政治やメディアのあるべき姿とは、五百旗頭幸男の新作「能登デモクラシー」予告
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「能登デモクラシー」場面写真
「はりぼて」「裸のムラ」で知られる石川テレビの五百旗頭幸男が監督を務めた映画「能登デモクラシー」の本予告がYouTubeで解禁。同作は能登半島の中央に位置し、人口減少の最終段階にある石川県穴水町が舞台のドキュメンタリーだ。
「能登デモクラシー」は穴水町で手書き新聞「紡ぐ」を発行し、町の未来に警鐘を鳴らし続けている元中学校教師・滝井元之さんと妻・順子さんの活動を追ったもの。石川テレビのクルーが役場や議会に取材を重ねていく中、2024年1月1日に能登半島地震が発生。町の暮らしの行方と人々の営み、そして役場と町議会の関係の歪さを見つめながら、政治やメディアのあるべき姿を浮き彫りにしていく。本予告にはその一片が収められた。
また本作を鑑賞したライター・ISO、ドキュメンタリー監督・大島新、映像作家・小森はるか、アーティストで詩人の瀬尾夏美、映画監督・岨手由貴子、ラッパーのDARTHREIDER、ライター・武田砂鉄、時事芸人・プチ鹿島、映像ディレクターでプロデューサーの前田亜紀のコメントが到着。大島は「間違いなく良作、だけど、なんだか五百旗頭さんらしくないな……と思っていたら、最後にすげぇのきた! 問い質すタイミングも含め、最高だ。これぞ五百旗頭ワールド。民主主義は、やっぱり簡単じゃないよね」と称賛する。
なお2025年内の映画館興行から、配給収入の一部を令和6年能登半島地震の復興のために寄付すると製作・石川テレビ放送、配給・東風が発表。寄付先および寄付金額は後日、公式サイトにて報告される。
「能登デモクラシー」は、5月17日より東京・ポレポレ東中野、大阪・第七藝術劇場、5月24日より石川・シネモンドほかにて全国で順次ロードショー。
ISO(ライター)コメント
能登の物語を観ることで能登の人を応援できれば……なんて些か傲慢な意気込みで観始めたが、むしろこれは能登の外側にいる人々を奮い立たせるエンパワーメント・ドキュメンタリーだ。
衰退の一途を辿る民主主義を手繰り寄せ、自らの手で社会を操舵し始めた穴水の姿は希望そのもの。「なら我々も政治を変えられるのでは?」と鼓舞されずにはいられない。
この社会で市民が持つ力を思い出させてくれる、今この国に最も必要な映画ではないだろうか。
大島新(ドキュメンタリー監督)コメント
草の根新聞と、その活動を報じたテレビによって、民主主義の萌芽が見える。
間違いなく良作、だけど、なんだか五百旗頭さんらしくないな……と思っていたら、最後にすげぇのきた!
問い質すタイミングも含め、最高だ。
これぞ五百旗頭ワールド。民主主義は、やっぱり簡単じゃないよね。
小森はるか(映像作家)コメント
手書きの闘いを、同じ想いで支える人たちがいる。
過疎の止まらない町の未来をあきらめない。あきらめさせない。
一通一通が紡いできた連帯の輪は、地震の後にこそ濃く広がっている。そのたしかな軌跡が残された。
滝井さん夫妻の記録は、能登の各地で地震の前から奮闘してきた人たちにも光を当てるものだ。
そして能登だけの問題ではないと、自分にも支える手があることに気づかせてくれる。
瀬尾夏美(アーティスト / 詩人)コメント
ここは、能登半島のちいさなまち――
なあなあな部分の脱却は難しいよなあ、何十年も住んでいると
町長の率直な本音の通り、町政はぐずぐずと腐敗している
しかしこのまちには、自治のための技術を持つ、うつくしい高齢者たちがいる
田畑を耕し、生きものを育て、果実をもぎ、水を引く
発行部数500部の手書きの新聞は、町民たちが本音を共有するための重要なメディアだ
書く、刷る、手渡す / 読む、カンパする、語り出す
80歳の主人公と、穴水町にエールを
岨手由貴子(映画監督)コメント
究極のオールドメディアともいえる過疎地の手作り新聞。
震災後の号に「私たちは生きています」と書き入れるとき、その筆の逡巡が雄弁で、本物の言葉を見たという気がした。
滝井さんは住人や議会に声をかけ続け、妻の順子さんは何度も「ありがとう」と口にする。
そんな「言葉を手渡す」という切実な営みが、即席の引用やリポストでは届かない扉をノックし続ける。
DARTHREIDER(ラッパー)コメント
世界の極東に位置し、少子高齢化社会を迎えた島国、日本。能登デモクラシーはそのまま日本のデモクラシーを映し出している。
果たして僕らは慣例を抜け出し、自分たちで社会を再建することが出来るのか?
僕らに滝井さんのような在り方が出来るかどうか。人のために動く彼の背中には猫さえも安心して乗っかる。
武田砂鉄(ライター)コメント
税金を払っている。嫌々ながら。
ちゃんと使ってもらわないと困る。
チェックする。なんだこれ、と疑う。
これ、民主主義の基本だ。
今、折れそうになっている。
なぜなのか。図太い問いに貫かれている。
プチ鹿島(時事芸人)コメント
全てが見どころだが新聞マニアとしては「地元メディアとは何か?」を考えさせられた。
誰かが監視をしないとすぐに群れる。五百旗頭監督や滝井さんのような人がいてこそ緊張感を持つ。あの「手書き新聞」こそ、石川県で最高の地元紙ではないか? 観ればわかります。
前田亜紀(映像ディレクター / プロデューサー)コメント
能登で最も小さな自治体、穴水町。穏やかな海とおおらかな人々、選挙をすれば投票率は70%超え…。
何ともうらやましい!と思いきや、一皮剥けば権力の濫用、惰性、波風立てず「なあなあに」が蔓延。
この国の等身大を見た。それに抗い続ける地元の小さな独立系メディアと、立ち上がり始めた町民たち。民主主義の芽を育てていくために大切なものは何かを教えてもらった。
©石川テレビ放送