萩原利久の俳優としての本音「自分の演技に満足することはない」
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萩原利久 (撮影:梁瀬玉実)
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すべて見る「常にフラット、かつプロフェッショナル」ーー非常に抽象的な言葉だが、筆者が萩原利久に対して思う言葉だ。映画、ドラマ、冠番組……萩原利久をテレビで見る機会は幅広い。しかし、そのどれに対しても真摯に向き合っている印象があるのだ。そしてそれは“好き”に対しても、言えること。目の前のことに一直線な萩原は、お笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介による小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の映画化にどのように挑んだのか。話を聞くと、彼なりの葛藤が見えた。
かけがえのない特別な時間は「試合を観ている時」

大学生の小西徹は、思い描いていたキャンパスライフとはほど遠い、冴えない毎日を送っていた。しかし、そんなある日、彼の前に現れたのはお団子頭の女子大生・桜田花(河合優実)によって、繰り返しの毎日は、かけがえのないものへと変わっていったのだった。
そんな映画のストーリーに絡めて、まずは現在26歳の萩原に“特別な時間”を聞いてみた。すると彼は、1秒も待たないうちに即答する。「試合観ている時です!」と。大のNBA好き、そしてプレミアリーグファンとしての一面を持つ彼。その答えは、全くを持って意外ではなかった。
しかし、バスケットボールにもサッカーにも言えることだが、勝敗はつきもの。例えば、自分の応援しているチームが調子が悪い時、それもかけがえのない時間といえるのかと彼に問うと「もちろん、気分が落ちることはあります」と笑う。しかし、その後で彼はその魅力を熱っぽく、次のように語ってくれた。
「試合の内容には左右されるのですが、結局のところ、好きな選手の現役時代を見れているという体験が、そもそも特別なんです。マイケルジョーダンの現役は、どう頑張っても見れない世代なので、やっぱそれを見た人に対する羨ましさは消えません。ただ、そうやって思う分、今の選手を見れているっていうのが、もうそもそも特別な時間なんです。アスリートって、タイムリミットがある職業だと思うので、いろんな意味でも刺激がありますし」と語った。

キャリア15年超、俳優という職業に今思うこと

タイムリミットのある職業ーー俳優に関しては、自分で決められるとはいえ、求められるか否かでその活動量はかなり左右される印象だ。
そんな俳優という職業について、萩原は「今のところ、辞めたいはないです。挫折もないです。でも、辞めたいと思ったら辞めると思います、たぶん」とさっぱりと発言した。
「興味がなくなったら、しんどいと思うし、周りの人に対しても失礼になっちゃうと思うんです。数字での指標がない分、興味が尽きた瞬間にものすごく大変になっちゃう気がします。それこそ、この仕事をしていると、例えば外で何も考えずに自由に遊べないなとか思うこともあるわけです。でも、これも別にこの仕事をする上では、しょうがないこと、必要なことだなと思います。でも、もしも今の職業を辞めたいという気持ちが大きくなったら、急にそれってものすごいストレスになるんじゃないかと思うんです。そうなったら、きっと僕は自分の性格上、次に行くと思います」

ある意味ドライにも捉えられそうな発言ではあるが「周りの人に対しても失礼になっちゃう」という言葉は、萩原の仕事に対する真摯な姿勢を感じさせた。さらに萩原は、俳優の仕事の「掘る作業」に興味があると言葉を続ける。
「仕事に対しても好きなことに対しても、深く深く掘る作業が好きなんです。1度これだ、と思うと。だいぶ長いんです。むしろ、それを軸に生活をしているタイプなので、だからこそ興味のないものになった瞬間、全くなにもできなくなるんです。自分の中に入ってこなくなるというか。誰に言われるというよりかは、自分がそうしたいからこそ、今は好きなことやお芝居の仕事を軸とした生活をしているんだと思います」


さらに萩原は、お芝居の魅力をこう語る。
「お芝居の場合、永遠に掘れますから。これだけいろんな役をやっても“これは初めてだ”ってなることって、そこそこありますし、全く同じことをすることって、2度とないのが楽しい。1日現場で撮影するってなっても、毎回違うシーンを撮る、3ヶ月毎日会ってた人と次の日から全く会わなくなって、また違う人とはじめましてする、これがすごくおもしろいんだろうなと思います」

