小林沙羅が愛に満ちた歌曲の世界を福間洸太朗のピアノ、北村有起哉のナレーションと共に届ける
クラシック
インタビュー

©︎JUNICHIRO MATSUO
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すべて見る小林沙羅はやわらかくも凛とした存在感のある美声、詩や台詞に書かれた言葉そのものの美しさを届けてくれるソプラノ歌手。レパートリーは非常に広いが、とくに近年はドイツリートのリサイタルも多い。そんな彼女が今年開催するリサイタルは「愛を歌う」と題され、シューマンの歌曲を中心としたプログラムとなっている。
「大学院の研究でもR.シュトラウスをテーマにしていましたし、5年間留学したウィーンでもずっとドイツリートを学んでいました。私の中でとても大切なものとなっています。いまフィリアホールで3年間のリートのシリーズも行っており、モーツァルトにベートーヴェンから近現代まで幅広く網羅したプログラムを扱っています。いろいろな作曲家を取り上げることで、それぞれの関わりや時代背景も見えてきて、私自身のリートに対する知識や捉え方が深まりました。また色々な作品を取り上げていくうち、もっと一人について深く取り上げたい…という想いも生まれてきたのです。いまそれがもっとも強いのがシューマンでした」
そして実現したのが今回のリサイタルであった。小林がいまやりたいと思うことを詰め込んだものとなっており、シューマンの《ミルテの花》や《女の愛と生涯》といった連作歌曲をはじめ、クララ・シューマンの歌曲に三枝成彰の《愛の手紙~恋文》といった現代の作品も並んでいる。
「三枝さんの作品が今回のリサイタルのテーマを決めるきっかけにもなっています。最初、後半にはオペラの作品も考えたのですが、私の活動の柱の一つに新作の初演というのもあり、三枝さんにお願いをしました。今回歌わせていただく曲はもともと男声合唱のための作品をソプラノ独唱用に編曲していただいたもので、独唱版としては初演となります」
《愛の手紙》はナレーションを伴う作品。そこで選ばれたのは近年活躍の目覚ましい俳優の北村有起哉であった。
「日本舞踊の教室で知り合ったのがきっかけで、実は子供のころから仲良くしていただいている“お兄さん”的存在です。ナレーションが必要となり、一番に浮かんだのが北村さんでした」

北村は前半でもロベルトとクララ夫妻の書簡の朗読も行うという。
「せっかく後半で《愛の手紙》をやるので、前半にもその要素を入れたいと、“愛”をテーマに書簡を選んでいるところです。朗読をお聴きいただくことで、より楽曲の世界に没入していただけるようになると思います」
ピアノで小林の歌を支えるのは人気ピアニストであり、小林の高校時代の先輩でもあるという福間洸太朗。近年共演機会も多い。
「実はピアノをどなたにお願いするかが最後まで決まっていなかったのですが、昨年福間さんの20周年記念リサイタルを聴かせていただき、“お願いしたい”と強く思いました。福間さんのピアノからはたくさんの発見をいただいており、今回のプログラムもどのように二人で音楽を作り出していけるか、いまからとても楽しみです」
小林が大切にしてきたリートの世界を深く味わうことのできるリサイタルとなっており、常に進化し続ける小林の魅力はもちろん、リートそのものの感動を強く感じられることであろう。

文:長井進之介
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2556670
5月14日(水) 19:00開演
東京文化会館 小ホール
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