Sunny Girl×鉄風東京『Grasshopper vol.30』完売御礼! フルボルテージで30回目の開催を祝福
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『DaisyBar 20th Anniversary × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.30』2025年4月14日 東京・下北沢DaisyBar Photo:和花奈
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4月14日、下北沢DaisyBarにて『Grasshopper vol.30』が開催された。チケットぴあのロックを愛する有志若手社員によるライブハウス企画である同イベント。記念すべき30回目の開催となる今回は、今年20周年を迎えた下北沢DaisyBarとタッグを組んだ。出演はSunny Girlと鉄風東京。ダブルアニバーサリー公演にふさわしい注目アクトによるツーマンは、早々にソールドアウト。満員のフロアを相手に熱いライブが繰り広げられた。
先攻は東京・高田馬場発2019年結成のスリーピース、Sunny Girl。彼らのライブとは、すなわち汗臭く暑苦しいライブハウスでしか語ることのできないひとつの物語なのだろう。大森琉彦(ds/cho)による超高速ビートと小野友揮(b/cho)が繰り出す硬く鋭いトーンのベースラインによって支えられる、鉄壁のアンサンブル。その上で橘高連太郎(g/vo)は、痛みや喜び、あらゆる感情の波をもがきながら、それでも自在に泳いでみせる。ただ注釈を添えるなら、ここで繰り広げられるのは彼らが演者で我々が鑑賞者と線引きできるほど単純なショーではない。それは、さまざまな偶然と必然が重なってこの日この場所に集まった全員によって演じられる、二度と再現できないドラマなのだ。

ライブは「起」からスタート。朝日がゆっくりと昇っていくような雄大なサウンドは、その曲名通り幕開けに相応しく豪快に響く。しかし感慨にふける暇もなく、「口癖」からバンドは疾走。さらに「スーパームーン」「マリナー」「濃藍」とスピード感のある楽曲が矢継ぎ早に繰り出され、あっという間に温度は急上昇していく。橘高は曲中で「前から後ろまで、全員でライブハウスをライブハウスにするんだよ!」「こっちは俺らに任せて。そっちは任せたぜ!」と呼びかけ、フロアは拳と歌声で応える。一夜限りの、それでも確かな信頼関係が眩しい。
続くセクションでは、弾き語りでの歌い出しからセンチメンタルな空気感を漂わせる「シーン11」、ポエトリーリーディング的なボーカル表現で詞世界に奥行きを生み出す「エン」など、勢いだけではない多彩な演奏を繰り出しつつ、さらに会場の一体感を高めていく。「君でしか」演奏中の「みんな、周りのこと気にしすぎ。ライブハウスでは自分のことだけ気にしてればいいよ」という言葉に焚き付けられたオーディエンスがダイブをかます姿が印象的だった。ライブは途中に数度挟まれるMCを除いてほぼシームレスに楽曲を繋げて進行し、息つく間もなくSunny Girlという物語へと没入させられる。

ライブ終盤には、3月12日にリリースされた最新デジタルシングル「まだ書いている途中なのに」を披露。同楽曲は、配信音源が中盤で途切れており、ライブハウスでのみ完結する楽曲を聴くことができる。目線が、肌が、熱気が生で触れ合うこの空間でしか紡がれないストーリーの行く先を、誰もが固唾を呑んで見守っていた。

橘高は、「歳を重ねるごとに、不満よりも漠然とした不安の方が大きくなる。それでも不満や不安と肩を組んで、君が歩いて行けますように。月が綺麗すぎて、足元の花を踏ん付けたりしないように。届く幸せも届かない幸せも、大切にできるように。なくても生きていけるものと、君が生きていけるように」とMC。そのメッセージは楽曲と地続きのように、オーディエンスの胸に迫る。「ナイトライダー」でクライマックスに向けて再び速度を上げると、メロディと祈りの言葉が温かい「純朴」でフィニッシュ! 満足げな表情の3人に、エンドロールが重なって見えた気がした。
……と思いきや、時間が余ったとのことで急遽セットリストにはなかった「コンクルード」を追加でプレイ。ダイブとシンガロングでカオスの渦を巻き起こした。音が鳴り止むと、先ほど「俺たちばっかりありがとうって言ってるな」と語っていた橘高に対し、そこかしこから「ありがとう!」という歓声が聞こえた。

