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『トレース~科捜研の男~』錦戸亮が見せた折れない信念 最終回で明らかになった事件の真相とは

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リアルサウンド

 真野礼二(錦戸亮)の家族が殺された「武蔵野一家殺人事件」を巡る真実が明らかになる『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)最終回。一家を殺した犯人は、真野に協力していた早川尚文(萩原聖人)、そして事件の首謀者は警視庁刑事部長の壇浩輝(千原ジュニア)だった。

参考:『トレース』最終回

 その全ての根源は学生時代、壇が真野の兄・義一(倉悠貴)に抱いた「笑顔を踏みにじってやりたい。苦痛にゆがむ顔が見てみたい」という衝動。警視総監の父を持つ壇はその権力を利用し、自販機泥棒をしていた新妻大介、佐保優作を脅し義一をいじめさせ、真野の姉・仁美(夏子)と不倫関係にあり妊娠させた早川に一家惨殺を持ちかけた。

 25年後、事件からただ一人生き残った真野の前に壇は現れた。それは再びあの時の衝動を味わうため。早川を使い真野を少しずつ事件の真相に近づけさせた壇。義一と初めて会い心を突き動かされた長野県上田市にある映画館で、壇は真野に事件の真相を伝え、姉・仁美が壇に早川へのいじめを頼んだ映像を見せる。

 現実を受け止めきれず哀しみに打ちひしがれる真野に対し、その表情を見ることこそが目的だった壇は真野の顔をじっと見つめ不敵な笑みを浮かべる。これまで壇は物語の中にほとんど出てきてこなかったが、その狂気的な人格、常軌を逸した千原ジュニアの演技を見て、あえてベールに包んでいたのだと察しがついた。この「武蔵野一家殺人事件」の真相に覚えるどうしようもない“不快感”は、権力を持ってしまった壇の異常な好奇心によるものだということ。『トレース』では、目を背けたくなるような悲しく、残忍な事件が描かれてきたが、そのほとんどは憎悪による殺人だった。ある種、これまでのエピソードが前振りだったかのように、「武蔵野一家殺人事件」の異常性を際立たせている。「お前、何言ってんだ」という真野の反応は、至極真っ当だ。

 最終回において、真相を知った真野が復讐に走ってしまうのかも、注目すべき点だった。隠れていた早川は壇を刺し殺し、自らナイフで命を絶とうとする。真野にとって早川は姉を妊娠させ一家を惨殺した犯人。しかし、真野は早川を助けてしまう。

 これまでの物語で真野は、沢口ノンナ(新木優子)や虎丸良平(船越英一郎)とともに遺族に真実を伝える役割を果たしてきた。時に、事件には受け止められないような真実も秘められている。しかし、遺族がそこから前を向き、暗い海の底から光を見られるかは、自分自身にかかっている。真野も同じだ。自身に眠る憎悪が打ち勝ち、壇と早川を見殺しにした場合、それは二度と帰ってこれない復讐の連鎖に足を踏み入れてしまうことになる。涙を流し壇と対峙する真野の瞳には、哀しみの奥に折れない信念が垣間見えた。

 「俺は前に進みたい。そう思ったんです」。そう言って真野は必死に力になってくれた虎丸と握手を交わす。真野に好意を寄せ“信じてくれる人間”として虎丸が彼のそばに寄せた沢口は、事件後科捜研に姿を見せない真野を信じ、いつものように彼を迎える。真野が沢口を見つめる視線からは、虎丸の「彼女を信じてくれる人間に」という思いは伝わっているようだ。

 『トレース~科捜研の男~』は、古賀慶の『トレース~科捜研法医研究員の追想~』を原作としており、現在も『月刊コミックゼノン』で連載中。以前、古賀は原作とドラマは異なるラストになることをツイートしており、ドラマは意識不明で昏睡状態の壇が目を覚ましラストを迎える。そのたった一つ残された痕跡は、未来に繋がる手がかりであるように思えてならない。 (文=渡辺彰浩)