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日本・スペインを舞台にした「ユリシーズ」予告、諏訪敦彦・五十嵐耕平らのコメントも

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「ユリシーズ」場面写真

宇和川輝が長編初監督を務めた日本・スペイン合作映画「ユリシーズ」の予告編がYouTubeで解禁。諏訪敦彦をはじめとする各界の著名人によるコメントも到着した。

3部構成の「ユリシーズ」は、異なる土地や言語、思い出をさまよう追憶と放浪の映画。第1部ではスペインのマドリードで父親の帰りを待つロシア人の母子、第2部ではバスク地方サン・セバスチャンで知り合う日本人男性と若い女性、第3部では岡山・真庭市を舞台に亡き夫のお盆を迎える女性とその孫の姿が描かれる。キャストにはアレフティーナ・ティクホノーヴァ、ディミトリ・ティクホノーヴ、エナイツ・スライカ、石井泉、原和子、宇和川が名を連ねた。

このたび公開された予告編について、本作のプロデューサーと撮影を兼任したikoi filmsの関野佳介は「配給・宣伝の過程で、本編の制作に直接携わっていない方々とも関係の輪が広がり、そこで出会う新たなことばや解釈から作り手側が影響を受け、予告編などさらなる制作物を形作っていく。映画がこうした広がりを生む場所になっていることは、ikoi filmsとして目指したいひとつの姿であり、この点においても『ユリシーズ』は大切な1作目になりました」と語っている。

本編をひと足先に鑑賞した諏訪は「『ユリシーズ』は掬い取ろうとすれば壊れてしまう儚い世界の破片を拾い集め、小さな日常の時間の隙間に千年の普遍的な物語を紡ぎだそうとする驚くべき旅である」とつづり、「SUPER HAPPY FOREVER」などで知られる映画監督の五十嵐耕平は「僕たちが帰る場所はいったいどこなんだろう? 考えれば考えるほどそんな場所どこにもない感じがするけど、でも例えば『ユリシーズ』の、道端に腰掛けて風に吹かれたビニールのゴミを二人で見るときのささやかさの中にある気がする。他愛もなく心が通じ合ってしまうような時間に」と伝えた。そのほかフランス文学者の野崎歓、作家の五所純子、映画監督の山崎樹一郎、太田達成によるコメントも下部に掲載している。

「ユリシーズ」は7月19日より東京・ポレポレ東中野、8月23日から大阪のシネ・ヌーヴォで公開後、全国で順次上映される。

※山崎樹一郎の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

関野佳介(「ユリシーズ」プロデューサー・撮影)コメント

予告編制作にあたって

予告編では本編に登場する3つの異なる場所を行き来したり、飛び越えたりするような編集をしたいと考えていました。そのために「ユリシーズ」が全体として何を語るのか改めて探っていたところ、小川公代さんのコメントがヒントになりました。配給・宣伝の過程で、本編の制作に直接携わっていない方々とも関係の輪が広がり、そこで出会う新たなことばや解釈から作り手側が影響を受け、予告編などさらなる制作物を形作っていく。映画がこうした広がりを生む場所になっていることは、ikoi filmsとして目指したいひとつの姿であり、この点においても「ユリシーズ」は大切な1作目になりました。

野崎歓(フランス文学者)コメント

上映時間が73分とは到底信じられない。父なるものの不在と引き換えに、
画面は静謐なうつくしさを呼吸し続ける。なんという不思議な旅の始まりだろう。

諏訪敦彦(映画監督)コメント

父は宝物を探しに旅に出たという。「いつ帰ってくるの? もう千年も過ぎたよ」と息子は問う。その声に耳を澄ます。「ユリシーズ」は掬い取ろうとすれば壊れてしまう儚い世界の破片を拾い集め、小さな日常の時間の隙間に千年の普遍的な物語を紡ぎだそうとする驚くべき旅である。

五所純子(作家 / 文筆家)コメント

旅がある。
英雄の特権だった、市民的な責務だった、民族的な使命だった、旅をやわらかに踏みこえていく、旅。
粛々とこなされる日常が、寄るべない移動が、国境を越え、言語を超え、旅の密度につかれた現代人に、旅の魂を再配置するのかもしれない。

山崎樹一郎(映画監督)コメント

世界の三つの場所にいる旅人たちのそれぞれのからだが、それぞれの「フィールド=日常」を書きなおしていく。巻き込まれながら、美しさを知りたい眼を持ちながら、自分もいるその世界から、書きなおす。今まで政治や歴史が書いたかたまりを溶かして、それを根っこで吸収し、枝葉に変えゆくような、そんな「ユリシーズ」が次なる新たな映画群のはじまりの一つに思えて仕方ない。

五十嵐耕平(映画監督)コメント

僕たちが帰る場所はいったいどこなんだろう? 考えれば考えるほどそんな場所どこにもない感じがするけど、でも例えば「ユリシーズ」の、道端に腰掛けて風に吹かれたビニールのゴミを二人で見るときのささやかさの中にある気がする。他愛もなく心が通じ合ってしまうような時間に。

太田達成(映画監督)コメント

フロントガラスの雨を眺めながら、訪れたこともない異国の雨を思い出す。
不確かな記憶が緩やかに接続される時間が心地よく、永遠に続いて欲しいと思っていた。

©ikoi films 2024