苦戦した“小西徹”という役

では、そんな萩原は『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』にどのように向き合ったのだろうか。
「原作を読む前は福徳さんが書かれたっていうので、コメディというか、テクニカルなものなのかなとは思っていました。ただ、読んで見ると、普段のコントからは想像できないくらいしっかりとした人間の物語で驚きました。ただ、それを映画としてどう表現するかということにおいては、変に気負うことはしなかったかもしれないです」
しかし「小西を演じるのは難しかった」と萩原。その理由を、次のように語ってくれた。
「小西の中にさまざまなキャラクターがある上に、撮影も順番通りにというわけではなかったので、ガタガタになっちゃうんじゃないかなって。各シーンの入り口と出口ぐらいは1本の軸を持っておかなきゃなと思いました。ただ、それがどうにもこうにも作りきれなくて、小西に対して、どれも正解な気がするし、どれも不正解な気がするという感覚を感じていました。パターンが決まってない分、何が来ても大丈夫なように間口を広げとく必要があったというか。そういう作業をして、あとは現場で全力でそれをキャッチしていくみたいな作業が必要だったんです。普段、相手の行動ありきでどう振る舞うかということをしないタイプなので、そういう意味ではとても難しかったなと思います」
確かに、小西というキャラクターは、シーンごとにキャラ変したかのように多彩な表情を持つキャラクターだ。これについては萩原も「そうですね、1つ1つ衝撃を受けて、浮かれたり、沈んだりするキャラだと思います。でも、それをキメキメでやると、ちょっともったいないのかなぁっていうのはありました。だからこそ、難しかったんです」と話してくれた。

長ゼリフのシーンに向けて、カウントダウンも

さらに映画の後半には、長ゼリフシーンもある本作。このシーンがあることを知った時、萩原は「率直にうわって思いましたよ。やばって」とイタズラそうに笑った。そして、次のように続けたのだ。
「専門職を舞台にしたドラマとなれば、長い難しいセリフをしゃべることはあるあるだと思いますけど、普通に感情的な話だったり、日常会話の延長みたいな形で、あの量はなかなかないと思います。だから、うわってなりました。だからこそ、僕、撮影の日まで、カウントダウンしていました。この作品を撮っている時、ずっとあのシーンに向かっていた感覚がありました」と語る。
しかし「すごく意識はしていた」というものの、撮影当日はいつもと変わらなかったとも話す。「僕、ロケ中もルーティーンとかないんです。なので、いつもと変わらず、頑張って起きたくらいですかね。僕にとっては、起きることがなかなか大変なので」とのこと。相変わらず、フラットな人だと思わせた瞬間だった。

しかし、そんな心持ちで挑んだ撮影シーンを完成作で観た時の感想を聞くと「自分では満足してないです」とストイックに一言。
「あのシーンに限らず、基本的に僕は客観視できないタイプなので、試写を見て“ああ、ここはこうすればよかった、ああすればよかった”って思ってしまうんです。もしも、僕が僕の演技に満足してしまったら、きっともうこの仕事を続けられない、それは飽きたときだろうなと思っています。別にこれができたら100点ですっていうのはない世界ですけど、自分で100点をつける日が来たら終わりかなって。そうも思うので、高得点を自分でつけることはないと思います」
そう萩原は言い切ったのだ。違うことは違う、思わないことは思わない。自然体でありながら、嘘がないのもまた彼の魅力の1つ。きっと萩原はこれからも自分の演技に満足することなく、1つ1つの役を深く掘り下げていくのだろう。そう思わせたインタビュー時間だった。


取材・文:於ありさ 撮影:梁瀬玉実
スタイリスト:TOKITA
ヘアメイク:Emiy(Three Gateee LLC.)
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<作品情報>
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
4月25日(金) より全国公開

原作:福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
監督・脚本:大九明子
出演:萩原利久
河合優実 伊東蒼 黒崎煌代
安齋肇 浅香航大 松本穂香/古田新太
製作:吉本興業 NTTドコモ・スタジオ&ライブ 日活 ザフール プロジェクトドーン
製作幹事:吉本興業
制作プロダクション:ザフール
配給:日活
公式サイト:
https://kyosora-movie.jp/
(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
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