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朗読劇『君の膵臓をたべたい』2025 梶裕貴・伊藤美来インタビュー ――「観る人の想像力を膨らませる朗読劇を届けたい」

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伊藤美来(左)、梶裕貴(右) 撮影/源 賀津己

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好評を集めた2022年の初演以来再演を望む声が続いてきた、小説家・住野よるのベストセラー小説『君の膵臓をたべたい』を原作とする朗読劇が、新たなキャストを迎えて待望の再演が決定した。初演から引き続き脚本・演出を務める保科由里子のもと、「僕」役を岡本信彦・梶裕貴、山内桜良役を鬼頭明里・伊藤美来がそれぞれWキャストで担う。原作、そして朗読劇の魅力と難しさなどを、人気声優として多方面で活躍を続ける梶裕貴、伊藤美来にきいた。

――まずは出演を決められたときの思いなど教えてください。梶さんは、これまでも作品の朗読や、対談などを通じて、住野よるさんと繋がりのある印象です。

 住野さん原作『よるのばけもの』をYouTubeチャンネルで朗読させていただいたり、自分の本(梶裕貴 対談集「えん」)で対談させていただいたりと、ありがたいご縁が続いています。『君の膵臓をたべたい』に関しては、小説が発表されたときに既に拝読していましたし、映像作品やアニメ、朗読劇のことも知っていましたから、そこから時を経て、まさかこのタイミングで携わらせていただけるとはと驚きましたが、それ以上に、やはりとても嬉しかったですね。作品世界に「僕」という役を通して入っていける。もちろん単純に楽しいだけの作業ではないですが、いろいろな気持ちを追体験できるのが役者として喜びなので。

伊藤 私ももちろん『君の膵臓をたべたい』という作品は知っていましたし、桜良役として携われるとは思ってもいませんでしたから、本当に光栄でした。また、一緒に演じるキャストの皆さんを知った時は、先輩たちの生のお芝居を見て掛け合いができる贅沢さにワクワクしました。

――原作小説は様々なメディアを通じて発表され人気を集めていますが、朗読劇としての見どころはどんなところに?

 声だけで登場人物一人ひとりの内面まで想像を膨らませられるのが第一の魅力だと思います。演者にしても、お客様にしても。僕は今年40歳になりますが、演じるのは高校生。表現の仕事で、自分の半分以下の年齢の役を演じる機会があるのは、おそらく声優くらいだと思います。上演中は「僕」とひとつになって、高校生のみずみずしさや鬱屈とした雰囲気を演出できればと考えています。
「僕」は感情表現が控えめだったり、他人との関わりを避けていたり。そんな彼が桜良と接する中で大きく変化していく様子を、自分自身も高校生になった感覚で演じたいですね。稽古でお互いのイメージをすり合わせ、本番ではリアルタイムでセッションをしつつ、共通のゴールに辿り着く面白さを、この作品を通してお見せしたいです。

伊藤 (質問は)朗読劇の面白さでしたか? すみません、梶さんの「40歳」にびっくりして質問が飛んでしまいました。

一同 (笑)。

 そうなんですよ(笑)。声だけは頑張ります!

伊藤 脚本も読ませていただきましたが、原作や映像作品とは異なる部分が少なからずあります。小説読者の方、映像作品をご覧になった方それぞれ、この朗読劇から物語の新たな魅力を感じていただけると思います。また、ほとんどが「僕」と桜良の掛け合いとモノローグになっていますから、そこも聞き応えのある部分だと思います。

 語りは「僕」と「ガムの彼」でシェアするとお聞きして。びっくりしました(笑)。やってみないとわからない難しさと面白さがあるでしょうし、Wキャストならではの変化もあると思います。できれば、どちらのチームもご覧いただきたいですね。

――声優として活躍されているお二人にとって、朗読劇の魅力とは?

 僕、さっきほとんどお話してしまったので(笑)、伊藤さんどうぞ!

伊藤 重複してしまいますが、舞台は生であること、公演時間の中でひとつのストーリーをみんなで作り上げていくところが朗読劇の魅力だと思います。動きや絵がないぶん、観てくださる方の想像力にお任せする部分も多い。その想像が楽しくなるようなお芝居を生でお届けすることが、ドキドキするところでもあり楽しみなところでもあります。

――アニメ作品や吹替との違いを感じる部分は?

