宮川春菜が語る初の東名阪ツアー 「成長した自分を見てもらいたい」
クラシック
インタビュー

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すべて見る2024年11月、20世紀スペインの巨匠セゴビアの生地・リナレスで開かれた「アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール」で第2位を獲得し、受賞歴を更新した気鋭の若手ギタリスト・宮川春菜。春からの本格始動を前に、近況を語った。
セゴビア国際ギターコンクールでは、世界各地からエントリーした若手トップクラスの演奏を間近で聴き、審査員とじかに話しもできて、多くの学びを得た。
「皆さんとてもレベルが高かったので、聴いていて勉強になりました。楽器による響きの違いも実感して、楽曲に合うものを使えるとベストだなと思ったり…。審査員の方が出場者にフランクに話してくださったのもうれしかった。曲の特徴や面白さを存分に引き出せていて、指の動きも突出していたと評してもらえました。音の粒やタッチなど、今後の課題に関するアドバイスもいただけて、とてもありがたかったです」

初めてのスペイン訪問で、南部のアンダルシア地方のコルドバ、グラナダ、セビリアなどを観光できたのも刺激になったという。
「2週間の滞在でしたが、演奏の機会にも恵まれ、現地の方と交流したり、観光も楽しめて充実の毎日でした。リゾート地のアルムニェーカルは、青い海と白壁のコントラストがとてもきれいでしたね。セビリアではフラメンコを鑑賞できました。踊り手のひきしまった筋肉のスゴさにビックリ。空気を裂くようなステップ、フラメンコギターや歌に手拍子が入ったりして、とにかく圧倒されました。独特の指使いで鳴らすカスタネットの響きも忘れられません」

コンクールと異文化満喫でパワーもモチベーションもアップし「今年は、ひと回り成長した自分を見てもらいたいです」。5~6月に『Progress(プログレス=進歩、進化)』と題して、自身初の東名阪ホールツアーを開催する。
プログラムは15曲くらい考えている。目下、絶賛練習中は、初披露する「ハンガリー狂詩曲」。“ピアノの魔術師”といわれたリストが、オクターブ奏法や高速音階をめいっぱい盛り込んだ超絶技巧のピアノ曲を、名手・山下和仁が編曲したもの。このギターバージョンももちろん難曲で、演奏者は限られる。
「ギターの可能性を追究したアレンジで、トレモロの速弾き、ハーモニクス、スラーも重ねてかかったりしてますね。音域が広いので、チューニングで広げますが、それでもハイポジションが多くて、足りない音があるので、20フレットを付けてもらって演奏する予定です」
クラシックギターはフレット数が19なので、工房にギターを1カ月ほど預けて、1フレット増やしてもらうというのである。半端ない意気込み。貴重なレパートリーになるに違いない!
弾き込んだ曲のブラッシュアップにも余念がない。演奏曲が観客にどう聞こえているのか、動画録りして確認しながら練習するようになった。
「これでいいと思って弾いているのに、録って聴くと弾いているハズの音になってなくて…。どう弾くべきか、試行錯誤を繰り返しています」
ギターの丸いサウンドホールはボディーの表板にあり、音は正面の客席方向に飛ぶ。奏者はその楽器を抱えて弾いているので、そもそも音の聞こえ方は違う。
「例えば、今度のツアーで弾くジュリアーニの『英雄ソナタ』は、聴かせどころを見直しました。オーケストラの響きを表現していて、ピチカートはトランペットとか、ここは合奏の瞬間とか、ポイントはいろいろありますが、タッチを変えたりして工夫しています。音階の上り下りもたくさんあって、今までは一直線に弾いていたけれど、高いところから球が転がっていく感じにして、動きをつけてみたり…」

2024年は、4月の「J.S.バッハ国際ギターコンクール」優勝が弾みとなり、初仕事を次々とこなして、着実にステップアップした。9月には、物事の始まりを表す「Genesis(ジェネシス)」と題したソロ公演を、念願の都内で開催。バリオスの「大聖堂」やバッハの「シャコンヌ」など難曲の並ぶプログラムを自ら紹介しながら、ステージをやり終えた。初のソロCD「Strelitzia(ストレリチア)」も好評で、終演後のサイン会は長蛇の列となり、終えるのに1時間ほどかかった。
「クラシックを聴くのは初めてという方もたくさん来てくださって、うれしかったです。『チャルダッシュを聴きたい』とか『ジャズナンバーも聴きたい』など、いろんな感想をいただきました。自分らしさを出せて、お客さんにも楽しんでもらえるように、レパートリーを増やしていきたいです。東名阪での『Progress』コンサートも精一杯頑張ります」
本番がとても楽しみだ。
取材・文:原納暢子
宮川春菜 classical guitar concert tour 2025"Progress”

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2556765
<名古屋公演>
5月4日(日) 14:00開演
宗次ホール
<東京公演>
5月6日(火・祝) 13:30開演
浜離宮朝日ホール
<大阪公演>
6月27日(金) 18:30開演
あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
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