トリビュートバンドからの進化 Like-an-Angelが無二のバンドになった一夜 <Like-an-Angel LIVE 2025 Angel beside yoU>ライヴレポート
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Like-an-Angel LIVE 2025 Angel beside yoU
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すべて見るL’Arc-en-Cielのベーシストtetsuyaが、ラルクのトリビュートバンドとして結成したLike-an-Angel。彼らが2025年初となるライヴを4月26日に東京EXTHEATER ROPPONGIにおいて1st <Like-an-Angel LIVE 2025 YOU GOTTA RUN>と、2nd<Like-an-Angel LIVE 2025 Angel beside yoU>2本を開催。ここではそのなかから、<Like-an-Angel LIVE 2025 Angel beside yoU>のレポートをお届けする。
間近で観られる唯一無二の演奏に酔いしれる夜がスタート

ラルクのトリビュートバンドという域を飛び越え、Like-an-Angelがついに、バンドのとしての意思を示した。その出発点となるライヴを観てしまった。
開演前、Angelつながりの曲が流れるなか、それが彼らのライヴの始まりを告げるエアロスミスの「Angel」に変わると、場内は暗転。今回のワンマンは演出もかなり力が入っていた。ステージを覆う紗幕には、建物が瓦礫のように崩壊しまくった戦場がモノクロで映し出される。そこにライフルを持ち、武装した兵士姿のhibiki(Dr)、reno(Gt) 、saki(Gt) 、jekyll(Vo)、tetsuya(Ba)が次々と登場。戦いを告げるようにLike-an-Angelのバンドロゴが赤く灯ったところで、その紗幕越しにメンバーがバラード「Fare Well」を演奏し始めるという感動的なオープニングから、今回のライヴはスタート。
間奏では早速tetsuyaが華麗なべースソロでアクセントをつけて次のrenoのギターソロへと繋いでみせる。ライヴハウスから始まって以降、日比谷公園大音楽堂公演を省けば、スタンディングではライク最大キャパとなる今回の会場。それでも、こんな間近であのtetsuyaの細かい指さばきを凝視し、音色の変化、さらにはベースを弾きながらコーラスを担う姿まで、じっくり彼のプレイを堪能できるのは、ライクのライヴの大きな魅力の1つ。間近で観れば観るほど、この人が積み上げてきた唯一無二のベーススタイルは圧倒的なものであることが伝わってくる。
このあと紗幕が上がり「SEVENTH HEAVEN」が始まると、tetsuya、reno、sakiがフロントへと飛び出してきて、オーディエンスは大歓声を上げる。メンバー全員モノトーンでコーデを統一しているのも相まって、この日の彼らは冒頭からバンド感がとても強まっているように見えた。

「Sprit dreams inside」はsakiがアコギをかき鳴らしjekyllが英語版の歌詞で歌唱! これがめちゃくちゃカッコよかった。うねりまくるベースでグルーヴを作るtetsuyaが、サビではそのjekyllの上をハモりにいくという卓越したコーラスワークで、この曲に爆発的なスケール感を与えていった。
「ハロー、六本木。元気?」とjekyllが日本語からMCを始め(その後は英語)ファンを喜ばせたあとは、英詞多めの「LOST HEAVEN」へ。renoのギターフレーズにsakiのアコギのストロークが重なり、なんともいえない深い哀愁を帯びたムードが会場じゅうに広がっていくと、ライクが大人びた異国のバンドに見えてくるから不思議だ。そこに「夏の憂鬱[time to say good-bye]」をつなげると、夏の匂いと哀愁感が倍増。夏の終わりの切なさをjekyllが最後、1人お立ち台に上がり、(日本語がしゃべれないとは思えないほど)滑らかな日本語でしっとりと歌い上げ、オーディエンスの胸を締め付けていく。
「みんなと一緒に作り上げていく空間っていいよね。いつも以上の力が出る」

