滝野弘仁の長編デビュー作「くまをまつ」6月公開、土地の記憶と創作の物語
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「くまをまつ」ポスタービジュアル
第37回東京国際映画祭NIPPON CINEMA NOW部門に正式出品された滝野弘仁の長編デビュー作「くまをまつ」が、6月7日より東京・ポレポレ東中野ほかで全国で順次公開されることがわかった。
本作は滝野の出身地である石川県小松市の古民家と石切場を舞台に、脚本家のややこと8歳の少年タカシが体験する“土地の記憶と創作”が入り混じるひと夏の不思議な物語。ややこは、亡き祖父・隆二郎の古民家に滞在しながら、遺された日記を題材に新作を執筆していた。ある日、彼女は夏の間だけ甥の少年タカシを預かることに。ややこはタカシを昔の自分と重ね合わせ、執筆中の脚本に取り入れようとする。一方でタカシは、深い石切場の奥で隆二郎の古い記憶に触れるのだった。
ややこ役には「親密さ」「シミラー バット ディファレント」などで知られる平野鈴、タカシ役には本作が映画初出演となる渋谷いる太がキャスティングされた。このほか中村映里子、大場みなみ、内田周作、松浦りょう、竹内啓、森葉南、星能豊、中西未代子、千木野ひとみ、平井寅、高田伸一、美緑トモハル、松尾渉平、久田松真耶が出演する。平野、滝野のコメントは下記の通り。「くまをまつ」の配給はkine A houseが担う。
平野鈴 コメント
「『くまをまつ』には問いがある」。
完成した作品を初めて観たときに浮かんだ言葉です。そしてその問いは、作品から投げかけられるものというよりも「見つける」「気が付く」もので、ひとによってそれぞれ違うものなのだろうとも想像します。
こんなにも自由な行き先を持つ映画に携われたことを、ひとつひとつにじっくりと向き合う監督やプロフェッショナルなスタッフのみなさんと協働できたことを、心から嬉しく思います。
また、滝ヶ原という美しい場所に置いた身体を素晴らしい俳優のみなさんが代わる代わるに通っていった時間は、ややこを過ごした自分自身としても非常に得難い時間でした。みなさんの存在そのものが当時の自分にとっての宝だったと、撮影からずいぶん時間が経った今になっても新鮮に思い返します。
この映画が、あらゆる場所に届くといいなと願います。
滝野弘仁 コメント
劇中でややことタカシが生活する一軒家は、僕の亡くなった祖父の生家です。
この映画の脚本もその家で書きました。
耳をすませば虫や動物の鳴き声が聞こえ、土や植物の匂いが家の中からも感じられるような、そんな土地です。子供の頃あの家に泊まりに行った記憶を辿ると、懐かしいような、でも少し怖いような。それは確かにあったことなんだけれど、なんだかずっとうわの空のような。今となっては、そんな薄ぼんやりとしたことしか思い出せなくなっています。僕が忘れてしまったあの頃の記憶はもう、どこか遠いところで消えてしまったのかもしれない。でももしかしたら、あの石切場の暗がりのいちばん深いところで、こちらをじっとまっているのかもしれない。まるで、冬眠しているくまみたいに。
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