成井豊のもと、多田直人・小西詠斗らが東野圭吾の名作を立ち上げる――東野圭吾シアター舞台『祈りの幕が下りる時』稽古場レポート

東野圭吾の小説を舞台化していく「東野圭吾シアター」の第一弾として、東野作品のなかでも特に人気を誇る加賀恭一郎シリーズの10作目、『祈りの幕が下りる時』が2025年5月17日(土) より上演される。脚本・演出は、これまで多くの東野作品を舞台化してきたキャラメルボックスの成井豊。シリーズの顔となるふたり、警視庁捜査一課の刑事・松宮脩平を小西詠斗、所轄の刑事・加賀恭一郎をキャラメルボックスの多田直人が演じるほか、原田樹里、石橋徹郎、田中穂先、中嶋海央、筒井俊作、岡田さつきといったキャストが出演。その稽古場では熱気あふれるキャストたちの演技が繰り広げられていた。

学生だった加賀が大学卒業後に教師を経て警察官となり、さまざまな事件に関わっていく加賀恭一郎シリーズ。『祈りの幕が下りる時』は、加賀の母親が失踪した理由、優秀な加賀が所轄の刑事のままでいる謎が明らかになっていく、それまでのシリーズを総括する内容ともいえる作品。

この日行われていたのは、物語の中盤、加賀や松宮が調べていた事件の謎が徐々に見えてくるシーン。

まず感じるのは、加賀と松宮のふたりが時折みせる従兄弟同士ならではの気安い関係性と、捜査に打ち込む刑事として決然と職務に向き合ったときの表情と会話のコントラスト。クールな中に強い意志や思慮深さを感じさせる加賀と、そんな加賀を慕い刑事として食らいついていく松宮という、シリーズでおなじみのバディ感がしっかりと描かれていく。

さらに、物語のキーとなる演出家・角倉博美（原田樹里）の溌剌とした姿、物語が進むにつれて彼女が見せる表情の変化からも目が離せない。

そして、共に捜査にあたる刑事の坂上（田中穂先）、班長の小林（筒井俊作）、捜査を進める中で出会う人々など、キャラクター全員もイキイキと描かれている。クスッと笑えるユーモアから緊張感のある場面まで、さまざまな見どころが詰まっていた。

また、加賀や松宮が次々に事件関係者やその知人を訪ね、新たな事実や手掛かりが見つかっていく展開が舞台ならではの演出でテンポ良く進んでいく。今回取材したのは物語中盤のみの稽古ながら、個性的なキャラクターたちとキャスト一人ひとりの魅力を楽しむことができた。

通し稽古の終了後は、成井からキャスト陣に「面白かった」と称賛が。さらに、セリフのニュアンスや芝居のテンポなど、細かい部分まで調整が入っていく。良くなった部分は的確に褒めつつ、より高みを目指す成井の言葉に耳を傾けるカンパニーの様子からも本番への期待高まる取材を終えたあと、東野作品の魅力を知り尽くす成井が語った稽古の手応えや意気込みを最後にお伝えする。

＜成井豊コメント＞
今日は物語の中盤を通しましたが、非常に面白かったです。ワンシーンごとに稽古をしてきましたが、改めて通すとみんなの集中力が高まって非常にスリリングな展開になったと思います。稽古3週目でここまできているのはかなり進みが早いですし、ここから1週間以上稽古ができるので相当レベルの高い芝居を作ることができるのではないかと感じています。
僕が東野圭吾さんの作品を手がけるのは四作目ですが、ここまで正統派のミステリーは初めて。『容疑者Xの献身』は倒叙ものだし、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』はファンタジー、『仮面山荘殺人事件』は閉鎖空間。事件が起きて刑事が調べていくというオーソドックスなミステリーに今回初めて挑戦しています。
稽古初期は、予想以上に難しいと思ったんです。刑事がいろいろな人に会いに行って話を聞くだけなので、単調になってしまうんじゃないかという心配があって。でも、刑事が人に会って話を聞く繰り返しの中でいろいろな人物が出てきて、みんないろいろな人生やドラマを背負っていて、新たな事実が次々にわかっていく。原作が持っていた面白さが、稽古を通して改めて見えてきました。ここからさらに深めてお客さまにお見せしたいと思っています。

本作は2025年5月17日(土)～5月25日(日) に東京・サンシャイン劇場、2025年5月31日(土)・6月1日(日) に大阪・サンケイホールブリーゼで上演される。

取材・文／吉田沙奈
撮影／源 賀津己

＜公演情報＞
東野圭吾シアター 舞台『祈りの幕が下りる時』

【東京公演】
日程：2025年5月17日(土)〜25日(日)
会場：サンシャイン劇場

【大阪公演】
日程：2025年5月31日(土)・6月1日(日)
会場：サンケイホールブリーゼ

［原作］東野圭吾『祈りの幕が下りる時』（講談社文庫）
［脚本・演出］成井豊
［出演］小西詠斗・多田直人
原田樹里　田中穂先　筒井俊作　岡田さつき
関口秀美　中嶋海央　早海亜衣理　辻合直澄
石橋徹郎

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/inorinomaku/