舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』平岡祐太インタビュー 「生身の人間として、ハリーとして、言葉を発したい」

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観て、平岡は「これだ！」と思ったという。

平岡　細部にわたって再現されている『ハリー・ポッター』シリーズの世界観と魔法の演出に圧倒され、引きこまれました。また、映画から続いている伏線が多いのに、舞台版で初めてシリーズに触れる方にもわかるスリリングで巧妙なストーリー展開にも驚きました。これまでに観たことのない感覚で、たぶん一幕が終わった時点で、みなさん「すごい！」って思うのはないでしょうか。そして、キャラクターそれぞれの葛藤に多くの共感や感動がりあります。本当に素晴らしい舞台だと思いましたし、観終わって「ハリー・ポッターをやりたい！」と思いました。

そして平岡はハリー役のオーディションに挑戦し、晴れて新キャストに選ばれた。現在はシリーズ全般を通しての掘り下げに余念がないようだ。

平岡　小説や映画に目を通しながら、考察本も読んだり、映画のDVDやBlu-rayに特典映像として収録されているハリー役のダニエル・ラドクリフさんのインタビュー映像を見たり、作者のJ・K・ローリングさんのインタビュー記事を読んだりしています。

平岡はこうして作品に関連する知識を得て、自分の演じる役について考えることが“演じること”の魅力だと語る。

平岡　俳優をさせていただいているからこそ得られる経験や知識を積み重ねることができる。日々発見があることが、すごく楽しいんです。

今回挑むハリーについては、どのような感情を寄せているのだろう。

平岡　父親となりすごく葛藤しているところは、僕自身も子育てをしていて、その大変さは身をもってわかっています。魔法省でとても偉いポジションになっているけど、家に帰ると自分の子どもたちとわかり合えずにいる。そういう点でもハリーに共感できる部分があります。

7月からハリー役は平岡と稲垣吾郎、大貫勇輔のトリプルキャスト。果たして“平岡ハリー”はどのような色を見せてくれるのだろう。

平岡　これは僕の印象ですが、これまでハリーを演じてこられた方々、そして今回トリプルキャストをご一緒させていただくおふたりも、しっかりした個性をお持ちのみなさん。そのなかで“平岡祐太”の個性は、あまり濃くない個性をむしろ消していくことではないか――。そのうえで、劇場にいらしたお客さまに「本当にハリーがいる」と思っていただけることを目指していきたいです。作り物のハリー・ポッターに見えないように、生身の人間として、ハリーとして、ステージでちゃんと言葉を発したいと思っています。

そうした思いを現実のものとするために、これから長い挑戦が続く。

平岡　大抜擢していただいて、プレッシャーはあります。でも導かれたというか、自分は今この作品に、ハリーという役にチャレンジしなくてはいけないという思いもあります。準備、そして稽古の期間はどんな作品でも膨大な時間を削る苦しい時間で、お客さまに受け入れていただけるのか不安も抱えながら、幕が上がる時にベストな状態であるようにしなくてはいけない。自分を超えるためにがんばる期間で本当に大変ですけど、観てくださった方が「すごく良かった」と言ってくださるなら、その言葉だけが救いです。

ロングラン作品だけに、既にご覧になったことのある方も、もちろん今回初めて劇場に足を踏み入れる方もいらっしゃることだろう。いずれにしても、極上のドキドキ・ワクワクが待っていることは平岡も太鼓判を押してくれた。

平岡　まだご覧になっていない方は、とにかく一度足を運んでいただけたら今までにない魔法体験ができます。ご覧になったことのある方も、演じる人によって舞台の印象、そして感動の内容も変わることを楽しんでいただきたい。開幕したばかりの頃にご覧になった方にもまた観ていただける良いチャンスではないかと思います。

取材・文／金井まゆみ
写真提供／ホリプロ　撮影：番正しおり

＜公演情報＞
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

期間：ロングラン上演中
会場：TBS赤坂ACTシアター

チケット情報：
https://t.pia.jp/pia/events/harrypotter-stage