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新国立劇場バレエ団のホープ 花形悠月、仲村啓が語る「Young NBJ GALA 2025」でのチャレンジとは?

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©Yumiko Inoue

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新国立劇場バレエ団が2025年7月12日(土)・13日(日)に新国立劇場 中劇場で上演する「Young NBJ GALA 2025」は、バレエ団の未来を担う若手ダンサーたちが活躍する舞台。古典のパ・ド・ドゥの名作や現代振付家の作品に挑戦するフレッシュな才能、その溌剌とした姿を見たいと、多くのファンが期待を寄せている。2回目の開催となる今回は、3つの古典のパ・ド・ドゥと、日本を代表する振付家の一人、中村恩恵振付のソロ、元新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田圭吾による作品に、若き舞踊手たちが挑戦。そのうちの一組、『白鳥の湖』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥに挑戦する花形悠月、仲村啓に、いまの心境やリハーサルでの取り組みについて話を聞いた。

二人で初めて挑む古典のグラン・パ・ド・ドゥ

花形は2018年よりプロのダンサーとして活動、2022年に新国立劇場バレエ団に入団し、現在3年目。一方の仲村は、新国立劇場バレエ研修所を経て2019年に入団した。二人とも2024/2025シーズンにファースト・アーティストに昇格し、ますます活躍の幅を広げている。

花形 4月の『ジゼル』ではペザント パ・ド・ドゥを踊りました。古典作品の公演でパ・ド・ドゥを踊るのはこれが初めてだったので、大きな経験でした。

仲村 年末年始の『くるみ割り人形』でスペインの踊りを踊りましたが、3年目の挑戦でしたから、最初の頃に比べたらずっと緊張せずに踊れるようになりました。自分の見せたい踊りというものをしっかり考えながら取り組むことができたのではないかと思っています。前の踊りをしっかりと反省して「次はもう失敗しないぞ」と取り組んでいたことが活かせたので、ステップアップできたのではないかなと感じます。

花形 私も啓さんと一緒にスペインを踊りました! とはいっても、スペインは女性二人と男性一人の踊り。男女が組む場面もありますが、古典のグラン・パ・ド・ドゥを二人で踊るのは今度のガラが初めてです。でも、啓さんは気心が知れているし、年齢も同じなので話しやすく、「ちょっと練習しよう!」と気軽に声をかけられるので、話し合いながら楽しく取り組んでいます。

花形悠月
仲村啓

──踊るのは『白鳥の湖』第3幕の、いわゆる「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」。ガラ公演の定番ともいえる人気の演目です。

仲村 『ジゼル』のパ・ド・ドゥは経験していたけれど、『白鳥の湖』は古典バレエのなかでもまた違った特別な作品ですし、リハーサル中からすでに緊張していて、毎回ドキドキしながら稽古しているんです(笑)。

花形 とくに新国立劇場のレパートリーであるピーター・ライト版はトリッキーな振付が多いので、これはたくさん練習を重ねる必要があるなと身構えました。

──どんなところがトリッキーなのでしょうか。

仲村 たとえば──オディールが床に座って、王子が引き上げて飛ばせてキャッチとか……。

花形 そう! 全体的に難しいけれど華がある踊りなんですよね。それを自分たちでどこまで消化してお見せすることができるのか、です。

仲村 オディールと王子になりきるには、やはりいろいろ研究しないといけないなと感じます。

オディール、王子で、二人の世界をお見せしたい

二人が挑戦する『白鳥の湖』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥは、ジークフリード王子の花嫁選びの舞踏会で繰り広げられる、オディールとジークフリード王子の華やかな踊りだ。ゆったりとした曲調で女性と男性が組んで踊るアダージオから、男女それぞれのヴァリエーション、二人で踊るクライマックスのコーダを通して、魔術師ロットバルトの娘として登場したオディールが、王子をじわじわと虜にするさまが踊りで表現される。

──物語の中の、その部分だけを抜き出して演じる難しさはありますか。

花形 オディールがロットバルトと話し合って王子を呼ぶ、という場面があるのですが、今回ロットバルトはいませんから、「王子の様子を窺って呼ぶ」ことになります。が、王子を見るにしても、どう見るかで全然違ってくる。そんな細かい点も、一つひとつ、どう演じたいかという意思がないと踊れません。目線の使い方については、吉田(都)監督はもちろん、バレエ団の先輩の(米沢)唯さん、(福岡)雄大さんにもアドバイスをいただいているのですが、目は表情の中でもその人物の意思が見えるパーツだと思うので、気をつけていきたいところです。

仲村 これはどういう表情でどういう心情なのかということを、細かく教えていただいています。それを自分で噛み砕いて理解して、自分なりの王子として演じたい。パ・ド・ドゥという限られた時間の中でも、オディールに誘惑され、魅了された感じを出すことができたらと思っています。

