舘ひろしと藤井道人が再タッグ『港のひかり』今冬公開決定 共演は尾上眞秀、撮影は木村大作
映画
ニュース

『港のひかり』 (C)2025「港のひかり」製作委員会
続きを読むフォトギャラリー(4件)
すべて見る映画『正体』で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人の最新作『港のひかり』が、11月14日(金) に公開されることが決定した。
本作は、北陸の港町を舞台にした完全オリジナル脚本で、元ヤクザの“おじさん”と両親を事故で失い視力を失ってしまった不遇の少年との十数年間の友情を描いた作品。たとえ血のつながりはなくても「誰かのために生きる」という自己犠牲の精神をベースにした感動作だ。
主演は舘ひろし。藤井とのタッグは『ヤクザと家族 The Family』以来2度目となる。藤井監督との映画をもう1本撮りたいと熱望していたという舘は、今回企画から作品に参加し、監督と脚本の内容について、何度も打合せを重ねていたという。打合せの中で舘ひろしは、無償で自らの人生を捧げる愚直な男という故・渡哲也の面影を宿すような男を演じたいと監督に直談判。舘の思いを受け、藤井が脚本を練り上げた。
舘は「人の強さとは何か、誰かのために生きるとはどういうことか、かつて親分に教えられたその思いを愚直に守りながら、漁師として孤独に生きようとする男を演じました。この役は藤井監督と何度も話し合い作り上げたものです」と語り、本作に懸ける熱い思いを吐露。そして、「“強い男”とは何かを考えたとき、石原裕次郎さんや渡哲也さんの生き様が頭をよぎりました」と、自分を育ててくれた先輩の影を投影したと語った。
今回、新しい挑戦として日本映画界を代表するキャメラマン・木村大作とのタッグに挑んだ藤井は、撮影現場を思い返し「発見と勉強の連続で、沢山の偉大な背中を見せていただきました」と先輩映画人との撮影についてコメント。「ロケーションへの敬意、撮影現場での情熱、そして何より映画への愛。35mmフィルムでの撮影、モニターのない撮影現場のスタッフ、キャストの集中力は凄まじく、“先輩たちは、この集中力の中で映画を作っていたのか”と圧倒されました」と、現場での熱量を感じ取っていたという。
対する木村は、「この作品のショートプロットを読んだとき、これは他人への自己犠牲の物語であり、今までにない新しい映画ができると思った」と語り、本作の可能性を感じていた。撮影という枠を超えた“映画を作る”キャメラマンである木村は、本作の映像についても監督との打合せを何度も行い、「この作品は、元ヤクザの漁師が盲目の少年のために自らを犠牲にして光を与える、という限りなく非日常の物語。だからリアリティではなく、叙事として作りたい」と撮影手法だけではなく、どう観客に見せたいかまで議論を重ねた。
また本作において、もうひとりの主役級の重要な役どころである不遇の少年・幸太を演じるのは、寺島しのぶの息子として歌舞伎界でも注目を集める尾上眞秀。目が見えず、両親もいない、理不尽で辛い境遇にいる少年という難しい役どころであることについて尾上は、「撮影前に盲学校に行かせてもらったり色々準備をしました。お芝居の中で特に難しかったのは涙を流すシーンでした」と語り、「舘ひろしさんはいつも優しくて、撮影が終わったらよく焼肉屋さんに連れて行ってくださいました。藤井監督や藤井組のスタッフの皆さんにもとてもよくしていただきました。キャメラマンの木村大作さんもすごく優しかったです」と、初の映画出演で緊張しながらも現場の空気を楽しみながら撮影に臨んだことを語った。
尾上の演技について藤井は、「日本映画界の未来といっても過言ではない尾上眞秀くんも、素晴らしい演技でスクリーンを彩ってくれています」と語り、尾上の演技をファインダーで見つめ続けていた木村も「映画初出演とは思えない、自然体で豊かな感情表現を見せてくれた」と太鼓判を押した。
併せて、全編フィルム撮影で行われた本編映像の中からの切り抜きスチールが公開された。元ヤクザで漁師の“おじさん”の船に乗る幸太。幸太にとっては見えないはずの海を感じ微笑む顔と、遠く海を見つめる“おじさん”との対比が美しい、フィルムの質感そのままのスチールになっている。
<コメント全文>
■舘ひろし

