Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 「SHIZUOKAせかい演劇祭2025」“心の浄化ができるような”2作で開幕

「SHIZUOKAせかい演劇祭2025」“心の浄化ができるような”2作で開幕

ステージ

ニュース

ナタリー

「〈不可能〉の限りで」より。

「SHIZUOKAせかい演劇祭2025」が4月26日に開幕した。

「SHIZUOKAせかい演劇祭」は、これまで「ふじのくに⇄せかい演劇祭」の名称でゴールデンウィークに開催されてきた演劇祭。SPACが財団設立30周年を迎える今年、「SHIZUOKAせかい演劇祭」に改称した。演劇祭の“前半”には「〈不可能〉の限りで」と「マミ・ワタと大きな瓢箪」が上演され、各作品の舞台写真とコメントが到着した。

「〈不可能〉の限りで」はポルトガル出身の劇作・演出家、俳優で、2022年よりフランス・アヴィニョン演劇祭のディレクターを務めているティアゴ・ロドリゲスの作品。赤十字国際委員会や国境なき医師団のメンバーらとの対話をもとに、紛争地帯で活動する者たちの思いを描く。開幕に際し、出演俳優のナターシャ・クチューモフは「新たなお客様を前にして演じることは私たちにとって毎回大きな感動があります。そのたびにいかにこの作品が普遍的で多くの方々に響くかということを感じます。世界各国で上演する幸運に恵まれてきましたし、日本のお客様の前で上演することも幸運で、皆さんが質の高い聞き方をしてくださっていることを感じました。訪れる国によってリアクションは違います。日本の皆さんの上演中のリアクションは控えめでしたが、ひとことでまとめると皆さんの集中力、注意の向け方が違いました。カーテンコールで集中してくださったことがとてもよくわかりました」とコメントした。

「マミ・ワタと大きな瓢箪」はカメルーン生まれ、現在はフランス・パリを拠点に活動するメルラン・ニヤカムのソロパフォーマンス作品。昨年に続いての上演となり、アフリカの神話をモチーフにした本作では、ダンスとも儀式とも言えぬ不思議な作品世界が広がった。

また「SHIZUOKAせかい演劇祭」開幕に際し、SPAC総芸術監督の宮城聰は「今年のSHIZUOKAせかい演劇祭は、ティアゴ・ロドリゲスさんの『〈不可能〉の限りで』という芝居と、メルラン・ニヤカムさんの『マミ・ワタと大きな瓢箪』というダンスの2作品で開幕しました。この2作品は本当に対照的で、この1組で心の浄化ができるような組み合わせだったと思います」と話す。続けて「『〈不可能〉の限りで』は、現実があまりに苛烈で、演技者が盛る余地が全くない言葉を、俳優が喋らなければいけない。 悲しいとか切ないとか辛いとか、今まで知っている形容詞では当てはめようがない、どう考えたらいいのか、どう受け止めたらいいのか、あるいは自分自身がこれに対して何ができるのか、さっぱりわからない。そういう言葉を、演技者も観客も同時に浴びるわけですね。そのどこに閉まったらいいのか分からない言葉と体の反応を、ドラマーが身体の事件そのもののような、体の中でそういう音がしているかのような音楽として表現している。それが『〈不可能〉の限りで』という芝居だったと思うんですよね」と述べる。また「メルラン・ニヤカムさんの、『マミ・ワタと大きな瓢箪』は近代がぶつかった壁、近代人が誰もが感じざるを得ないある種の孤独を引き受けた上で、それを超えたところに人は戻れるのではないかという『夢』を踊る作品だったと思います。 会場の野外劇場『有度』も、原生林がまだ残っている場所に人工的なコンクリートの劇場建築がドッキングしたような空間で、近代の劇場の限界に対する問いかけを持った劇場です。ニヤカムさんの踊りは、彼が抱く夢、人間というものを巨大な懐で包み込む何か大きなものが、この古代の森を借景にする舞台に立ち現れてくるような作品だったと思います」と述べた。

「マミ・ワタと大きな瓢箪」は公演終了、「〈不可能〉の限りで」は上演時間約2時間、公演は4月29日まで。「SHIZUOKAせかい演劇祭2025」は5月6日まで開催され、この後、フランスのストラスブール国立劇場芸術監督であるカロリーヌ・ギエラ・グェン作・演出「ラクリマ、涙 ~オートクチュールの燦めき~」、85歳のフラメンコダンサー・小島章司の「叫び」が上演されるほか、「ふじのくに野外芸術フェスタ」では宮城が構成・演出を手がけるSPAC「ラーマーヤナ物語」が披露される。

%play_3323_v1% %play_3326_v1%