北川拓実「自信を持って面白いと言える」 ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』が開幕
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(撮影/吉田沙奈)
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とある架空の国を舞台に、国民が選挙に無関心だったために極端な政党が政権をとってしまいチョコレートが禁止される……という物語を通して、生活から「自由」や「楽しみ」が奪われたらどうなるかを問いかけるアレックス・シアラーの人気小説『チョコレート・アンダーグラウンド』。
演出を務める石丸さち子がミュージカル化を願っていた作品に、脚本・作詞の高橋亜子、音楽のオレノグラフィティが加わって世界初のオリジナルミュージカルを作り上げる。
主演を北川拓実が務め、東島京、木村来士、土居裕子、岡田浩暉、平野綾らがメインキャラクターを担い、浦島りんこ、陰山泰、まりゑといった実力派キャストが40もの役を演じ分ける注目作品が開幕。開幕直前の会見と続けて行われたゲネプロの模様をお届けする。
直前会見レポート
――初日を前にした今の気持ちを教えてください。
北川 ついこの間、稽古が始まったばかりという感覚で、あっという間にゲネプロまできました。もっと稽古したいと日々感じながら、本当に頑張ってきました。僕としてはもう一つ自分の殻を破り、男らしさやかっこよさを見せたいと思っているので、ぜひそこに注目していただきたいです。
東島 約1ヶ月の稽古で石丸さんやキャストのみなさんと積み上げてきたものを、世界初演としてお客様にお届けすることには、修学旅行の前日のようなそわそわ感があります。でも、自分自身も拓実も、(ほかキャストを振り返って)そしてみなさんも、すごく鮮やかに変化してきていますので自信はあります。
木村 僕自身、ミュージカルへの出演はまだ2回目。演出の石丸さん、素晴らしいキャストのみなさんとご一緒させていただける喜びと、世界初演ミュージカルのプレッシャー、ワクワクがシャッフルされた気持ちです。でも、ファミリーのように仲のいいカンパニーで、ステージにもその雰囲気は出ると思うので、ぜひ楽しんでください。
平野 日比谷フェスティバルで初めて楽曲を披露してから、毎日コツコツ稽古を積み重ねてきました。毎日変化や発見があり、いい意味で影響を与え合うカンパニーの一員になれて本当に楽しかったです。本番が始まったらあっという間に千秋楽になってしまうと思いますが、最後まで進化を続けられるように頑張っていきたいです。
岡田 1ヶ月ほど稽古を重ねてきたので、思い切ってのびのびと本作の世界にダイブしたいと思っています。
土居 子どもたちが無邪気に立ち上がり、何かを変えようとするエネルギーを私たち大人が受け止めて拡大させていく物語です。まっすぐ前を向いたお話を楽しんでいただけたら嬉しいです。
石丸 とにかく原作が大好きです。そして盟友の高橋亜子さんが描いてくださった胸を打つ歌詞、オレノグラフィティさんのオリジナリティ溢れる音楽、それを形にしてくれる素敵な俳優たち。すごく仲のいいチームだし、お互いに高め合ってどんどん芝居が良くなっています。彼らの活躍をとにかく楽しみにしていただきたいです。
演じる役との共通点、注目ポイントを聞かれると、北川が「スマッジャーはグイグイいくタイプなので苦戦しました。僕はなかなか積極的に行けなくて。石丸さんから特別レッスンを受けて作り上げました」と語る。東島の「役者の北川拓実を見られると思います」という言葉に「普段はアイドルをやらせてもらっています(笑)。役者の僕も見てほしいです」と応え、親友役らしい意気のあったコンビネーションを見せていた。
東島は「ハントリーは繊細な男の子。誰かのためという思いが原動力になっています。どこからともなく元気が湧き出てくるエネルギー、素直な気持ちが大事だし、それが大人の皆さんの心を動かすのかなと。内から湧き出る少年性に注目していただけたら嬉しいです」、木村は「原作を読んだ時、フランキーは強くて芯のある男らしい感じなのかなとイメージしていました。でも、石丸さんが自分の魅力を活かしていいと言ってくださいました。10代だから出せる少年らしさを活かしてお芝居しています!」明かした。
最後に北川が「世界初のミュージカルに対する責任もありますが、稽古をやってきて、面白いものができた自信があります。見てくださった方の心に炎を灯したいという思いで駆け抜けていきますので、劇場に足を運んでいただけると嬉しいです!」と締め括った。

