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松本幸四郎が作る「鬼平犯科帳」は「二代目吉右衛門を思い出す、“突っ込んだ歌舞伎”」に

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松本幸四郎

7月5日より東京・歌舞伎座で松竹創業百三十周年「七月大歌舞伎」が上演される。公演に先駆け、夜の部「鬼平犯科帳」で長谷川平蔵役を勤める松本幸四郎の取材会が、昨日6月18日に東京都内で行われた。

「鬼平犯科帳」は、“鬼平”こと長谷川平蔵が活躍する、池波正太郎の時代小説シリーズ。「鬼平犯科帳」では、“鬼の平蔵”と恐れられ、放火や強盗、殺人などの凶悪な盗賊一味を取り締まる鬼平の活躍が描かれる。1969年には池波の強い希望で、初世松本白鸚(当時は八代目松本幸四郎)主演で映像化され、その後、1989年から2016年まで二世中村吉右衛門が鬼平を演じた。昨年には池波の生誕100年を記念し、新シリーズとして当代幸四郎主演による「鬼平犯科帳」のテレビドラマ版と映画版が放送・上映された。

7月の「鬼平犯科帳」で構成・演出も担当する幸四郎は、本公演が“二代目中村吉右衛門に捧ぐ”と銘打たれていることについて、「おじが28年間映像でやってきた『鬼平犯科帳』は、(二代目吉右衛門にとって)特別な作品で、特別な覚悟があった作品。歌舞伎でもやった祖父・幸四郎、そしておじ・吉右衛門があったうえでの今回、自分自身は1つでも多く作品を作ることを目標に、挑んでいる最中でございます。“吉右衛門に捧ぐ”と掲げることにはプレッシャーもありますが、それをエネルギーに変えて、歌舞伎版鬼平で二代目吉右衛門を思い出していただけるようなものを、今の鬼平である僕が作りたい」と現在の心境を語った。

また、今回は、若かりし頃の長谷川銕三郎時代、そして平蔵時代の2本柱で構成され、シリーズで初めて銕三郎がクロースアップされる。幸四郎いわく「平蔵にとって大きな存在」だという密偵おまさ(坂東新悟、少女のおまさを市川ぼたん)と銕三郎の歴史や再会が厚く描かれ、「平蔵としては珍しい感情的な立廻り」があることが明かされた。池波から「鬼平犯科帳を“世話物”として描きたかった」という思いを聞いていた幸四郎は、「(歌舞伎版では)純世話物になるかなと思っていたのですが、実際にやり始めたら真逆のもの、新作歌舞伎を作るなら“突っ込んだ歌舞伎”を作ろうと心が変わりました。作中の有名な登場人物たちの個性を生かすためにテンポ感を大切に作りたい」と構想を述べる。さらに、「歌舞伎には定義がないと思っています。観たことない方でもイメージできるのが歌舞伎の不思議なところ。平蔵が見得を切るとか、花道や廻り舞台などの舞台機構に“ああ、歌舞伎だ”と思ってもらえる要素がある。それらを生かしつつ、善も悪も、まずは正面から相対するという平蔵の人間ドラマを深く描き、セリフも含めて音楽に乗せた演劇というものを作っていきたい。それが歌舞伎だ、歌舞伎じゃないというところも存分に楽しんでいただければ(笑)」と笑みをこぼした。

本公演では、白鸚が長谷川宣雄役、染五郎が銕三郎役を勤め、昨年9月に上演された「秀山祭九月大歌舞伎」以来の親子三代共演となる。幸四郎は、「お頭を継いだ平蔵と宣雄の関係性が、実際の親子がやってきたものを次につなげるということと、舞台上で重なるのではないか。『鬼平犯科帳』の銕三郎、平蔵、宣雄の言葉が、染五郎、幸四郎、白鸚の心が乗っかった言葉になる。親子関係を意識しないことで、芝居として成立すればするほど、本当の親子を強く感じていただけるのでは」と期待をあおった。また、本作での市川團十郎との共演を喜ぶ幸四郎は、普賢の獅子蔵が團十郎のために作った「悪人の役」であること、少女のおまさ役にぼたんの名を挙げたのが、染五郎であったことを明かし、「少女時代のおまさは、小刀のようなシャープな女性。彼女の大きな声を聞いていただきたいですし、彼女にとっても発散した空間になればと思っています」と続けた。

最後に、幸四郎が、「映像の『鬼平犯科帳』も、とにかく1作1作が勝負だと思って作っています。回を重ねるごとに、この作品次第で次ができるかどうかが決まるという気持ちでやっています。歌舞伎版の『鬼平犯科帳』も同様にシリーズ化できればとは思いますが、そう考えてしまうと出し切ることができない気がしますので、すべてを詰め込んで歌舞伎版の決定版が作れるように取り組んでいきたい」と意気込みを語った。

「七月大歌舞伎」夜の部にはそのほか、市川中車、坂東巳之助、市川門之助、市川高麗蔵、中村又五郎、中村雀右衛門が出演者に名を連ねる。公演は7月5日から26日まで。なお、6月21日には東京・雷5656会館 ときわホールにて「鬼平犯科帳」音楽朗読劇が幸四郎の出演で開催されるほか、30日には時代劇専門チャンネル presents ラジオドラマ「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」がニッポン放送にて放送される。さらに公演初日の7月5日にはドラマシリーズ「鬼平犯科帳 暗剣白梅香」が時代劇専門チャンネルにてスタートする。

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※初出時、人名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。