 口パクがないぶん自由度は高いですよね。同時に、それ相応の力量を試されるコンテンツだとも感じます。稽古時間がたっぷりあるわけではありませんから、自分の中での準備が大切。先ほどもお話したように、実写ではやらない、やれないような役も声だけなら成立させられます。とはいえ、そこには衣裳や美術、照明や音響の力も存在する。なので“総合芸術”として、今回の『君の膵臓をたべたい』の世界をベストな形で表現できたらいいなと思っています。きっと本番中も感じることは刻々と変化していくと思うので、昼公演と夜公演でも違うものになりそうで楽しみです。

伊藤 朗読劇だからこそ、ストーリーのフックになるシーンやセリフを際立たせないといけないと思います。「この単語、大事だな」と思うときは、ちゃんと伝わってほしいと思いながら読んでいます。あとで出てきた時に「あの時の!」と思い出してもらえるとより面白いと思うし。一つひとつのセリフを丁寧に演じています。

――演じる役とご自身の共通点や、お互いに「ここが役と似ている」と感じる部分はありますか。

 なるべく繕うようにはしていますが、本質的には僕もコミュニケーションが苦手。緊張しますし、スムースな関係性をどうしたら作れるか考えてしまうタイプです。「僕」のように避けることはないけど、ネガティブな思いは近いのかなと思います。伊藤さんとはあまり共演経験がありませんが、メディアでお見かけする姿や声の印象は桜良と似ていて朗らか。脚本を読んでいて想像しやすかったので、一緒に演じられるのがすごく楽しみです。

伊藤 嬉しいです。私と桜良が似ていると思うところは、自分ではあまりなくて。桜良は天真爛漫でありつつ繊細で、なのにとっても強い子。「こんな子いるの?」と思いながら読みました。先のことを考えていろいろな行動をしたり、周りに流されなかったり。自分がいいと思ったものに素直に向き合う素敵な女の子で、羨ましいです。

 桜良ほど強くない?

伊藤 私ならずっと泣いちゃうし、どうしていいかわからなくなると思います。早くいろんな人に(病気のことを)言って、早くいろんなことをしなきゃと焦ると思うし、周りのことを考える余裕は無くなってしまう気がします。

 なるほど。

伊藤 でも、桜良は周りのことばかり考えている。すごくかっこいいと思いながら読みました。あ、でも私も『星の王子さま』が好きなので、そこは似ているなと思いました(笑)!

 (笑)。僕も好きです! YouTubeでも朗読したことがある作品で、作中に出てくるのが嬉しかったですね。

伊藤 梶さんとご一緒するのはすごくドキドキしていました。でも、同級生で近い距離の役を演じさせていただけるので嬉しいです。メディアやテレビで拝見することが多く、すごく遠い存在に感じていましたが、公演が近づくにつれてとても楽しみになってきました。

――共演する戸松遥さん、中島ヨシキさんの印象はいかがでしょう。

 (中島)ヨシキくんとはついこの間、作品のラジオで初めて二人で喋りました。年下だけどすごくしっかりしていて、言語化が上手い方。(Wキャストで「僕」を演じる)岡本くんに聞いた話によると、語りの部分をシェアするということなので、二人で息を合わせられるかどうかが、お客様が作品に没頭できるかの鍵になる気がしています。とまっちゃん(戸松)は新人の時からご一緒しています。そのぶん信頼感はやっぱりありますし、役者として尊敬していますが、実は朗読劇での共演は初めてなので、そこも楽しみですね。

伊藤 中島さんは共演させていただいたとき、緊張している私にフランクに声をかけてくれました。その場を柔らかく、明るくしてくれるお兄さんという印象だったので、またご一緒できるのが楽しみです。戸松さんも、現場はもちろん、番組やイベントでもお会いすることが多くて。いつも声をかけてくれたり、手を振ってくださったり。優しくて太陽みたいなお姉さんです。朗読劇でがっちり共演するのは初めてなので、先輩たちの背中を見つつ、空気を一緒に作れる喜びを噛み締めたいと思っています。

――では、締めくくりに上演を楽しみにしている皆さんへのメッセージを!

 僕自身、『君の膵臓をたべたい』の世界に入り込み、朗読劇の中で何を感じて、どんな感情が溢れるか、今からすごく楽しみです。桜良はインパクトが強くてカラフルに映る人物。基本的に明るくポップだけど、端々に重みのある言葉が登場して、「生きるとは何か」をすごく考えさせられる物語です。楽しくご覧いただきつつ、終盤にかけて畳み掛けてくる怒涛の展開から、作品のメッセージを受け取っていただければなと。「僕」たちと同世代の皆さんはもちろん、かつて学生だった大人たちも、思春期ならではの様々な感情を共有できるはず。その場限りの感動を味わいに、ぜひ劇場にお越しいただければと思っています。

伊藤 この物語を知っている人も、今回の朗読劇で初めて知る方も絶対に楽しめる作品です。明日を生きる糧になる作品だと思いますので、ぜひ劇場へ足を運んでいただき、「僕」と桜良、登場人物たちが懸命に生きている姿を生で感じていただけたら。きっと、背中を押されるような気持ちを持ち帰っていただけると思います。

取材・文/吉田沙奈
撮影/源 賀津己

<公演情報>
朗読劇『君の膵臓をたべたい』2025

日程:2025年4月5日(土)・6日(日)
会場:日本青年館ホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kimisui/

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