長澤まさみと森山未來の演じる夫婦の10年、『おどる夫婦』ゲネプロレポート
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Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』ゲネプロより (撮影:荒川潤)
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すべて見る4月10日、東京・THEATER MILANO-ZaにてBunkamura Production 2025『おどる夫婦』が開幕。5月4日(日・祝)の終演後は大阪・新潟・長野にて上演される。
タイトルにもある「夫婦」を演じるのは、長澤まさみと森山未來。映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)と『モテキ』(2011年)以来14年ぶりの共演となる。作・演出は蓬莱竜太。上演時間は休憩20分を含む約180分。

机などに囲まれたステージ中央に台本を手にした人たちが登場し、台詞を読み交わす。芝居がはじまったと思うのもつかの間、いつしか台本は手を離れ、夫婦の日常が繰り広げられていく。


舞台衣裳の仕事をするキヌ(長澤)と、働くこととうまく折り合いのつけられないヒロヒコ(森山)。食器の洗い方から映画の感想にいたるまで、小さな衝突を繰り返しながらも同じ家に暮らそうとする様子は、なんとか「夫婦」を演じようとしているようでもある。ステージの中央は回る盆になっていて、ぐるぐると同じ場所を回り続ける彼らは、どこかに行きたくてもどこにも行けないようにも見える。会話にはピリつく瞬間がいくつもあり、他人と暮らすことの難しさと同時に、それでも一緒に生きる頼りなさや相手への思いも感じられる。


キヌの母・朋恵(伊藤)とヒロヒコの父・勝利(内田紳一郎)は、ふたりの育ってきた環境や夫婦関係への影響を想像させる。人は過去と他者との積み重ねのうえに生きているのだ。そこにおいてキヌの弟・光也(松島聡)の存在は本作の唯一の風穴のようにさえ感じられる。

そして夫婦共通の友人である塔子(内田慈)と、その夫(岩瀬亮)。キヌの職場の同僚(小野花梨)やヒロヒコのいとこ(皆川猿時)など、それぞれとの距離感や関係もまた変化していく。

彼らの10年が描かれていくが、10年というと色々なことが起こる。東日本大震災と新型コロナウイルスの蔓延は10年間のなかで生じた出来事だ。自分がどう生きようとも、外からの影響ははかりしれない。


物語には終わりがある。どんな演劇も時間になれば終わり、たいていは俳優たちが舞台に出てきてカーテンコールをする。けれども現実はちがっていて、キリのいいところでうまく幕がひけるわけでもない。「そしてふたりはしあわせになりました」で終われない現実を、誰と、どう生きていくのかと問われているようだ。



取材・文:河野桃子 撮影:荒川潤
<公演情報>
Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』
作・演出:蓬莱竜太
出演:長澤まさみ、森山未來、松島聡、皆川猿時、小野花梨、内田慈、岩瀬亮、内田紳一郎、伊藤蘭
【東京公演】
2025年4月10日(木)~5月4日(日・祝)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【大阪公演】
2025年5月10日(土)~5月19日(月)
会場:森ノ宮ピロティホール
【新潟公演】
2025年5月24日(土)・25日(日)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【長野公演】
2025年5月31日(土)・6月1日(日)
会場:サントミューゼ 大ホール(上田市交流文化芸術センター)
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/odorufuufu/
公式サイト:
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/25_odorufuufu/
※蓬莱竜太の「蓬」は一点しんにょうが正式表記
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