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再びのオーロラ姫を控えた秋山瑛、東京バレエ団『眠れる森の美女』の魅力を語る「本当に物語の中にいるよう」

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秋山瑛 (Photo:Koujiro Yoshikawa)

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2023年に東京バレエ団が新制作した『眠れる森の美女』は、古典バレエの父、マリウス・プティパの傑作を、古典バレエの美しさはそのままに、現代の感覚に寄り添う説得力ある演出を実現し、高評を得た作品だ。再演となる今回の上演で、再びヒロインのオーロラ姫を演じる秋山瑛に、本作の魅力、オーロラ姫の取り組みについて聞いた。

幸せな雰囲気にあふれたバレエ

(Photo:Shoko Matsuhashi)

──『眠れる森の美女』といえば、古典バレエの父、マリウス・プティパが手がけたクラシックバレエの傑作ですが、その魅力はどんなところにあると思われますか。

秋山 チャイコフスキーの三大バレエのひとつとして知られる華やかなグランド・バレエで、幸せな雰囲気にあふれた作品です。古典バレエって悲しくなったり切なくなったりするお話も多いけれど、『眠り』は観ていると幸せな気持ちになる。小さい頃は、「カラボス(悪の精)怖い!!!」と思ったものですが(笑)、愛の力で100年の眠りから目覚めて最後は華やかな結婚式。素敵だなって思っていました。

──幼い頃、いつかオーロラ姫を踊りたいと思っていましたか。

秋山 どうだったでしょう……記憶は曖昧ですが第1幕の“ローズ・アダージオ”はとても好きでした。成人したオーロラ姫と彼女に求婚する四人の王子の踊りですが、4人の王子さまと踊りながら一人ひとりから一本ずつ薔薇をもらったり、ピルエットの回数が増えていったり、バランスがあったり……。すごく印象的で憧れました。

(Photo:Shoko Matsuhashi)

──『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』『白鳥の湖』など、古典バレエの主役を次々と踊りキャリアを積まれてきましたが、全幕の舞台でオーロラ姫を踊る機会が訪れるのは、少しあとのことでしたね。

秋山 一昨年にこの作品が新制作されたとき、初めて全幕を踊りました。でも実は、2017年に子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』のオーロラ姫を踊らせていただいているんです。まだソリストになる前で、それが私の東京バレエ団での主役デビューに。ファミリー向けにぎゅっとコンパクトにまとめられた作品ですが、初挑戦のローズ・アダージオはすごく難しく感じましたね。

──片脚で爪先立ちしたまま、四人の王子に次々と手をとられて……という優雅な踊りですが、どんなことに配慮して取り組んでいますか。

秋山 練習の時にはどうしてもテクニカルな部分に集中してしまいがちな踊りですが、オーロラ姫でいること、お誕生日で王子様たちとローズ・アダージオを踊っている彼女でいるためのテクニックであって、大切なのはテクニックを成功させることではないよ、と自分に言い聞かせています。そして2023年の新制作では、(団長・斎藤)友佳理さんから「一人ひとりがもっと自由に、それぞれのキャラクターを出してほしい」とアドバイスがあり、皆で真摯に取り組みました。それによって四人の王子は、オーロラ姫をサポートするだけの役ではなくなって、それぞれの個性、背景をもって存在するようになった。皆と一緒に踊ると、本当に物語で一人ひとり個性的な王子さまと踊っている気持ちになれました。

(Photo:Shoko Matsuhashi)

──斎藤団長がダンサーとしてオーロラ姫を踊られていたとき、長い眠りから目覚めるやいなや、目の前にいる初対面の王子と結ばれることに少々演じにくさを感じられていたそうですが、今回上演されるヴァージョンではどのように表現されますか。

秋山 ふたりは第2幕の森の場面、幻影の場面で既に出会っているんです。リラの精の導きにより、王子は森の中でオーロラ姫の幻と出会い、「オーロラ姫を目覚めさせることができるのはあなただけ」と背中を押されます。そこでのふたりは決して触れ合うことはないけれど、お互いの存在を認識し合うんですよね。友佳理さんの演出では、その後、王子の口づけで目覚めるオーロラ姫は、「この人は誰?」と一瞬戸惑いますが、王子は「僕たち、前に森で出会っているよね」と見覚えのあるポーズにオーロラ姫を導きます。すると、「ああ、あのときの!」と彼女も王子のことを思い出し、短いけれどとてもロマンティックなパ・ド・ドゥを踊る──これ、すごく素敵ですよね!