ゲネプロレポート
物語は、国民が政治に無関心な隙に「健全健康党」が政権を取ってしまい、すべての甘味が法律で禁止されてしまう……というところからスタートする。学生のお弁当にフルーツが入っているかどうかの検閲、チョコレートの密売摘発など、文字にするとコミカルだが、自由がどんどん奪われていく様子とそれに順応していく人々がリアルでゾッとしてしまう。

「チョコレート」という言葉を口にするだけで逮捕されるようになった世界で立ち上がったのが、スマッジャー(北川拓実)とハントリー(東島京)。自分たちがチョコレートを食べたいという素直で素朴な願いから始まり、未来の子どもたちの自由のために行動を始める二人の勇気が多くの人を動かしていく。熱意と勢いで周りを巻き込んでいくスマッジャー、冷静で穏やかなハントリーのコンビ感も可愛らしい。

また、二人と同じテンションで協力してくれるお菓子屋のバビおばさん(土居裕子)や頼り甲斐のある古本屋のブレイズ(岡田浩暉)、チョコレートが禁止されたことで仕事を無くしたモファット(平野綾)といった大人たちが見せる勇気や優しさも大きな魅力だ。



徐々に健全健康党の弾圧が激しくなる中、スマッジャーたちを監視する同級生・フランキー(木村来士)が抱える事情も見えてきて、いろいろな視点から政治や自由について考えることができる。さらに、浦嶋りんこ、まりゑ、小松季輝、佐藤匠、中川賢、陰山泰は、スマッジャーやハントリーの家族、クラスメイト、街の人々や健全健康党の党員などを次々に演じる。スピード感ある展開の中で、シーンごとにまったく毛色の違うキャラクターを演じ分け、多彩な楽曲を歌いこなす彼らからも目が離せない。


そして、オレノグラフィティによる楽曲がキャラクターの心情やシーンの切り替えを鮮やかに彩っている。ポップで楽しいナンバーや、セッションのようなかっこいいナンバー、歌詞が染み込んでくるようなナンバーまで、どれも耳に残るものばかりだ。

好きなものにまっすぐな少年たちと、彼らを支える大人たちの姿から勇気や希望をもらえるミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』。魅力的な音楽と個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語を楽しみ、見終わったらチョコレートを食べながら自分にできることを考えたくなるような作品を、ぜひ劇場で見届けてほしい。


本作は6月5日(木)~15日(日) までよみうり大手町ホール、6月21日(土) に大阪・森ノ宮ピロティホール、6月28日(土)・29日(日) に富山県民会館ホールで上演される。
取材・文・撮影/吉田沙奈
<公演情報>
ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』
【東京公演】
日程:2025年6月5日(木)~15日(日)
会場:よみうり大手町ホール
【大阪公演】
日程:2025年6月21日(土)
会場:森ノ宮ピロティホール
【富山公演】
日程:2025年6月28日(土)・29日(日)
会場:富山県民会館ホール
[原作]アレックス・シアラー
[翻訳]金原瑞人(求龍堂刊)
[脚本・作詞]高橋亜子
[音楽]オレノグラフィティ
[演出]石丸さち子
[振付]前田清実
[出演]北川拓実 東島京 木村来士
平野綾 岡田浩暉 土居裕子/
浦嶋りんこ まりゑ 小松季輝 佐藤匠 中川賢 陰山泰
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/chocoun/
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