のんは「スーパーの女」を演じたい、宮本信子は“私じゃなきゃダメ”な伊丹映画語る
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左からのん、宮本信子
特別企画「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭」の「スーパーの女」上映記念登壇イベントが本日4月18日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で行われ、同作で主演を務めた宮本信子と、俳優・アーティストののんが参加した。
「伊丹十三4K映画祭」では、伊丹十三の監督作全10本が4Kデジタルリマスター版でスクリーンにかけられる。この日上映された1996年公開の「スーパーの女」は、“スーパー大好き”な主婦が、幼なじみの経営する売れないスーパー「正直屋」を立て直そうと奮闘する物語。専務の五郎を津川雅彦、彼が店の問題解決のため雇う幼なじみ・花子を宮本が演じたほか、三宅裕司、六平直政、伊東四朗らも出演した。
のんは、伊丹映画の中でも特に好きな作品に「タンポポ」「マルサの女」「ミンボーの女」「スーパーの女」を挙げていたという。彼女は本日上映が始まった「スーパーの女」について「めちゃくちゃ面白い。改めて観ると興奮します。花子と五郎の掛け合いが本当に楽しいし、ウジウジした空気を花子がパーンと快活に切り裂いていくのが気持ちいいなと思いました」と声を弾ませる。宮本については「朗らかなシーンと緊張感のあるシーンが切り替わるとき、宮本さんの演技で空気を一変させる瞬間がたまらないです」と伝えた。
撮影時のことを問われた宮本は「津川さんとは(伊丹の監督第1作である)『お葬式』の前からご一緒させていただいていたんですが、『スーパーの女』では小学校の同級生役ですから、本当に楽しくてね」と目を細め、「伊丹監督は俳優出身だから、俳優同士の“間”の芝居がすごく面白いと言っていて、『スーパーの女』ではほとんどワンシーンワンカット。その間、監督がモニタを見てあごをなでながらニヤニヤしていたのを覚えています」と明かす。作品については「だんだんスーパーがグレードアップしていって、彼女(花子)が思うようなスーパーにしていくのがすごく痛快でした」と語った。
観客から事前に募集された質問より、「伊丹映画の中で演じてみたい役は?」と聞かれたのんは「すごく緊張する質問ですね……。宮本さんを前にしておこがましいんですけど『スーパーの女』の花子はめちゃくちゃやってみたいと思いました」と述べ、宮本は「のんちゃんの今の年齢で『やりたい!』と思うのが『スーパーの女』っていうのはすごくよくわかる。楽しいでしょう? 相手役が誰になるのか想像するのも」と話を広げる。また宮本は「『タンポポ』は代わりが利くと自分の中では思っているんですけど、『マルサの女』とか『あげまん』は、私じゃなきゃダメだろうなんて考えます」とほほえんだ。
当時の現場の様子に話題が及ぶと、宮本は「(伊丹は)怒鳴ったりはしない。ただ、えもいわれぬ不思議な緊張感はありました。粛々と進んでいく感じで、大変だけど、次に伊丹監督に呼ばれなかったらダメだと思わせる現場だったと思います」と述懐する。続けて宮本は「私にはすごく厳しかったと思います」と言い、「何度やってもダメ。『もっとやったらもっと絞り出せるだろう』という感じで、矢のように注文が来ますし、それを次のシーンでやらなくちゃいけないですから、セリフも完璧に覚えておかないと。そのおかげで私は本当に鍛えられました」と口にした。
伊丹映画の魅力について聞かれたのんは「めちゃくちゃかっこいいと思います。笑えるシーンも、社会的なテーマもある中で、言葉の掛け合いや映像の作り方にしびれる。その中で宮本さんが演じていらっしゃる姿が、力強くて粋。そこが心にぐっと来ます」と真摯に言葉を紡ぐ。宮本は「13年の間に10本。約1年に1回公開されていた作品たちが、このように映画祭としてぎゅっと凝縮して上映され、たくさんの方に観ていただけることに感謝しています。しかもいつもお客様が満席だって耳にします。伊丹さんは赤字が嫌いでね……(笑)」と笑いを誘い、「のんちゃんと皆さんと一緒にこの劇場で過ごさせていただき、楽しい時間でした! 本当にありがとうございました!」と声を張り、イベントを締めくくった。
「伊丹十三4K映画祭」はTOHO シネマズ日比谷と大阪・TOHO シネマズ梅田で5月1日まで開催。5月17日には、日本映画専門チャンネルで10作品の一挙放送も行われる。
©伊丹プロダクション