続けて、sakiのアコギのストロークにrenoの伸びやかなギターフレーズが重なり、曲が「さようなら」だと分かると、フロアからため息が漏れ、声にならない悲鳴が上がる。ラルクの「flower」のC/W曲で、本家のライヴでほとんどお目にかからない名曲にスポットを当ててくれるところもライクの素晴らしいところ。シンプルに響き合うバンドアンサンブル。そのなかで、ファルセットを使ったjekyllの歌唱が悲壮感を高めていく。そうして、最後の“さようなら”のフレーズを、フロアにそっとマイクを向け、オーディエスに委ねていったところはjekyllオリジナル。ライク加入までライヴの経験数が圧倒的に少なかった彼が、フロントマンとしてどんどん自立していっていることを肌で感じたパフォーマンスだった。
「ハーイ、ニホンンノミナサン!」とjekyllのMCを受けて、片言の日本語でしゃべりだしたtetsuya。スタジオリハーサルの際、打ち合わせでtetsuyaだけが抜ける時間があり、そのとき、メンバーたちが楽しそうに演奏している音が聞こえてきて「僕がいないところでもみんなが楽しそうにしているのを感じて、すごくいいなって思った。僕は僕抜きで皆が楽しそうにしているのを見ているのが楽しい」と伝えるtetsuyaからは、幸せそうな笑みがこぼれる。
メンバーからは、このときバンド内でパートチェンジを試していて、そこではjekyllがドラムを担当していたことをrenoが明かすと「えー! 俺は? ヴォーカル」と意気揚々とtetsuyaが立候補するも、すでにヴォーカルはhibikiが担当していたため「tetsuyaさんはギターで」とrenoに諭される。こうして、メンバーも会場も和んだところで「みんなと一緒に作り上げていく空間っていいよね。いつも以上の力が出る」と嬉しそうに語るtetsuyaが話を締めくり、ライヴは再開した。

「The Rain Leaves a Scar」は、ねっとりと絡みつくような歌唱で、jekyllがオーディエンスを翻弄していく。昨年行なったL’Arclassicツアーから、バンドサウンドはさらにロック色を倍増させたものへとパワーアップ。この曲ではsakiが左足をモニターにかけ、ソロパートで観客を魅了。後半に行くに従って、hibikiのドラムの熱量と手数が増えていったところで、曲はこれまた本体ではなかなか聴けないインディーズ時代の「Entichers」へと展開。ここでは舞台を囲むように6本のトーチが燃え上がり、ダークでエスニックなムードを演出していった。その憂いを吹き飛ばすように赤いレーザービームが放たれるなか、プレイが始まった「XXX-English version」では、歌、演奏を含め、張詰めたような独特の緊張感とグルーヴ感をステージから発し、息の合ったプレイでフロアを圧倒してみせた。
このあと、ムードは一転。「renoでーす」、「hibikiでーす」、「二人合わせてリメンバーミーです」といってrenoとhibikiが舞台の真ん中に立ち、2人の漫才がスタート。昨年のライク初のツアーで爆誕したこのユニット、「来年はネタを」といっていたが、それを本当に仕込んでくるとは(笑)。そうして、ネタを初披露している間、ステージ上で彼らを見守るメンバーたちがなんとも微笑ましい。リメンバーミーが漫談でほどよく会場をわかせたあとは、このとき舞台後方に映し出された2人のイラストとロゴマークをhibikiが作成したことが伝えられ、tetsuyaからは「音楽も笑いも間が大事」と核心を突くアドバイスが送られた。そして、この漫談のネタの落ちとなったフレーズが“大仏ポーズ”だったのだが、それを受けて次に「DIVE TO BLUE」が始まったところは大爆笑!
ここはきっと、ラルクが東京ドームで開催した<hyde BIRTHDAY CELEBRATION-hyde誕生祭->で、hydeがラルクの新曲「YOU GATTA RUN」を演奏する前のMCで“湯が足らん”と話した流れにかぶせてきたのだろう(微笑)。「DIVE TO BLUE」が始まったとたんに、場内の温度は一気に上がり、サビではhibiki以外のメンバーが4つのお立ち台にそれぞれ立ち、フロアとコンタクト。オーディエンスはこの曲には欠かせないクラップをバチッと決めて、演奏を盛り上げていく。
そうして、テンションが高まってきたところで「GOOD LUCK MY WAY」 をドロップ。ライクの初回公演から、意図せずして“ライクらしさ”がスパークしてしまったこの曲。この日はjekyllがドラム台に上がり、落ちサビをhibikiに歌わせるという初パフォーマンスまで飛び出し、場内は大盛り上がり。そこから、昨年行なったツアーで、「GOOD LUCK~」同じように、バンド独自のパッションが自然発生してしまった「いばらの涙」の流れは、カッコいいとしかいいようがないぐらいにエモーショナルで、ステージ上もフロアも大興奮。
そうしてこの日は、このあとラルクにとってとても大切なナンバーである「虹」を本編最後にアクトした彼ら。しかも、演奏中には羽ではなかったももの、紙吹雪を降らせるという演出まで取り入れて、この曲をパフォーマンス。きっとこれには意味がある。なにか、バンドとして相当大きな決意を持って、本編ラストに「虹」をこのような演出を施して演奏したに違いない。そう思いながら、アンコールを待っていたら……。
予期しなかった贈り物……ライクの完全オリジナル楽曲を披露