既に汗だくのオーディエンスも多数見られる会場に登場した、仙台在住の4人組・鉄風東京。一曲目に放たれたのは「TEARS」。大黒崚吾(vo/g)が感情を剥き出しにして紡ぐメロディにフロアも共鳴し、幾重にも重なり合う歌声の中でライブが始まった。2曲目の「Dazzling!!」では、大黒の「めちゃくちゃにやるから、めちゃくちゃになれ!」という言葉を合図に、前のめりなツービートが胸を昂らせた。

「東京はもう春ですね。仙台で無理やり花見をやったんですけど寒くて話にならなかったんで、今日はここでお花見のリベンジします」というMCから演奏されたのは、春の到来を告げるミディアムナンバー「スプリング」。心地良く体を揺らすオーディエンスの笑顔は、おそらく大黒にはそよ風にゆれる桜の花びらに見えていたことだろう。
素直に自己を解放するための、不器用だけど偽りのないロック。この日の彼らが奏でたのは、まさにそう形容したくなるような音楽だった。「やるなって言われた新曲を詰め込んでるんで」とイタズラっぽく口角を上げると、未発表の新曲「In YOURS」を披露。ツインペダルを駆使したイージーコア〜ポップパンク的なフレージングと英語詞が印象的な一曲で、最新の鉄風東京を感じることができた。

続く「Remember my snow?」でもどこか寒々しく切ないメロディとコードワークの間にヘビーなブレイクが挟まれているし、彼らのホームグラウンドの名を冠した「FLYING SON」は、ミッドウェストエモ的なフレーズから始まり、ブラストビートまでも飛び出すアレンジが痛快だ。多様なルーツを持つ現メンバーで、鉄風東京はどこまで進化できるのか。その実験と挑戦を、彼らはただただピュアに楽しんでいる。「一瞬、俺のギターの音が止まったように聴こえたけど、むしろ音がデカすぎてみんなの耳が飛んだだけだから」と、トラブルも笑いに変えてみせる姿が頼もしい。

「ライブハウスですべての君を肯定できるように」。
その願いはこちらも未発表の新曲「さみだれ」でエモーショナルな歌唱に昇華され、一人ひとりの魂を揺さぶった。大黒は、音楽への、ライブハウスへの、ロックシーンへの、メンバーへの赤裸々な思いを吐露し、「すべてをここに置いて帰ります。すべてをここに置いて帰ってください。俺らがロックバンド、鉄風東京!」と高らかに宣誓。「遥か鳥は大空を征く」では、この日一番の大合唱がDaisyBarの天井を遥か彼方まで押し上げていく。本編ラストは、最高速で燃え盛る「Sing Alone」。いつの間にやらスタンドから離れたマイクをオーディエンスが支え、大黒がそれに齧り付くように歌う。そんな象徴的なワンシーンを作り上げ、4人はステージを降りた。

「ワンモア!」の叫びに応え再登場すると、アンコールではもはや彼らのライブアンセムにもなっている「21km」を披露。さらにまさかのサプライズが。大黒が「俺のわがまま聞いてもらってもいいですか? 最後に一曲だけ、Sunny Girlを聴きたい!」と問いかけると、各パートがバトンタッチし、Sunny Girlが「雨と走れば、」を演奏。両バンドが入り乱れ、大黒もフロアに飛び込むなど、紛れもなく今日この瞬間にしか生まれ得ない熱狂の中でイベントの幕は下ろされたのだった。

最初から最後までフルボルテージのシンガロングが節目の開催を祝福した『Grasshopper vol.30』。既に開催が決定している『vol.31』(SAIHATE/おもかげ/プルスタンス)、『vol.32』(JIGDRESS/ペルシカリア)、そしてその先も、現場でしか体感できない熱量を届け続けてくれることだろう。
<公演情報>
『DaisyBar 20th Anniversary × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.30』
2025年4月14日 東京・下北沢DaisyBar
出演:鉄風東京 / Sunny Girl
<次回公演情報>
『Flowers Loft × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.31』
2025年5月26日(月) 東京・下北沢 Flowers Loft
開場18:45 / 開演19:15
出演:SAIHATE / おもかげ / プルスタンス
料金:
前売一般2,400円 / 学割1,900円
当日一般2,900円 / 学割2,400円
※入場時ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/t/grasshopper-vol31/
『Grasshopper vol.32 supported by チケットぴあ』
2025年6月9日(月) 東京・下北沢 CLUB Que
開場18:30 / 開演19:00
出演:JIGDRESS / ペルシカリア
料金:
前売一般3,400円 / 学割2,900円
当日一般3,900円 / 学割3,400円
※入場時ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/t/grasshopper-vol32/
『Grasshopper』公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/
★『Grasshopper』特集ページは こちら
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