花形 そこなのですが、実は私、まだ迷っているんです。“大人の余裕”で誘惑してかわす、というオディールが素敵だなと思ってはいるのですが、それが自分に合っているのかどうか……。いまの自分には、“王子を騙すことを楽しんでいるオディール”のほうがいいのかもしれない。まだどのような方向性で役作りしていくか決められずにいますが、リハーサルを重ねながら考えていきたいです。

仲村 僕は英国ロイヤルバレエで活躍されていたフェデリコ・ボネッリさんの王子が好きなのですが、彼は立っているだけでオーラが出ていて、威厳もあって、細かい立ち居振る舞いから全部が王子さま。“ザ・ノーブル”です。僕も目指す王子像、そのイメージは持っているのですが、王子になりきる以前にまだ振りに関して余裕がないという状況です。「これはこうしないと」という課題がたくさんあるので、練習を重ねて王子に近づけるようにしなければ。でもやっぱりグラン・パ・ド・ドゥって難しい……。やることが格段に多くて、長さもありますから。

©Yumiko Inoue

──吉田監督からはどのようなアドバイスが?

花形 冒頭の音楽で登場してきてすぐに、「ちょっとストップ」。(笑)

仲村 走っている時の顔の付け方まで。本当に細かく、一つひとつ教えてくださっています。

花形 「こうして」、ではなく、「こうしたほうが、こういう意味になる」と、その動きの意味、どうしてそういう動きになるのかを説明してくださるので、納得しながらリハーサルを進めていくことができています。

仲村 パートナリングについてはテクニカル面をしっかり教えてもらっています。男性ダンサーは自分を見せるというより女性を美しく見せるという役割があるので、悠月ちゃんの邪魔をしないように、できるだけ綺麗に見せられるように、と考えながら取り組んでいます。

花形 二人の世界をお見せすることができたら! あの中劇場の素舞台で、パ・ド・ドゥをお見せすることはとてもチャレンジングなことです。勉強になる経験を積むことは本当に大切ですが、学ぶだけでなく、皆さまにどう観ていただけるか、そこで何を感じていただけるか、というところまでもっていきたいです。

仲村 僕ももう1段階、ステップアップできるように頑張りたいですし、お客さまに楽しんでいただける舞台にしたいですね。

花形 この公演ではクラシックだけでなく、2つの現代作品も上演します。中村恩恵さんが振付けられた『O Solitude』はとても綺麗なソロですし、圭吾さん振付の『The Theory of Reality』は、まさに“圭吾さん節”の作品。

仲村 “詰め合わせ”の魅力です。

花形 私も「黒鳥」と圭吾さんの作品、両方とも楽しんで取り組んでいます!

©Yumiko Inoue

──この舞台を経験された後のお二人の、これからの活躍にも注目です。

仲村 何にでもなれるダンサー、配された役を自分なりに表現できるダンサーでありたいです。こどものためのバレエ劇場『人魚姫』(貝川鐵夫振付、2024年初演)では深海の女王という役を踊らせてもらいました。女装してポワントも履きました(笑)! 初めての経験でしたから新鮮でしたし、違う人になる感じが本当に楽しかったです。「Young NBJ GALA」の前、6月の『不思議の国のアリス』で演じる公爵夫人も楽しみにしているんです。

花形 楽しい役は私もぜひ挑戦したいので羨ましいです! 私にコメディエンヌの素質があるかどうかはわからないけれど(笑)、どんな役でも演じられるようになりたくて。「この人はこういう路線」と縛られることなく、「いま踊っていたのって、実はあのダンサーだった!?」と思っていただけるようになるのが理想です。

取材・文:加藤智子


<公演情報>
新国立劇場ダンス 新国立劇場バレエ団 「Young NBJ GALA 2025」

【パ・ド・ドゥ集】
『海賊』より
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリーゴ
出演:堀之内咲希 森本晃介

『ラ・シルフィード』より
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル
出演:東 真帆 李 明賢

『白鳥の湖』第3幕より
振付:マリウス・プティパ / レフ・イワーノフ / ピーター・ライト
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:花形悠月 仲村 啓

【O Solitude】
振付:中村恩恵
音楽:ヘンリー・パーセル
衣裳:山田いずみ
照明:足立 恒
出演:中島瑞生(7/12昼、13) 大木満里奈(7/12夜)

【The Theory of Reality】
振付:福田圭吾
音楽:トラヴィス・レイク
衣裳:幾左田千佳
照明:鈴木武人
出演:
大木満里奈 渡邊拓朗(7/12昼、13)
吉田明花 森本亮介(7/12夜)

渡邊峻郁(7/12昼、13)
米沢 唯(7/12夜) 

ほか新国立劇場バレエ団

2025年7月12日(土) ~7月13日(日)
会場:東京・新国立劇場 中劇場

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2411085

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/young-nbj-gala/

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