ポール・モーリア生誕100周年 世界で唯一の“公式”コンサート、『ポール・モーリア“ラヴ・サウンズ”オーケストラ』を佐々木新平が指揮
クラシック
インタビュー


佐々木新平 ★ポール・モーリア氏が当時、実際に着用していた衣装をイレーヌ・モーリア夫人より寄贈を受けて着用
イージー・リスニング界のトップに君臨したポール・モーリア。全曲オリジナルスコアによる本公演は、熱烈な日本のファンが何度も渡仏して夫人を説得し、「ポール・モーリアの音楽クオリティを再現できるなら」と賛同を得たことで実現した。指揮者には多彩な音楽シーンで活躍する実力派・佐々木新平を迎え、往年の名曲をよみがえらせる。
――佐々木さんがポール・モーリアの音楽に触れたのはいつでしたか。
佐々木 3歳くらいのときです。母が電子オルガンの先生をしていて、夕食後に映画音楽やポップスなどを弾いてくれたのですが、その中の1曲が「涙のトッカータ」でした。ずっと曲名が分からなかったのですが、今回ポール・モーリアの楽曲を改めて聴いた時に「これは母が弾いてくれた曲だ」と長年の謎が解けました。「涙のトッカータ」を聴くと、かつて住んでいた家の情景を思い出して懐かしくなります。
――1960年から1970年代に流行した「イージー・リスニング」はBGMやラジオで親しまれてきました。今もファンを捉え続ける魅力はなんでしょうか。
佐々木 僕は最近の曲は難しくて歌えないのですが、「イージー・リスニング」は覚えやすくて誰でも口ずさめる、心地いいパワーを持った音楽です。ただ、“聞きやすい”という意味で「イージー・リスニング」と名付けられたのだと思いますが、その結果、クラシックの2番煎じ的な評価をされることがあり、とても残念です。
――「イージー・リスニング」に代わる言葉があってもいいですね。
佐々木 そうなんです。コンサートのタイトルにもなっている「ラヴ・サウンズ」なんて良いのでは? 皆さんの心に残るポール・モーリアの音楽は、いつも思い出と共にありますよね。初めてのデートとか、親しい人との別れとか……。1曲1曲にそれぞれの愛着があると思います。僕としては、往年のファンはもちろん、若い世代にもポール・モーリアのサウンドに“ネオ昭和”的な新鮮さを感じてもらえるのではと期待しています。
――“ネオ昭和”ですか。いま昭和レトロがブームになっているので、若者にも受け入れられやすいかもしれません。
佐々木 ポール・モーリアはアレンジャーとしても素晴らしい人です。クラシック作品に限らず、ビートルズやディズニー音楽など様々なジャンルをアレンジして馴染みやすくしています。子どもや孫と一緒に楽しめるので、ぜひコンサートに誘って来てほしいなと思います。
――佐々木さんご自身は、本公演の指揮に抜擢されたことについてどう思われますか?
佐々木 僕はクラシックだけでなく、映画やアニメ、ゲームなどジャンルを問わず指揮しているので、そうした積み重ねを評価していただけて嬉しいです。今回、ポール・モーリアの自筆譜を見せていただいたのですが、譜面にメモがたくさん書き込んでありました。彼はアイデアがポンポン出てくる即興型のタイプだったのかなとイメージしています。僕もリハーサルではあまり決めすぎず、本番のライブ感を楽しみたいタイプなので共感できました。
――音楽性もさることながら、ポール・モーリアのスマートな佇まいも似ていますね。
佐々木 じつは、僕が公演PR用の写真で着ている白いスーツはポール・モーリアが30年前に着ていた本物なんです。他にも2、3着ありましたが全部ピッタリで驚きました。ファンの方たちには、音楽的要素だけでなく、ヴィジュアル面でもポール・モーリアの姿を思い出していただけたらと思います。
――本公演は、ポール・モーリアのサウンドを次世代につないでいく第一歩です。
佐々木 ファン待望の公演ですから、「これを聞かなきゃ帰れない!」という曲を網羅しています。30年前の日本公演に参加していた音響スタッフたちもカムバックして、最高のエンターテインメントをお届けしますので、ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文/北島あや
<公演情報>
ポール・モーリア“ラヴ・サウンズ”オーケストラ
【東京公演】
日程:2025年7月31日(木) 13:00開演・8月1日(金) 13:00開演
会場:東京国際フォーラム ホールA
【東京追加公演】
日程:2025年7月31日(木) 17:30 開演
会場:東京国際フォーラム ホールA
【大阪公演】
日程:2025年8月17日(日) 13:00
会場:フェスティバルホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/paulmauriat/