藤原紀香「何気ない日常こそがドラマチック」 3度目主演の舞台『サザエさん』の魅力を語る
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舞台『サザエさん』製作発表より、左から)高橋惠子、松平健、藤原紀香、葛山信吾
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すべて見る昨年、放送55周年を迎えた国民的アニメを舞台化した舞台『サザエさん』(脚本・演出:田村孝裕)が、2025年6月に東京・明治座、7月に大阪・新歌舞伎座にて上演される。2019年、2022年公演も好評を博した本作は、長谷川町子原作のアニメから10年後の磯野家を舞台に、少しずつ変化のあった一家の日常を描き、大きな話題を集めた。
今回は2019年の初演版を、約6年ぶりに再演。サザエを演じる藤原紀香をはじめ、出世して多忙になったマスオ役の葛山信吾、子供たちの心配をしているフネを演じる高橋惠子、定年退職した波平役の松平健と、豪華なメインキャストが続投し、観客に笑いと涙を届ける。そんな4人が取材に応じ、「サザエさん」に対する愛着や、3度目の舞台「サザエさん」出演への意気込みを語った。
「誰もが知る『サザエさん』の10年後を描いているんですが、フグ田家にちょっとした危機が訪れます。すれ違いながら、心を寄り添わせて、ピンチを乗り切っていくのか。何気ない日常こそがドラマチックだと気づかせてくれる作品にしたいです」
そう語る藤原は、サザエとの共通点について「たくさんドジをしても、笑いにしてごまかしてしまう(笑)。明るくてポジティブな考え方ができるところでしょうか」と、笑顔で語る。
そんな藤原の明るく前向きな姿勢は、共演陣にも伝わっているといい、葛山は「本当にエネルギッシュな方。なんで、こんなにお元気なんだろうって。僕らもそれについていけばいいし、パワーをもらえて、ありがたいです。頼りにしています」と全幅の信頼。「マスオさんも自分も、しっかりしているつもりなんですけど、全然頼りがいがなくて。そういうところは似ているかも」と語ると、すかさず、藤原は「そんなこと全然。しっかりしている」とフォローを入れ、仲睦まじい夫婦の姿を見せた。
高橋は「割烹着を着て演技するのは、たぶんこの作品くらい。今は、そういうお母さんの姿を見ることはなくなってきていますが、尊敬する気持ちも込めて、存分に楽しみたい」と声を弾ませた。
フネと同じく、古き良き時代の両親像を体現する波平役の松平は「一家の長であって、怒るときは怒ったり、いろいろ説教もしますけど、フネに助けてもらいながら、家長である自覚をもって、今回も元気に頑張りたい」と抱負を語った。
長年愛され続ける「サザエさん」だが、実際に舞台で演じながら、改めてその魅力に気づかされたとキャスト陣は口を揃える。昭和、平成、令和。時代が移り変わるなかで、「サザエさん」だからこそ観客に届けられるメッセージがあるという。
「家族のあり方、それに人との距離感も変わっている今だからこそ、心でつながる大切さを伝えられたらと思います。『サザエさん』に登場するキャラクターたちは、普段の食事だったり、ご近所さんとの会話だったり、日常を楽しむ力がある。それにみんな、自分のためではなく、誰かのために行動している。それが大きな魅力ですね」(藤原)
葛山は「人との交流を描いた、温かい作品ですからね。自分自身も皆さんとの共演を楽しみたいです」と期待を寄せ、「舞台ならではの、もう一歩人間的に踏み込んだ表現をしているのが魅力」と語る。
フレッシュな一家の子どもたちと、今年も酒井敏也が演じるタマ
今回は、サザエさん一家の子どもたちはキャストを一新。大学生になったカツオにはONE N’ONLYの草川直弥、lolの佐藤友祐のWキャスト、専門学校に通うワカメには日向坂46の平尾帆夏、中学生になったタラオにはwink first/TRAINEEの藤代翔真、松﨑光のWキャストとフレッシュな顔ぶれが揃った。
高橋は「今日ここにいる、同じメンバーで家族を演じられるのがうれしいですし、若い世代の子どもたちが、新しい風を吹かせてくれるのも楽しみですね。また、新しい『サザエさん』が作れるんじゃないかなって思います」、松平も「きっと新鮮に演じられるのでは」と、子どもたちの存在に目を細めていた。
また、大きな鈴がトレードマークのタマは2019年、2022年に引き続き、酒井敏也が演じる。その愛くるしい姿は、公演中はもちろん、稽古場でも出演者を癒す存在。藤原は「サザエさん一家と同じで、タマも年齢を重ねている。だから、走ったりしないし、屋根をのぼるのもゆ~っくりで。酒井さんご本人も高所恐怖症なので、その姿をみんなで見守っています。フネさんとのシーンもしみじみしていて、好きですね」とほほ笑む。
タマについては、葛山も「僕らの中で、タマって言ったら酒井さんが定着しちゃっていて。哀愁が漂っていて、そこが愛おしい。僕らの家族です」と愛着たっぷり。高橋は「フネは唯一、タマと会話ができるんですよ。酒井さんならではのタマちゃんで、何とも愛おしい。雰囲気がタマにぴったりなんです」と、こちらも“タマ愛”が溢れている。「よく横になって寝ているんで、かわいいですね」(松平)、「波平さんは、ときどきくすぐったりしているんです、タマをね」(高橋)と、やはり舞台『サザエさん』のマスコット的な存在のようだ。

舞台『サザエさん』を語る上で、忘れてはならないのが、東京公演の会場である明治座。「やっぱり安心感がありますね。いつも面白い作品を届けてくれる。歴史ある明治座さんで上演できるのはうれしい」と藤原。葛山も「好きな劇場」だといい、「お客様がお芝居を見るだけじゃなくて、その日1日を存分に楽しんでいらっしゃるのが伝わる」と魅力を語る。
高橋は「緞帳の厚さひとつとっても、伝統を感じますよね。『サザエさん』は日常を描いた舞台で、明治座さんだからこそ情感が伝えられる。無機質な現代風の劇場だと、そうはならないはず」と、作品との親和性に言及。これまで、明治座で数々の公演を行っていた松平が「花道もあって、使い勝手がいい劇場ですよね。客席との距離感も近いから、お客様の反応で芝居を変えることもあります」と語ると、藤原は「そうなんです。ここで笑うんだ、ここでは静かになるんだって、いろいろお客様に教えていただくこともある」と話していた。
取材・文:内田涼
<公演情報>
舞台『サザエさん』
原作:長谷川町子
脚本・演出:田村孝裕
出演:
藤原紀香、葛山信吾
草川直弥(ONE N’ ONLY/Wキャスト)、佐藤友祐(lol/Wキャスト)、平尾帆夏(日向坂46)、藤代翔真(wink first/TRAINEE/Wキャスト)、松﨑光(wink first/TRAINEE/Wキャスト)、酒井敏也
高橋惠子、松平健 ほか
【東京公演】
2025年6月5日(木)~6月17日(火)
会場:明治座
チケット一般販売:4月27日(日) 12:00~
【大阪公演】
2025年7月5日(土)~7月8日(火)
会場:新歌舞伎座
チケット一般販売:5月10日(土) 10:00~
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