潤花が『二都物語』で宝塚退団後初のミュージカル出演

退団後はストレートプレイのほかTVドラマにも出演するなど、活躍の場を広げている潤。今回はちょうど2年ぶりとなるミュージカル出演で、稽古を心待ちにしている様子だ。
「オファーをいただいた時は、人が生きることの意味を思い出させてくれるような、こんな素敵な作品と出合えたことに幸せを感じました。さらに演出の鵜山仁さんや共演の皆さんが本当に素晴らしい方々で……。ご一緒できるのを光栄に思うと同時に、心してお稽古の準備をしなければと身の引き締まる思いがしました」と潤は目を輝かせる。

宝塚在団中はトップ娘役として華やかな容姿と抜群のダンス力に加え、辺りを照らすような明るい存在感が印象的だった潤。とはいえ本作ではミュージカル界のスターたちがズラリと顔を揃えるだけに、緊張の表情ものぞかせる。
「いつも客席から拝見して感動をいただいていた方たちが稽古場にいらっしゃるのだと思うと、（緊張で）どうなってしまうのかと……。先日の歌稽古もひとりだったのにガチガチになってしまったくらいです（笑）。でも作品を通してご一緒させていただくこと、こうやってご縁をいただくこと自体がありがたいと思いますし、退団後の現場1つ1つが“すべて素晴らしい経験になる”というのは実感しているところ。今は覚悟と共に、楽しみな気持ちで挑もうと思っています」と潤は語る。

潤が演じるルーシー・マネットは、父のドクター・マネットがバスティーユに投獄されていると知り、イギリスからフランスへと渡る芯の強い女性。そして父と再会しロンドンへ帰る途中に、英国人弁護士のカートンとフランスから亡命する貴族のダーニーに出会う。ルーシーはダーニーと結婚するが、波乱の運命が3人を待ち受ける。
「ルーシーは物語の冒頭では、社会の裏の部分なんて知らないのですよね。でも年を重ねるにつれてそういった暗い部分も、人を愛することも知り、さらに愛する人を失うかもしれないという恐怖心や孤独感も知ってゆく。ルーシーというひとりの女性が心の傷を抱きながらも、“それでも愛する人たちと生きていくのだ”という気持ちになるまでを、彼女の感情を丁寧にたどっていくことで表現できたら」と潤は話す。

華やかな存在感はそのままに、丁寧で繊細な役づくりにも定評のある潤。物語はカートンとダーニー、そしてルーシーという三者三様の人間ドラマが響き合うようにして進む。今回のような役どころについて潤に尋ねると、「楽しいです！」と一層弾んだ声が返ってきた。
「お稽古までにある程度の役づくりはするのですが、こういったお役は特に、稽古場で共演の皆さんがどうやってお役を作られているのかを見て、感じて、それに向き合う気持ちで作っていくようにしています。今回は井上さんや浦井さんをはじめ他の方との場面もたくさんありますし、稽古場では臆せず、演出の鵜山さんのおっしゃることも貪欲に取り入れて“感情のセッション”というところまで持っていきたいです」と意気込む。

「宝塚時代も楽屋入りは一番早くて、楽屋出は一番遅いタイプでした。開演前に準備している時の高揚感も、舞台が終わってホッとしているひと時も大好きなんです」と笑う潤。舞台を愛してやまない彼女の“今”の心境は。
「ここ数年はコロナ禍もあり、客席にお客様がいらっしゃることが当たり前ではないのだなと改めて感じることが多かったんですね。だからこそお客様が劇場に足を運んでくださるということ、観劇のとき以外でも、遠方からでも作品に想いを寄せてくださるということは、ずっと忘れずにいたい。今回も素晴らしい共演の方々と共にルーシーとして作品の魅力をお届けできたらいいなと思いますし、ご覧になった方が翌日の活力になる“何か”を持って帰っていただけるよう、心して務めたいと思っています」。

取材・文／藤野さくら
撮影／荒川 潤

＜公演情報＞
ミュージカル『二都物語』

日程：2025年5月7日(水)～31日(土)
会場：明治座

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/ataleoftwocities/