江口のりこ×那須凜×三浦透子が三姉妹役に挑戦 パルコ・プロデュース 2025『星の降る時』インタビュー
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すべて見る2023年のイギリスでの初演で大きな話題を呼び、2024年度「ローレンス・オリヴィエ賞」BEST PLAYにノミネートされたベス・スティールの新作戯曲『星の降る時 Till the Stars Come Down』。小田島則子が翻訳、栗山民也が演出を務め、江口のりこ、那須凜、三浦透子、段田安則、秋山菜津子をはじめとする豪華俳優陣による日本初演が上演される。
――本読みを終えたタイミングですが、印象や手応えはいかがでしたか?
江口 いつも、本読みはどんな物語か把握するチャンスだと思っています。でも、今回は分からないまま進んでいって捉えどころがなかったのですが、本読みの前に栗山さんが物語を読み解くヒントを話してくれて、いいことを聞けたと思いました。
那須 栗山さんの言葉でなるほどと思ったのは、「メッセージを伝えるお芝居ではなく、大きな宇宙から見下ろした時の小さな家族という一つの共同体を作るような感覚」ということです。何か大きなものを生み出すというより、家族の中で起きることをつなげることで、自然と物語ができていくのかなと感じました。
三浦 いろいろな矢印が入り乱れている作品で、読んでいてとても面白いと思いつつ、体現するのはすごく難しいだろうと感じました。一人の人間でも、姉妹といるとき、夫といるときなどで在り方が少しずつ変わると思う。稽古場でそれを探ることで、矢印がくっきりし、脚本が目指す方向に向かう気がします。
――ご自身の役についての印象はいかがでしょう。
江口 まだ掴みきれていませんね。私が演じる長女・ヘーゼルは「差別主義だ」と人に言われるけど、そうなのだろうかと。本当に差別主義なのか、移民に旦那の仕事を奪われている状態で生活が苦しいからそうなっているのか。難しいなと思います。

那須 私は本当に三人姉妹の次女なので、読んでいてマギーとの共通点を探ろうとしてしまいます。長女と三女が喧嘩しそうな時に仲を取り持つ感じは共感しますし、それが嫌で家を出たのかもしれないとか、いろいろなことを想像しました。すごく仲がいい瞬間から一気に険悪になったり仲直りしたりするのは姉妹あるある(笑)。読んでいて面白かったです。周りからは奔放で自分勝手だと思われているけど、マギー自身は「私だってみんなのことを考えて生きているよ」と主張したいのかなと考えながら読みました。
江口 一番気を遣ってくれている人だと思う。ヘーゼルが失言した時に、だいたいマギーが空気を変えてくれる。奔放なように見えて大人な感じがあるなって。人の役の印象は言えますね(笑)。
三浦 人として愛していても、違う価値観を持っていることってあると思います。シルヴィアは相手の価値観が同じでも違っても、自分を曲げることなく存在できる人。みんなと上手くやれているけど、八方美人ではなく自分を持っている。バランス感覚がすごいと思いましたし、そのバランスは三女だからなのかなと想像しました。
那須 三女ってそういうところがあると私も思います。お姉さんたちは三女のそういう部分を羨ましく思っているんじゃないかなと、読んでいて思いました。

