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『はじこい』深田恭子は“ファンタジー”を体現する稀有な存在 横浜流星との恋を応援したくなる理由

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リアルサウンド

 深田恭子主演のドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)が3月19日、ついに最終回を迎える。

参考:深田恭子が明かす、『初めて恋をした日に読む話』男性陣3人の魅力 “こじらせ女子役”への心境も

 いとこで幼なじみのエリート商社マン・八雲雅志(永山絢斗)、大切な教え子である高校3年生・由利匡平(横浜流星)、そして高校の同級生だった教師・山下一真(中村倫也)。タイプのまったく異なる3人の男性の間で揺れ動いていたヒロインの塾講師・春見順子(深田恭子)が織りなす恋愛模様が、回を追うごとに盛り上がっていた本作。

 しかし、第9話では、なんと順子が東大合格を目指す匡平の受験会場に向かう途中でバイク事故に遭い、病院に搬送されてしまうというショッキングな展開で幕を閉じた。幸い大事には至らないようだが、彼女に対するそれぞれの気持ちに変化が生じることは間違いない。これまで抱いてきた想いをさらに強めるのか、このまま自分の想いをぶつけて良いか自問自答するのか、一度は身を引いたものの新たに想いを燃やすのか……。

 何より順子自身はどのような選択をするのか、非常に興味深い。明確な答えがでるかどうかは最後まで見ないとわからないが、『グッドワイフ』(TBS系)、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)、『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)と弁護士ドラマが3本も揃い、“お仕事ドラマ”が多い今クールにおいて、『はじこい』は貴重な恋愛ドラマとして存在感を放っていたことは確かだろう。

 改めて思うが、深田恭子は不思議な女優である。

 激しく自分を主張するわけでもなく、かといって作品の中に埋もれてしまうわけでもない。『はじこい』は原作が少女マンガということもあって、基本的にはファンタジーであり、良い意味で「え? そんなこと起こっちゃうんですか!?」という設定や展開が目白押しだ。しかしながら、彼女にはそんなファンタジーをドラマとして成立させる不思議な魅力を持っている。

 昨年秋クールのドラマ『中学聖日記』(TBS系)で、有村架純演じる女教師と岡田健史演じる高校生との恋愛に賛否両論が巻き起こったことは記憶に新しい。しかし、同じようなシチュエーションであるはずの『はじこい』には、そんな声はほとんど聞かれなかった。

 また、ちょうど1年前、主演を務めた『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)では、不妊治療に悩みながらもパートナーと前を向いて歩いていくヒロイン・五十嵐奈々を見事に演じ切った。体外受精に成功するも残念ながら流産してしまい、泣きながらマタニティマークを引きちぎるシーンに胸を締めつけられた人も多かったはずだ。

 未成年との恋愛や不妊治療という非常にデリケートなテーマを、能天気な絵空事にもお涙頂戴的な感動話にも陥らせることなく視聴者にしっかりと届けられる。これはまさに深田恭子という女優のなせるワザではないだろうか。

 恋愛に限らず、勉強でも、仕事でも、結婚生活でも、どんな世界でも現実は“痛み”と“苦味”を伴う。しかし、ドラマだからといって必ずしもすべてをリアルに伝える必要があるわけではない。

 慌ただしい日常を離れ、一時の安らぎを求めてドラマを見る人に、現実をこれでもかと見せつけられても疲れるし辛いだけだ。むしろ“ファンタジー”だからこそ心癒され、励まされることもある。

 いくつものフィルターを通じ、見る側にさまざまなメッセージを受け取ってもらうこともドラマの役割のひとつ。それぞれがそれぞれの視点で何かを受け取り、想像することが、ドラマを一つの「作品」に育て上げる大切な要素でもあるのだ。

 深田恭子はテレビドラマにおける“ファンタジー”を体現できる貴重な存在として、これからも活躍し続けることだろう。(文=中村裕一)