この日のライヴのハイライトがやってきた。ステージに再登場したメンバーは、グッズのTシャツではなく、全員ビシッと衣装に着替えてスタンバイ。そうして始まった曲が、ラルクのカヴァーではなかったことに観客は驚愕。息を殺してじっとステージを見つめているフロアも、ステージ上で演奏に集中するメンバーも、張詰めた緊張感に包まれている。曲全体を包む重厚感、ツインギターによるソロ、演奏が終わった後、その緊張感を解きほぐすようにtetsuyaが「ヒューヒュー」と陽気な声を上げる。「なーんだこれ! ライクのオリジナル曲」と伝えると、フロアから「ウォー!」という歓喜の声が沸き上がる。ビシッと決めた衣装はMusic Clipと同じ衣装だったのだ。
そうしてその後のメンバーたちのトークで、この曲はjekyll作詞作曲のバンド初となるオリジナル曲で、「Angel beside yoU」というタイトルが付いていること。曲が誕生したきっかけは、ライヴの打ち上げでtetsuyaが先に帰宅した後、jekyllが作ってきた曲のデモを残ったメンバーに聴かせたことが始まりで、昨年tetsuyaの誕生日プレゼントを4人で考えていたとき、このデモの存在を思い出し、自分たちだけで曲を完成させて誕生日にサプライズでtetsuyaにこの楽曲をプレゼントした。「僕がいないところで曲が出来てるって、ヒューヒューだよ」と嬉しそうに伝えるtetsuya。
彼がラルクの<hyde誕生祭>でhydeにいままでももらったプレゼントで嬉しかったものはと質問されたとき「あるけど、ここではいわれへん。この世にないもの」といっていたのは、この「Angel beside yoU」のことだったに違いない。「今日、自分たちの持ち歌を初めて披露して、すごい新鮮な気持ち」と演奏後の手応えを伝えたtetsuyaは、本来はこうして音源をリリースする前にライヴで新曲を披露していくのが普通なのだと付け加えたあと「じゃあここからはリラックスして楽しもうか! まだ元気あんの? いけんの? いくでー!」とフロアを煽ったあと「賽は投げられた」を勢いよくドロップすると、ファンは大喜び。

そのあと、jekyllがセンターのお立ち台に腰掛け、歌い出したのは「未来世界」だった。この曲ではtetsuyaがベースをエレクトリックアップライトベースに持ち替え、柔らかな音色でソロを届けていく姿があまりにもセクシーで、観客たちはうっとり。そうして、最後はrenoとsakiがギターフレーズを掛け合い、天井からミラーボールの光が降り注ぐなかで「MY HEART DRAWS A DREAM」をアクト。jekyllが歌いながらステージからフロアへ降りてくる場面もあり、いままで観たことがないようなライクの新しい扉を開けるパフォーマンスで最後までファンを驚かせて、ライヴは終了した。
「幸せ? 幸せ?」と観客に何度も確認したあと、5人で挨拶をして、「まったねー」といいながら最後にステージを後にしたtetsuya。そのの足取りは、とても軽やかだった。
明かされる「Angel beside yoU」の意味

ステージには“THANX”の文字が映し出されたあと、画面にはtetsuyaが「えーっ! なになに?」といって2024年10月3日にこの曲を実際に贈られたときの映像が映し出される。そうして、このあと「Angel beside yoU」のミュージックビデオが流れだすと、ここでもファンは絶叫しながら驚愕。MVが終わると、“Debut Single「Angel beside yoU」2025.6.4 OUT“の文字が浮かび上がり、フロアは狂喜乱舞。
さらに続けて、本日のライヴの模様がU-NEXTで6月7日19時から独占配信されること、8月22日から24日までインドネシアのジャカルタで開催されるフェス<LaLaLa Festival 2025>の22日にLike-an-Angelが出演すること、10月3日には東京恵比寿The Garden Hallで<THANK YOU>を開催することを次々と発表していった彼ら。
この発表を聞いて、やっと分かった。本公演のタイトル「Angel beside yoU」がLike-an-Angelのデビューシングルを示していたからこそ、この日の追加公演のタイトルはL’Arc-en-Cielの最新シングル名「YOU GOTTA RUN」になり、アンコール1曲目で「YOU GOTTA RUN」を演奏したのだ。
このようにL’Arc-en-CielとLike-an-Angelは、パラレルワールドのような関係性でこれまで存在していた訳だが、その別世界からtetsuyaの意思ではないところで、バンドそのものが自ら意思を持ち始め、トリビュートの枠を越えてきたことに1番ワクワクしたのはtetsuyaだったのではないだろうか。バンドの想定外の急激な成長ぶり、それを「Angel beside yoU」という楽曲にしたメンバーたちへの最大のプレゼント返しとしてミュージックビデオを作り、CDデビューすることを決めたtetsuya。
ここから、Like-an-Angelの新たなステージでの戦いがいよいよ始まっていく。
取材・文/東條祥恵
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