――役とご自身の兄弟・家族との関係における共通点などはありましたか?
三浦 私は一人っ子なので、姉妹を擬似体験できるのが嬉しくて。こういう感じなのかなと思いながら楽しみたいですし、お二人にもいろいろ聞いています。
江口 私がこの作品と共通しているなと思ったのは、家族で一緒に過ごしているとだんだんイラついてきて、家に帰ってから「なんでもっと優しくできなかったんだろう」と反省するんですよね(笑)。
那須 (江口が)「嫌だと思ってもすぐにまた会いたくなる」と話していて、兄弟ってすごいなと思いました。私もイラつくことがあるし、急に自分に怒りの矛先を向けられて「え!?」ってなる時もある(笑)。でも離れると会いたくなるので、家族って不思議です。脚本の中に出てくる「大好き」という言葉も本音だと思うし。
江口 でも、兄弟と一緒に過ごしているときに「大好きだよ」とかいう? 外国の方だからなのかな。
一同 (笑)。
三浦 若い世代だと、兄弟が友達で恋人みたいな感覚の人もたまにいるかもしれません。この三姉妹はそれとは違う気もしますけど。
那須 軽く言うんじゃないですか? 電話でも最後に「ラビュー!」って言ってから切るみたいな。
三浦 確かに、「愛してる」と「I love you」の重みは違うのかも。同じ言葉でも、私たちとは感覚が違いそうですね。翻訳劇の難しさというか、どう解釈するかが大事になってくると思います。
――栗山さんの演出の印象、今回の作品について言われたことなどを教えてください。
江口 本読みでは、「声を探していきましょう」と言われました。前の人のテンポに乗ってセリフをポンポンと喋るんじゃなく、一人ひとりが自分の役の性格などを理解して声を探していこうとおっしゃっていました。
那須 栗山さんとは4度ご一緒していますが、栗山さんの頭の中でビジュアルなどが既にできていて、材料を渡してもらい、私たちが料理していくようなお稽古でした。この作品は家族の芝居なので、みんなで力を合わせなきゃいけない稽古になる気がしています。
三浦 前回栗山さんとご一緒した時は稽古の時から緊張感がありました。稽古初期の段階から可能な限り本番に近づけていくというやり方で、小道具なども用意できるなら使っていこうと。稽古時間も短いので、一回一回を逃してはいけないという気持ちになりました。今回もいいヒリヒリを味わえそうで楽しみです。
江口 前回はとても難しい作品で、自分の力不足をすごく感じました。栗山さんの要望や説明を理解できるけど体が追いつかなかったんです。栗山さんはなんとなく大学の先生のような印象を受けるというか、今回またご一緒できるのはすごくいい機会だと思っています。
――共演者のみなさんの印象、特に楽しみなシーンや絡みなども教えていただけますか。
江口 私はやっぱり三姉妹ですね。ここは楽しみたいなと思います。
那須 秋山(菜津子)さん、段田(安則)さんはお芝居を見て憧れていた先輩たちなので、一緒にできるのが楽しみです。特に秋山さん演じる叔母さんはキャラクターとしてすごく面白い。秋山さんのパワーに負けないように学びたいと思っています。
三浦 三姉妹も楽しみにしていましたが、シルヴィアの夫であるマレク役の山崎(大輝)さんは、本読みをする前の顔合わせの挨拶からマレクらしさみたいなものを感じられて、一緒にお芝居するのがより楽しみになりました。

――お互いの印象はいかがでしょう。
江口 透子ちゃんとは11年前にテレビドラマの撮影でご一緒しました。待ち時間、静かに本を読んでいたのが印象的でずっと気になっていました。
那須 (三浦は)映像などで見ていて素敵だなと思っていました。お会いしたらすごく話しやすいし明るいけど、お芝居に入ると独特な空気観がある。ご一緒できて本当に嬉しいです。
江口 那須さんはパワフルで明るい。那須さんがいればチームがうまくいくだろうと思うくらい周りを明るくしてくれます。
三浦 本読みの時も長女、次女、三女で並んでいたので、那須さんが繋いでくれて自然と三人で話せました。稽古場が楽しくなりそうだなと感じました。江口さんは、お芝居中も普段も江口さんの時間が流れている感じがすごく素敵。栗山さんがおっしゃった「声を探してほしい」というのは、声とその人が持っているリズムを見つけてほしいということだと思ったのですが、江口さんはそれを素で持っている方です。
那須 江口さんは独特な空気感や時間の流れがあるけど、江口さんのペースでもこちらが緊張することはない。自然体で居させてくださる方だと本読みをしながら感じました。透子さんもそうで、ふわっとした空気が流れています。緊張せずにいられる包容力を感じています。
取材・文/吉田沙奈
<公演情報>
パルコ・プロデュース 2025 『星の降る時』
【東京公演】
日程:2025年5月10日(土)~6月1日(日)
会場:PARCO劇場
【山形公演】
日程:2025年6月8日(日)
会場:やまぎん県民ホール
【兵庫公演】
日程:2025年6月12日(木)~15日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【福岡公演】
日程:2025年6月21日(土)・22日(日)
会場:キャナルシティ劇場
【愛知公演】
日程:2025年6月27日(金)~29日(日)
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/tillthestarscomedown/
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