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映画『アマチュア』監督インタビュー 「主人公のことを信じられる映画に」

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ジェームズ・ホーズ監督

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『ボヘミアン・ラプソディ』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラミ・マレックが主演を務めるスパイ・サスペンス大作『アマチュア』が11日(金)から公開になる。

本作は、テロリストに妻を殺された平凡な男が、復讐のために殺しの“アマチュア”として行動する姿を描いた作品で、ドラマ『スノーピアサー』や映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』などで知られ、重厚な人間ドラマを得意とするジェームズ・ホーズが監督を務めた。ホーズ監督は本作をこう振り返る。

「観客が主人公のことを常に信じられる映画にしたかった。それは“小さな針の穴に糸を通す”ような難しさでした」

CIA本部の地下エリアで情報分析と暗号解読を専門にしているチャーリー・ヘラーは、郊外で愛する妻と暮らす平凡な男。家と職場を往復する安定した日々を好み、人付き合いは苦手だが温厚な人物だ。しかし、妻が英国でテロリストに殺害され、彼は自ら復讐を決意。上司からは鼻で笑われるが、資料を偽造してCIAの訓練プログラムに潜入。ヨーロッパ各地に潜むテロリストの居場所を探して行動を開始する。

銃を撃つこともできない男が、情報分析能力と知性でテロ犯に立ち向かう。魅力的な設定で、文字で書かれた物語なら成立するが(本作の原作は1980年代に出版された小説)、映像化するとなると困難のレベルが格段に上がる。

「そうなんです。文字だけだと問題があったとしても読む人の想像力が補ってくれますからね。でも、映画のカメラは、すごい批評家なんですよ(笑)。でも、私は観客が主人公のことを常に信じられる映画にしたかった。それは“小さな針の穴に糸を通す”ような難しさでした。

そのためにはラミ・マレックのような俳優が必要でした。知性があって、力強さと弱さ・もろさを同時に表現できる俳優です。知性というのは演技できるものではありません。その俳優の知性がそのまま出てしまうものなんです」

監督が語る通り、本作で主人公チャーリーは常に強さと弱さの“狭間”にいる。少ない手がかりを頼りにヨーロッパを移動し、ターゲットに近づき、予想もしなかった方法で相手を追い詰める。しかし彼は殺しのアマチュアだ。銃を手にしても容赦なく撃つなんて絶対に無理、窮地に立たされると当然のようにビビる、秘密道具もアストンマーティンもない。彼はいつも不安定で、行く場所もすべてが初めてだ。

そこでホーズ監督は、通常のスパイ・アクション映画よりも多彩なアングルとカラー&ルックで本作を描いた。

「視点については映画全編を通してプランを立てました。冒頭、チャーリーがCIAで勤務している場面ではカメラはしっかりと静止しています。しかし、彼が復讐のために行動を開始すると、カメラはチャーリーに沿って動くようになります。彼が走って行動する時はカメラも走る。観客にはチャーリーと一緒になって状況を体験してほしかったのです。その一方でカメラが急に高い場所からチャーリーを捉えている場面があります。まったく知らない国でひとりぼっちで行動する彼の孤独を表現したいと思いました。

画面の色にもこだわっています。まず本作ではアメリカ国旗を除いて赤をほとんど使わないようにしました。ブルーを基調にしたシーンが多いので、青の色を目立たせるためです。チャーリーがヨーロッパで行動するシーンではロンドン、マルセイユ、トルコと場面が変わるたびにすべて異なるライティングをしています。いくつかのシーンでは蛍光灯の光を強調しました。全編にわたって多彩でありながら現実感のある、“地に足のついた”表現にしたかったのです」

スーパーヒーローではないチャーリーの冒険が“現実感”のある描写で描かれる。これが『アマチュア』の基本姿勢だ。しかし、ホーズ監督はそこにあえて“現実ではない描写”を盛り込んだ。劇中でチャーリーは何度も亡き妻サラの幻影を見る。ここではブルーではなく、暖色のトーンで画面が描かれ、チャーリーはかつてと同じように妻との穏やかな時間を体験するのだ。

「彼の心の中ではまだ妻のサラが生きているんだということを、フラッシュバック(回想)ではない方法で表現したいと思って、僕が思いついた表現なんです。私たちは愛する人のことを思い出す時、その人との日常だったり、相手のクセだったり、毎日やっていた儀式のようなことを思い出すのではないでしょうか。だからあのシーンで行われていることは、チャーリーとサラの日常なのだと思っています」

ホーズ監督は劇中で複数回、亡き妻を出現させている。多くのアクション映画では“主人公の動機とゴール=本作では殺された妻の復讐をする”が冒頭で描かれ、以降は大規模な銃撃戦やアクションシーンが続く。しかし、本作では意図的に“なぜ、チャーリーは行動するのか?”が繰り返し問い直される。

「そうですね。そこは意識しましたし、それがこの映画の独特なところですよね。妻を失った悲しみがチャーリーの行動の動機になっていて、最初のターゲットと対峙する時には彼はすごく動揺しているわけですが、行動を続ける中で彼の中に大きな怒りが湧き上がってくる。その内面の変化を描くことはとても重要でした。

そして、彼は復讐はしたいけれど、同時に“正義”というものも大きな指針としてあるわけです。だから彼は相手を殺すことで悲しみは消えるのか? 喪失感はなくなるのか? それで正義は達成されるのか? を繰り返し自問することになります」

『アマチュア』は緊迫のアクションとサスペンスを描きながら、いつも不安定で自問自答する弱い主人公の内面を描き続ける。相手を倒すのは本当に正しいのか? 妻を失った空白にどう向き合うのか? 本作は、ダイナミックなドラマと、キャラクターの繊細な内面描写が両立する稀有な作品になった。

「この映画はテスト試写をした時に、女性の観客からの支持がとても高かったんです。チャーリーがどんな時も妻を愛する姿勢が評価されたのかもしれません。また本作に登場する女性キャラクターはみな魅力的で強いので、そこを支持してくれたのかもしれません。男性もアクションシーンやサスペンスを評価してくれたようです。本作は本当に多彩な要素が入っている、ということですね。

人物の内面を丁寧にしっかりと描いたスパイ・アクションというのは、そう多くはないので、これからもっと撮ってもいいかな、と思っています!」

『アマチュア』
4月11日(金) 全国劇場公開
(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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