(Photo:Shoko Matsuhashi)

──王子がオーロラ姫のもとへと向かう森の場面では、長さ44メートルの動く背景画も登場しました。

秋山 あのパノラマは他では見たことがない規模ですね。私たちがいるのは舞台上の限られた空間でしかないけれど、パノラマによってボートが木々の中をすすんでゆく様子があらわされていて、装置や照明の効果、その力を強く感じます。

(Photo:Shoko Matsuhashi)

オーロラ姫は、将来、王国を背負って立つ存在

──続く第3幕では、オーロラ姫とデジレ王子の結婚式が繰り広げられます。最大の見せ場となるのは、グラン・パ・ド・ドゥ。どんな思いで踊られているのでしょう。

秋山 グラン・パ・ド・ドゥは子どものためのバレエでも踊らせていただきましたが、そのときよりも、オーロラ姫の成長、デジレ王子との関係など、さまざまなことを考えて踊るようになりました。王子の口づけで百年の眠りから覚め、王子との愛を確認し合う──。彼女は女王さまになる準備をしているようにも思います。結婚式の場面は本当に華やかですが、グラン・パ・ド・ドゥが始まると一気に神聖な雰囲気になりますし、音楽も大好きです。

──斎藤団長は、この作品で古典バレエの「薫り」を伝えたいと語られていますが、東京バレエ団の『眠れる森の美女』ならではの魅力、見どころを教えてください。

秋山 いま、現代的で新しい解釈で、従来のものとは全く雰囲気の異なる『眠れる森の美女』もたくさん上演されていますが、友佳理さんは、ロシア・バレエの伝統を受け継ぐオーソドックスなものを大切にし、残したいという気持ちで取り組まれていたと思います。また私たちの『眠り』では、舞台上の人物たちは皆、ただそこで踊っているだけでなく、その人の役割、周りとの繋がりを強く意識しています。そこに物語があり、魂があり、皆が生きている、ということを大切にする。それが、友佳理さんの求められたことなのではないかなと私は思っています。

(Photo:Shoko Matsuhashi)

──オーロラ姫の表現については、どんな思いで取り組まれていましたか。

秋山 ただ可愛くて聞き分けがいい、それだけの女の子ではないと、友佳理さんからアドバイスをいただいていました。というのも、プロローグでのオーロラ姫は、妖精たちから優しさ(カンディード)、やんちゃ(フルール・ド・ファリーヌ)、寛大(パンくずを落とす精)、遊び心(歌うカナリヤ)、勇気(ヴィオラント)と、さまざまな特性をプレゼントされているのだから! 彼女はいろんな面を持つ女性に成長する。妖精たちの登場にはそういう意味が込められているんですね。そんな彼女も、第2幕の幻影の場、第3幕の結婚式の場になると、どんどん変化していく。たとえば、第1幕でのローズ・アダージオはとても素敵だけれど、オーロラは四人の王子さまへ素敵な方々だな、とか恥じらいの気持ちはあっても真剣に結婚相手として向き合うという気持ちにはなれていないと思うのです。だって彼女の心の中はまだ本当に幼い少女なのだから。それが、心から愛することのできるデジレ王子に出会うと、その視線は全然違うものになる。きっと彼女は将来、彼と一緒に王国を背負って立つ存在。第3幕ではそんなことも感じながら演じています。この『眠れる森の美女』は本当に華やかで夢があって美しいバレエ。舞台の上の人たちが皆、本当に生きていると感じられますし、幸せな気持ちになるバレエですので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

取材・文:加藤智子

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<公演情報>
『眠れる森の美女』全3幕 プロローグ付

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
原振付:マリウス・プティパ
新演出・振付:斎藤友佳理
ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ
舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ

日程/出演者
2025年4月24日(木)18:30
オーロラ姫:永久メイ(ゲスト)
デジレ王子:宮川新大

2025年4月25日(金)18:30
オーロラ姫:秋山瑛
デジレ王子:大塚卓

2025年4月26日(土)12:30
オーロラ姫:沖香菜子
デジレ王子:秋元康臣(ゲスト)

2025年4月26日(土)18:30
オーロラ姫:金子仁美
デジレ王子:柄本弾

2025年4月27日(日)14:00
オーロラ姫:秋山瑛
デジレ王子:大塚卓

2025年4月28日(月)14:00
オーロラ姫:永久メイ(ゲスト)
デジレ王子:宮川新大

2025年4月29日(火祝)13:00
オーロラ姫:沖香菜子
デジレ王子:秋元康臣(ゲスト)

会場:東京文化会館(上野)

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/sleeping/

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