし大事にしたいです。それにしても、城戸の執念はすごいと思う。
馬場 原作のキャラクターは何度撃たれても、斬られても生き返るタイプだけど、その中でも城戸は特にすごい。「もう無理じゃない? こっちがやられちゃうんじゃない?」って思ってしまうくらい。それを君ちゃん(君沢)が演じることが楽しみで仕方がない。
君沢 城戸を演じるのは相当な覚悟が必要。生命力が枯渇していき、それがまた溢れ出すという姿を間近に観られるエンターテインメントが僕はヒューマンバグ大学だと思うんです。だからいっぱいご飯を食べて……。
馬場 スタミナ切れしないようにね。
君沢 そういう緊迫感みたいなものも、城戸という役を通して表現したいですね。
馬場 「ヒューマンバグ大学」には熟練の役者陣が名を連ねていて、みなさんが丁寧にバトンを繋いでいき、今回はそれを最後に城戸に託してクライマックスに繋がればいいと思います。そういう意味でも、今回は天王寺組に(大嶽徳文役の)萩野 崇さんが来てくれたから。
君沢 そう、ハギさんが(嬉)!
馬場 ハギさんがいるだけで、僕たちも姿勢が正されるというか。
君沢 ハギさんが後ろにいるから全力で前に走れます。ヒューマンバグ大学は、普段なかなか集まらないようなクセモノ俳優が山ほど集まってるじゃないですか。「混ぜるな危険」というか、「クセモノ動物園」とでも言いますか(笑)。
馬場 だが、そこがいい!
“幅広さ”の馬場、“情熱”の君沢
――お互いに、俳優として「こういうところは自分にはない」と思う魅力を伺えますか。
君沢 初めて共演したのは体内活劇『はたらく細胞』の一作目(2018年)でした。全力で振り切った演技を見せていたのでパワー系でグイグイいくタイプかと思ったら、次に一緒になった舞台『炎炎ノ消防隊』(2020年)ではお母さんみたいに優しく見守って稽古中もすごくフォローしてくれた。そういう優しさを持っている人なんだなって……本人を前に言うのは恥ずかしいですが。

馬場 『はたらく細胞』の時はお芝居でほとんど絡みがなかったので、印象的だったのは『炎炎ノ消防隊』です。当時はまだコロナ禍で、しかも緊急事態宣言が開けて最初のお芝居で。
君沢 そうだった!
馬場 何をどこまですれば正しいのかわからず、すべて手探りで稽古していて。君ちゃんは大隊長っていう役柄もあって、キャスト代表のような形でスタッフさんや演出家さんと話し合っていたんです。その背中がめちゃめちゃ大きくて、「この人が大隊長で良かった。この人についていけば間違いない」っていう安心感がありました。
君沢 ……めちゃくちゃ恥ずかしいね(照笑)。そんなふうに言ってくれるけど、みんなが一緒に戦ってくれたんだよ。
馬場 より良いものを創るためだからね。
君沢 あの時舞台ができたことは本当に幸せだったし、あの時一緒にいたことは大きかったね。
馬場 本当に!
目の前で物語が紡がれていく、それが演劇の醍醐味

――さて、改めて舞台でこういう極道バトルステージをやることの魅力は、どこにあると思いますか。
君沢 男の子だったら、一度はやってみたいんじゃないですか?
馬場 昔の極道ってヒーローとは真逆で、裏のヒーローじゃないですか。「悪魔と契約して守ってもらう」みたいな。そういう意味では僕たちがこれまで演じてきたヒーロー像とは遠いようでいて実は似ている存在だし、男の子が憧れるところでもある。
君沢 それは言えるね。
馬場 原作は紙芝居のように一コマ一コマ物語を紡いでいくところを、実際に人が動いて「このコマとこのコマの間で、彼はこんな動きをしていた」ことを見せる。演劇ならではの臨場感をリアルに感じとってもらえると思います。しかも、原作の視聴者の方がたくさん劇場に足を運んでくださる。
君沢 やっぱり、そうなんだ。
馬場 男性のお客様も多いし、YouTubeで配信しているから、それを見たお子さんたちも来てくれる。みんな自分たちの大好きなキャラクターが目の前にいるから自然と体が動いて、一緒に戦っているんです。それ、良くないですか?
君沢 めっちゃいい! 嬉しい!
馬場 そのくらい熱中して観てくれるからこそ、その気持ちに応えなきゃいけないっていうプレッシャーはありますね。
――前回、お客様の感想やリアクションにはどんなものがありましたか?
馬場 2024年に舞台化した『京極の轍―京羅戦争編―』から、応援上演の回があるんです。お子さんたちが「がんばれ!」「負けるな!」って、本当にヒーローショーみたいな感じ。
君沢 任侠系×特撮ヒーローものってことだね。
馬場 この作品を好きであればあるほど手に汗握って観てくださって、エンタメとして、演劇として、また違う形で楽しんでくださる方たちがいる。今回も応援上演(5月23日・24日18時回)があります。
君沢 声を出してもらえると、とても嬉しいね。「負けないで!」「立て!」って、力をもらえるはず。
――ではお話の締めくくりとして、お客様へのお誘いのメッセージと「大千秋楽を終えるまでにこれを成し遂げたい」という目標をお願いします。
馬場 マニフェストですね!
君沢 こうやってお話させていただいて、あらためて作品のイメージが湧きました。原作の静止画が動く意味があるすごい作品ですし、前作の映像も見せていただきましたけど、目の前で人の命のリミッターが減っていく姿を観られる。実世界ではありえないことですし、それに応えられるフィジカルで毎公演やらなくてはいけない。お客様には、それをお見せすることを公約にしたいと思います。
馬場 全員ひとクセもふたクセもある魅力的なキャラクターばかりなので、そこをしっかり表現したい。それに、演劇って目の前で物語が紡がれていくことが醍醐味ですよね。特にこの作品は生きるか死ぬか、殺すか殺されるかっていう命のやりとりを究極の形で見せる。そこに嘘が少なければ少ないほど、固唾を飲んで見守ってもらえると思うんです。死なない程度に命を削って毎公演務めたいと思うので、僕のマニフェストは「死なない」ですね。
君沢 (手をたたいて)素晴らしい!
馬場 気合としては死ぬ気で、でもケガはしないように。今回は前編なので、後編に繋がっていく物語としてみんなで力を合わせて駆け抜けてまいります。ぜひ、劇場で僕たちにパワーを与えて助けてください。
馬場・君沢 よろしくお願いします!
取材・文/金井まゆみ
撮影/石阪大輔
<公演情報>
舞台「華の天羽組-羽王戦争編-Powered by ヒューマンバグ大学」前編
日程:2025年5月17日(土)〜5月25日(日)
会場:新宿FACE
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/human-bug/
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