2021年公開の映画『ヤクザと家族』の撮影が終わった時、藤井監督と「必ずもう一度ご一緒したいです」と約束しておりました。その後、東映さん、スターサンズの河村プロデューサー、藤井監督とともに、約3年間にわたり企画について議論を重ねてきました。
紆余曲折しながらも、「深みのある人間ドラマを作りましょう」と河村プロデューサーから1枚のプロットをいただき、即決しました。今回、私が演じたのは、すべてを捨てた元ヤクザという役どころです。「人の強さとは何か」「誰かのために生きるとはどういうことか」かつて親分に教えられたその思いを愚直に守りながら、漁師として孤独に生きようとする男を演じました。
この役は藤井監督と何度も話し合い作り上げたものです。
“強い男”とは何かを考えたとき、石原裕次郎さんや渡哲也さんの生き様が頭をよぎりました。
本作は、日本映画界を代表するキャメラマン・木村大作さんが、35mmフィルムに地震前の能登半島の美しい自然を、役者の心情と共に見事に焼き付けてくださいました。また、地元の皆様の多大なるご協力をいただきながら完成した作品です。
現在、能登半島は復興の途上にあり、大変な状況が続いておりますが、本作を通じて少しでも恩返しができればと願っております。
大スクリーンでこそ味わうべき、一見の価値がある映画です。きっと映画史に残る感動作だと自負しております。ぜひ劇場でご覧ください。
■尾上眞秀

『港のひかり』の撮影で1カ月くらい能登にいました。僕にとって初めての映画だったので張り切ってやりました。幸太は孤独で目が不自由な役だったので、撮影前に盲学校に行かせてもらったり色々準備をしました。お芝居の中で特に難しかったのは涙を流すシーンでした。
舘ひろしさんはいつも優しくて、撮影が終わったらよく焼肉屋さんに連れて行ってくださいました。
藤井監督や藤井組のスタッフの皆さんにもとてもよくしていただきました。
撮影中寒かった時はみんなであったかくしてくださったりして、嬉しかったです。
撮影最後の日は本当に皆さんと別れたくありませんでした。
キャメラマンの木村大作さんは怖い方なのかなと思っていましたが、すごく優しかったです。
この映画は2年前に撮影したのであまり細かいことは覚えていませんが、試写を見てまだ小さかったなぁと思いました。
撮影中は沢山美味しいものを食べました。地元の方にもとても親切にしていただきました。地震や災害の事をとても心配しています。この映画で皆さんに少しでも元気になっていただきたいと思います。
■藤井道人

2022年に急逝した河村光庸プロデューサーの企画である『港のひかり』は、自分の人生においてもとても意味のある作品になりました。『自己犠牲』をテーマに描かれる本作は、『ヤクザと家族 The Family』以来、常に気をかけてくださっていた舘ひろしさんを主演に迎え、北陸・能登半島の美しい景色と地元の皆さまのお力で完成した日本映画です。
そして木村大作さんとの共同作業も、発見と勉強の連続で、沢山の偉大な背中を見せていただきました。ロケーションへの敬意、撮影現場での情熱、そして何より映画への愛。そのすべてが、デジタルによって便利に、そして簡易になった現代へのメッセージともとれる大作さんの哲学を感じました。35mmフィルムでの撮影、モニターのない撮影現場のスタッフ、キャストの集中力は凄まじく、「先輩たちは、この集中力の中で映画を作っていたのか」と圧倒されました。
大作さんはじめ、美術の原田満生さん、音楽の岩代太郎さんなど、日本映画を代表する先輩方と若輩者の藤井組がひとつの集合体となり、『港のひかり』を作れたこと、誇りに思います。
そして、何より主演の舘ひろしさんが現場の中心に立って下さり『監督、楽しんでますか?』といつも優しく声をかけてくれたことが、毎日の心の支えでした。
日本映画界の未来といっても過言ではない尾上眞秀くんも、素晴らしい演技でスクリーンを彩ってくれています。本作公開まで是非楽しみにしていてください。
そして撮影地でもある、北陸地方の皆さまの一日でも早い復興を、心より願っています。
■木村大作
映画100年の歴史の中で名作と言われる作品も、実は過去の作品の模倣の連続であり、その模倣を超えてオリジナリティを生み出している。この作品のショートプロットを読んだとき、これは他人への自己犠牲の物語であり、今までにない新しい映画ができると思った。
キャメラマンとして「映画を撮る」のではなく、「映画を作る」というスタイルを貫き通してきた私は、「この作品は、元ヤクザの漁師が盲目の少年のために自らを犠牲にして光を与える、という限りなく非日常の物語。だからリアリティではなく、叙事として作りたい」という意志を藤井監督に伝え、その意志をベースに、能登半島・富山の素晴らしい場所にこだわって撮影を行った。そこに立つ舘ひろしは、誰かのために生きる男を情感たっぷりに演じ、自分がこの人を一番表現できる位置にキャメラを据えた。
そして、本作の少年役はとても重要だと思っていて、尾上眞秀は映画初出演とは思えない、自然体で豊かな感情表現を見せてくれた。撮影・編集を終え完成した今、キャメラマンとしてこの映画のために 全てを懸けた自負がある。
<作品情報>
『港のひかり』
11月14日(金) 公開
(C)2025「港のひかり」製作委員会
フォトギャラリー(4件)
すべて見る