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怖いのか面白いのか、どっちだ?山崎静代らが立ち上げる“家族の物語”「ザ・ヒューマンズ」開幕

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2024/2025シーズン シリーズ「光景-ここから先へと-」Vol.2「ザ・ヒューマンズ─人間たち」初日前会見の様子。左から細川岳、青山美郷、山崎静代、平田満、増子倭文江、稲川実代子、桑原裕子。

2024/2025シーズン シリーズ「光景-ここから先へと-」Vol.2「ザ・ヒューマンズ─人間たち」が、明日6月12日に東京・新国立劇場 小劇場で開幕。これに先駆けて本日11日に、同劇場でフォトコールと初日前会見が行われた。

スティーヴン・キャラム「ザ・ヒューマンズ─人間たち」は、2016年のトニー賞演劇部門で作品賞を受賞した戯曲。日本初演となる今回は、翻訳を広田敦郎、演出を桑原裕子が手がける。感謝祭の日、次女ブリジッド(青山美郷)とその恋人リチャード(細川岳)が暮らすマンハッタンのアパートに、父エリック(平田満)と母ディアドラ(増子倭文江)、長女エイミー(山崎静代)、祖母モモ(稲川実代子)が集まった。やがて始まった一同の食事会は、次第に陰鬱な雰囲気に。その時、部屋の照明が消え、不気味な出来事が次々起こり......。

フォトコールでは本編の冒頭約25分間が上演された。舞台には古びた2階建てのアパートの一室が再現されている。上下階共に、中央にはキャストが出入りする玄関ドアがあり、上階と下階は螺旋階段でつながっている。また下階の下手側には、食事が準備されたダイニングテーブルがセットされた。

キャストはそれぞれ膨大な量のセリフを操り、仲の良い家族の雰囲気をステージ上に作り出す。一家はにぎやかに笑ったり、歌いながら乾杯したりして、舞台は一見すると楽しげな雰囲気に包まれる。しかしアパートの階上からは時折、大きな物音が。また階下で和やかにエリックとリチャードが話している一方、上階でディアドラが1人不安げに立ち尽くすなど、各部屋でさまざまなシーンが同時展開。さらに登場人物の会話からは、9・11の同時多発テロのあとという時代背景や、エイミーがパートナーと別れて間もないことなども明かされ、これから不穏な出来事が起きることを予想させた。

初日前会見には演出の桑原と、出演者たちが出席。本作の台本には「ここで前の人のセリフに被せて」という細かいタイミングの指定や、「食事をしながらセリフを言う」など、出演者にとって難しい指示が多数あるという。会見では登壇者が稽古の苦労話を交えつつ、意気込みを述べた。平田は「目も耳も衰えてきて、登場人物の声を聞き分けてきっかけのセリフを把握するのが大変でした」と語り、「どのように観てもらえるか想像がつきませんが、幕が開いてのお楽しみですね」とコメント。増子は「セリフの応酬が激しく、奮闘の日々でした。お客様の前に立てる日が来たんだなと……」としみじみした表情を浮かべ、記者たちを笑わせた。

「セリフを重ねるタイミングが難しかった」と言う山崎は、ボクシングに取り組んだ経験を振り返りながら「私の性格上フェイントができず、いつも『ストレートを打ちますよ!』という戦略がバレバレだった(笑)。それと似ていて、悲しい場面で素直に悲しい顔をしがちだったので、あえて逆の表現をするのが大変でした」と明かしつつ、「遠いニューヨークのお話かと思いきや、身近な家族の物語でした。『人間ってどこに住んでいても同じだな』と感じてもらいたい」と言葉に力を込めた。

青山は「皆さんに支えられ、手をつなぎ合って“光”に向かってあがいた」と稽古を回顧し、「食事をしながら人のセリフを聞き、かつ役としてストレスを高めていくシーンが難しかった」とコメント。細川は「僕が演じるリチャードがズレたことを言って、“滑った”空気になる。台本上それで良いのですが、『何か間違えたかな』と毎回冷や汗をかいています」と苦笑いを浮かべた。

稲川は、自身が演じるモモが認知症で車いす生活をしていることに触れて「皆さんと比べたら、私のセリフ量は10分の1以下。でもセリフの流れを全部覚えて、必要なところできっかけのセリフを入れる必要があるので、集中力を保つのが大変」と言い、「明日からまた気合を入れてがんばりましょう」と共演者に呼びかけた。

キャストの発言を受け、桑原は「思いを抱えた人たちが食事しながら話すという、日常でよくある出来事を演じようとするとこんなに大変なのかと」と語り、「いわゆるコメディとは違い、観客を安心させない作品だと思います。(登場人物が)笑っているのに不安になる場面がたくさんあるし、お客様も『怖いのか面白いのかどっちだ?』と迷いながら観ることになりそう。その迷いこそが醍醐味ですし、みんなの不安が劇場に充満していくのが見どころですね」と笑顔で話した。

上演時間は約2時間。東京公演は6月29日まで行われ、7月5・6日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、19日に大阪の茨木市文化・子育て複合施設おにクル ゴウダホールでも上演される。

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