ダイナミックにして繊細な作品創りが匂い立つ、舞台『青のミブロ』稽古場の熱気から
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(撮影/荒川 潤)
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すべて見るのちに新選組となる壬生浪士組の姿を描く、安田剛士による漫画『青のミブロ』(講談社「週刊少年マガジン」連載)。アニメ化に続くメディアミックスとして、舞台版が4月11日にEX THEATER ROPPONGIで幕を開けたが、4月初めに稽古場を訪れると、初日に向けて熱い稽古が繰り広げられていた。活気あふれるミブロたちの一端をお届けしよう。(なお、脚本・演出の西田大輔さんやキャストの皆さんについて以降敬称略)
稽古場に入ると、仮セットとして実際のステージを想定した場所に設置された可動式の平台と障子が目に飛び込んできた。舞台の進行に応じて、アンサンブルキャストとスタッフが動かしていくようだ。このセットが完成し、さらに映像演出や照明、音響効果が加わると、どのようなステージになるのだろう。想像が膨らむ。
そしてキャストはステージ最前で、とあるシーンを演じている。みんなの和気あいあいとした雰囲気が、なんとも微笑ましい。『青のミブロ』はちりぬにおという少年の目を通して壬生浪士組(新選組)を描いた物語ということもあってか、血塗られた時代の中にあって溌溂とした“青春”の姿がより強く感じられるように思う。西田もそのシーンの演出をつける際、「楽しい感じが出るように」と言っていたことが印象に残った。
休憩を挟んで、稽古はオープニングのイメージシーンへ。テーマ曲と共に、坪倉康晴(ちりぬにお)をはじめキャストがダイナミックに動き殺陣を見せていく、まさに冒頭で観客の心をわしづかみにする場面だ。曲を一通り聴いた時「かっこいい……!」とでも言いたげに、みんなの表情が輝いていた。

西田がまず呼び寄せたのは、相澤莉多(斎藤はじめ)と瀧原光[NORD](田中太郎)。彼らは客席から登場するので、どのように動くのかを指示する。次に、ステージ奥の障子を開けるよう指示。そこにはにおの姿があった。西田は「一発目開いた時には、におしか見たくない。最初はどうしても背中でいきたい」と、客席に背を向けているよう伝える。そのにおが客席側に向き直り、ステージ前方へと移動しながらゆっくり刀を抜いていく。刀が抜き終わるタイミングで、はじめ・太郎は客席からステージへと駆け上がるのだ。におも含めたこの3人は、いわばミブロの後輩組。その中でも、におとはじめ・太郎とでシンメトリーの構図ができあがっているようだ。



3人がステージ前方で出揃うと、奥には猪野広樹(土方歳三)、飯島颯[(SUPER★DRAGON)](沖田総司)、岩城直弥(近藤勇)、砂川脩弥(芹沢鴨)、櫻井佑樹(原田左之助)らが揃って登場。西田は「3人!」「新選組!」「タイトル!」と、おそらくスポットライトの当たる順番を告げ、「なんとなくイメージわかるでしょ」と一言。にお、土方、沖田、近藤、芹沢と、順に立ち位置を指示していく。「ここでシルエット!」という決めポーズは、漫画で言えば「バァーン!」と大きな文字が書かれていそうな、かっこよさあふれる瞬間だ。




そこから、さらに動き出す面々。「戦場感をスローで」という西田の指示のもと、それぞれにエア殺陣とでも言うべき動きを見せていく。西田は時に自身も刀を手に、殺陣をつけていく。その間も、アンサンブルと動きを返すキャストがいたり、自分でカウントしながらついたばかりの動きを自身に飲み込ませている人もいたり。特に坪倉、相澤、田中、飯島はアンサンブルと共に、刀を動かすタイミングなども含めて入念に確認。各々が自分のすべきことを成している、エネルギーに満ちた姿がとても小気味よい。
とはいえ、全員で曲に合わせて動こうとしても最初からそう簡単にはいかない。猪野が各人の動きを整理して西田に確認したり、岩城と砂川はシンメトリーで動くパートがあるためそこを繰り返したり。猪野のまとめ役的な立ち回りはどこか土方らしさを感じるし、岩城と砂川も既に表情が近藤と芹沢そのもので不敵な感じも頼もしい。

障子を閉めるタイミングを確認しつつ、におがステージの奥まで歩いていく……というところまでいくと、再度曲を流して頭から通してみる。ステージに出るタイミングがずれると、西田から容赦なく「遅い!」と檄が飛ぶ。とはいえ先程動きがついたばかりとは思えないまとまりようなのだから、キャストの吸収力も素晴らしい。

結局この日は、オープニングイメージの途中まで。移動のタイミングが間に合わない部分は下手から上手に移動するのではなく下手のままで、などと臨機応変に変更していく様子、即座にキャストが対応する姿も、見ていると非常に興味深い。細かな調整を繰り返しつつ舞台を創り上げていく、その途方もない労力と情熱にあらためて創作の奥深さを感じた。そしてステージで躍動するミブロの姿が確かに見え、「すごい舞台になりそうだ……!」とワクワクするような予感に震える瞬間でもあった。その予感、手応えをぜひ劇場で感じて欲しい!

取材・文/金井まゆみ
撮影/荒川 潤
<公演情報>
舞台『青のミブロ』
【東京公演】
日程:2025年4月11日(金)~20日(日)
会場:EX THEATER ROPPONGI
【大阪公演】
日程:2025年4月25日(金)~27日(日)
会場:京都劇場
【ストーリー】
1863年、京都。心優しき少年・ちりぬにおの運命は、土方歳三と沖田総司に出会ったことをきっかけに動き出す。少年を突き動かしたのは、心の内に秘めていた不条理に対する“怒り”と「世界を変えたい」という純粋で誠実な“願い”。その想いを胸に入隊した最凶の剣客集団「壬生浪士組」、通称ミブロで、少年は時に己の無力さに傷つき、時に残酷な真実に震えながら、激動の青い春を駆ける!
原作:安田剛士『青のミブロ』(講談社「週刊少年マガジン」連載)
脚本・演出:西田大輔
出演:坪倉康晴
猪野広樹 飯島颯(SUPER★DRAGON) 相澤莉多
岩城直弥 砂川脩弥 櫻井佑樹(劇団EXILE) 瀧原光(NORD)
成瀬遙城 新谷聖司 わかばやしめぐみ
矢代卓也 速川大弥 横山真史
本間健大 書川勇輝 榮桃太郎 秋山皓郎 和田啓汰 田上健太 木ノ花大空矢 窪寺直 松野咲紀 佐藤侑愛 窪寺ゆりあ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/miburostage/
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