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歌舞伎「火の鳥」坂東玉三郎が市川染五郎・市川團子への信頼語る「真っすぐに生きているお二人」

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「火の鳥」合同取材会より、左から市川團子、市川染五郎、坂東玉三郎、原純。(撮影:岡本隆史)

松竹創業百三十周年「八月納涼歌舞伎」第二部で上演される新作歌舞伎「火の鳥」の合同取材会が、本日7月7日に東京都内で行われ、坂東玉三郎、市川染五郎、市川團子、原純が出席した。

新作歌舞伎「火の鳥」では、寿命が来ると自ら炎の中に入って再生する火の鳥の伝説をもとに、竹柴潤一が脚本、原が演出・美術原案を担当。玉三郎が演出を手がけ、火の鳥を演じるほか、松本幸四郎が大王(おおきみ)、染五郎と團子がヤマヒコ、ウミヒコ兄弟を勤める。

玉三郎は以前から火の鳥を題材にした歌舞伎を構想しており、数年前から脚本を用意していたが、染五郎、團子の参加が決まったことで、それを改訂しながら創作を進めているという。玉三郎は「鶴屋南北の時代はたくさんの歌舞伎が生まれ、淘汰されて人気作が残った。現代もそうなってほしいと思う」と新作歌舞伎の創作への思いを語る。また本作で、交響曲やピアノ曲などを手がけてきた吉松隆の音楽が用いられることを挙げて「歌舞伎座に新しい風が吹けば良いなと。音楽や美術を含め、お客様に良い空間を楽しんでもらえたら」と述べた。

染五郎と團子については「非常に真っすぐに生きているお二人だと思う」と玉三郎。玉三郎は「やはり舞台に取り組むうえでは、素直さ、謙虚さが大切です。芸術家は虚勢を張ることも必要だけど、一生進歩し続けられるかどうかは芯の真っすぐさで決まる。お二人とも素直な姿勢を持っていると思います」と2人に厚い信頼を寄せる。さらに玉三郎は「私もこの年齢なので、あと5年経ったら感覚が鈍ってしまうかもしれない。そうならないうちに、若い彼らのために良い作品を作り、良い環境を体験させたいという強い思いがあります」と言葉に力を込め、「私は火の鳥みたいに再生はできませんしね。生まれ変わったとしても過去の記憶はなくなるから、俳優をやらないかもしれないし……」と冗談を飛ばし、会見場を笑いで包んだ。

染五郎と團子が演じるヤマヒコとウミヒコは、火の鳥を探して旅に出る。ヤマヒコ役の染五郎は「兄弟は単に火の鳥を捕まえるだけでなく、生きるうえで大きな意味を火の鳥から授かるお役です」と話し、「(上演中の『七月大歌舞伎』の)『蝶の道行』では團子さんと恋人役。兄弟役はまた距離感が違いますが、今月の歌舞伎座で生まれたこの熱量を保って本作に臨みたい」と意気込む。これまでにも指導を受けてきた玉三郎については「お芝居をするうえで大切なことをたくさん学びました。一番は声の出し方。人体の断面図を見ながら『ここを空気が通るからこういう声が出る』と教えていただいた。自分でも発声が変わったと感じていて、とてもありがたいです」と語った。

ウミヒコ役の團子は、兄弟の関係性について「王位継承者のヤマヒコとそうでないウミヒコの間には、少ししこりがある。その関係が、火の鳥から受ける学びにつながると思います」と話す。作品の見どころについては「台本を読むと、歌舞伎に近いセリフと現代的なセリフが混在しているので、そのハーモニーが楽しみですし、僕にとってもがんばりどころ」と團子。玉三郎の指導については「セリフの語尾を大切に、歌舞伎座の奥まで感情を乗せて一言一句を届ける方法を学びました。また『天守物語』の際に教えていただいた台本を読み解く方法は、自分にとって大きな財産になっております」と述べた。

團子は、染五郎とは「昔から、良い意味で言いたいことを伝え合ってきた」と言い、「兄弟の物語が大切な要素になるので、染五郎さんと深く“セッション”したい」と意気込みを語る。「普段2人で話すときは、どちらが会話をリードするのか」と記者に尋ねられると、團子は「ずっと僕が話しかけている。でも『今(染五郎は)ウケているな』とか、心の中でわかります(笑)」と回答。これを聞いていた染五郎も「もちろん、お芝居については2人で意見をぶつけ合っていますよ!」と続き、記者たちを和ませた。

これまでオペラの演出を多く手がけてきた原は「オペラと歌舞伎は同じくらい歴史がありますし、歌と踊りを交えて進行するお芝居という点でも近い。今回特にこだわりたいのは、音楽に乗せてドラマを進行させ、深めていくということです。私は舞台美術の監修も担当しますが、重厚で耽美な舞台ができそうです」とコメント。また原は玉三郎を「私にとって“天上界”の人。ご本人のお隣で話すのも恥ずかしいですが、美を追求する姿勢が想像以上に素晴らしかった」とたたえ、「『オンディーヌ』や『天守物語』でも描かれているように、この作品は人間ではない存在の目線で人間を語るもの。この作品を通じて精神の美しさを描けたら」と口にした。

原の言葉を受け、玉三郎は「私は“耽美”とか“美を追求している”とかよく言われますが、あまり考えたことがなかった(笑)。心地よいかどうかを基準に物事を選ぶだけなのですが、皆さんはそう感じてくださるのですね。今回は耽美な染五郎さん、團子さんとご一緒できますし、素晴らしい方々と歌舞伎の中で巡り会えて幸せです」と微笑んだ。

松竹創業百三十周年「八月納涼歌舞伎」の公演は8月3日から26日まで、東京・歌舞伎座で行われる。

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