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丸山隆平の好演が光る!『金子差入店』──拘置所で差入れるのは、モノだけではなく……【おとなの映画ガイド】

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『金子差入店』 (C)2025映画「金子差入店」製作委員会

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刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する「差入店」。その店主に起こるさまざまな出来事を描いた『金子差入店』が、5月16日(金) に全国公開される。主演は『泥棒役者』以来8年ぶりの、SUPER EIGHT 丸山隆平。監督とオリジナル脚本は、本作が長編第1作目となる古川豪。不可解な事件を巡るサスペンスフルな展開の中で、人間の複雑な心理に驚き、人情にほろりさせられる、これまでに観たことのない設定の映画だ。

『金子差入店』

大人気だったドラマ『御上先生』や映画『夏目アラタの結婚』で、ストーリーの展開上重要な舞台となったのが拘置所。アクリルの仕切り板を挟み、収容された人と面会人が対話する面会室のシーンはこれまでの裁判ものでもよくあったが、この2作品は、待合室も使われたのが珍しかった。受付の窓口があり、病院や図書館のような、点滅式の番号ボードの前でソファに座り順番を待つ場所が映しだされていた。

この映画も、面会室だけでなく待合室がひんぱんに使われていて、それが重要な役割をはたす。

場所は東京近郊だろうか。ある拘置所近くで、差入屋の「金子差入店」を営んでいるのが、主人公の金子真司(丸山隆平)。実は服役した過去を持っている。出所後、なかなか仕事が見つからないときに、伯父(寺尾聰)からこの店の手伝いを頼まれ、伯父が引退するとそのまま後を継いだ。妻の美和子(真木よう子)、服役中に生まれて10歳になる息子の和真(三浦綺羅)、そして引退した伯父と店舗兼住居で暮らしている。

差入には、厳しい審査や検閲があり、受付時間も限られているので、それを熟知し、融通のきく「差入屋」は、差入をしたい人にとって便利な存在だ。事情により面会に行けない場合も代行をしてくれる。なかには、面会室で離婚届の署名依頼、なんてことも……。あくまでも、“個人的な感情はさしはさまない”、これがこの職業の鉄則だ。

そんな仕事に携わるなかで、金子は、世間を揺るがしたふたつの大事件と関わることになる。

ひとつは、息子の幼なじみが犠牲になった無差別殺人事件。ほどなく犯人(北村匠海)は捕まったが、こともあろうに、その母親(根岸季衣)から差入代行を依頼され、彼は猟奇的な犯人と対峙することになる。

もうひとつは、拘置所の待合室で毎日顔を合わせる女子高生(川口真奈)に関連する事件。彼女は自分の母親を殺した男(岸谷五朗)に面会を求め、拒否されつづけているのだ。それでも連日やってくる姿を見て、金子はつい声をかけてしまう。

謎を帯びたこのふたつの事件に接しているうちに、平穏だった金子一家に暗雲がたちこめ……。

オリジナル脚本も担当した古川豪監督は、本作が初の長編映画。『おくりびと』で助監督を務め、葬儀屋とは別の納棺師という仕事があることに感銘を受け、世の中には知られていないけれど、絶対になくすことが出来ない職業があると思ったという。

たまたま拘置所を撮影で訪れた時に差入店のことを知り、このテーマなら、さまざまな人間模様が描けると考えた。リサーチも丹念に行い、脚本完成に11年かかったという執念の企画だ。

役者にも恵まれた。ついかっとなる性格を抑え、暗い過去を背負いながら、社会の片隅で、ささやかだが堅実に暮らす金子を、丸山隆平は人間味たっぷりに好演、見事にハマリ役となっている。北村匠海にいたっては、新境地と言える狂気の犯人役。岸谷五朗も、内に抱える孤独を目で表現する。

さまざまな母親像が描かれているのもこの映画の深いところ。男を追い求めては金の無心にやってくる身勝手な金子の母(名取裕子)をはじめ、殺人犯の母(根岸季衣)、被害者の母(村川絵梨)。なかでも真木よう子が演じる気丈な母は、家族の絆を保つ重要な役どころ。

オーディションで選ばれた新人の川口真奈、子役の三浦綺羅も出色の演技だ。川口は、ホリプロの「タレントスカウトキャラバン」準グランプリ受賞者で本作が映画デビュー。三浦は、『どうする家康』で信長の少年時代、『光る君へ』で道長の長男役と大河ドラマに2年続けて起用された注目株である。

「差入屋」をネットで検索してみた。オンライン通販もある。そのサイトをみると、まず飛び込んできたのは「大切な人が逮捕されてしまったご家族、ご友人様へ」そして大きな文字で「まずは、おちついてください」とある。そして、差入のノウハウや扱い品が詳細に書かれている。困った当事者にとってありがたい仕事だと思う。売らんがための表現は少ないが、とはいえ商売だから、「7日間着替えセット──衣類人気No.1」と売り文句が書かれていて、なるほど、と思う。

金子差入店の店頭にも、たくさんの差入可能なグッズが売られている。「ゆで玉子」だったり……。映画を観た時に、是非、眺めてみてください。ちょっと面白いです。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……店主を丸山隆平が演じる。複雑な思いを抱えた主人公を繊細かつ入魂の演技で魅せ、驚いた……」

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(C)2025映画「金子差入店」製作委員会

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