新作ミュージカル『ディズニー くまのプーさん』日本版クリエイティブスタッフが語る“ライブ”で躍動するくまのプーさんの魅力
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すべて見る新作ミュージカル『ディズニー くまのプーさん』の2025年ジャパンツアーが5月よりスタートし、名古屋、大阪、福岡を経て、この8~9月に東京、埼玉、横浜にやってくる。A.A.ミルンの原作とディズニーの長編アニメーションからインスピレーションを得た作品として、昨年日本で初演され大きな話題を呼んだ本作。その魅力について、初演時から本作に向き合ってきた日本版演出補を務める岸本功喜と翻訳の小島良太に話を聞いた。
――昨年の初演時の手応え、今回の再演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
小島 多くのお客様から、好意的な反響をいただきました。人形劇とも異なるパペットを使った演劇のビジュアルから「お子さまたち向け」の世界を想像される方も多いかもしれないと考えていましたが、親御さん世代の方々からも、作品の世界観を心ゆくまで楽しんでいただけたという感想をたくさんお寄せいただきました。今年もみなさんの声にお応えできるツアーを実施することができて本当によかったです。
岸本 「これはどこに行っても愛される作品」という確信を初演で得ることができたのはすごく大きかったです。ファミリー向けの作品に足を運んでいただけるのは週末や休日に限られてしまう方も多い中、またチャンスをいただけて嬉しいです。

――子どもから大人まで愛されている「くまのプーさん」をミュージカルという形でお届けすることの意義、舞台ならではの魅力についてどのように感じていますか?
岸本 “生で見る”ことは、やはりすごく貴重な経験だと思っています。映像の素晴らしさ、たとえば繰り返し好きなシーンを楽しめることも魅力だと思いますが、登場人物たちの生き生きとした姿を楽しめるなどステージでしかお届けできない魅力は、一度体験していただければ決して忘れられません。ディズニー作品の完成された世界観は、ミュージカルの領域においても素晴らしい力を発揮してくれるんです。
小島 くまのプーさんのサイズ感がオフィシャルのライフサイズ、つまり実寸大であることも、大きなアピールポイントです。もちろん、プーさんはアニメーションで見てもかわいいんですけど、リアルな3Dであのフォルム、あの姿で歩いてしゃべっているのを目の当たりにできることは、とても新鮮な経験になると思います。

――初めて見た舞台がこの新作ミュージカル『くまのプーさん』、という子どもたちも多いかと思います。
小島 そういう声はこれまでもたくさんいただいています。未就学のお子さまを連れて見に行ける舞台、ミュージカルはやはり限られていますから。一度本作の舞台を観たお子さまが「ティガーの歌を家でずっと歌っている」というお話を聞くと、やはりお子さんにも素直に喜んでいただける作品になっていると感じます。
岸本 お子さまたちだけでなく、何度も通ってくださる大人の方も数多くいらっしゃいます。本作は決して子どもだけに向けた作品ではなく、実は、大人になって観たほうが「刺さる」メッセージがたくさんあると思います。子供時代にはシンプルなメッセージとして受け止めていたものが、大人になって「こういう奥行きがあるんだ!」と受け止めていただけるようなメッセージもあるんです。

――パペットを活き活きと見せるために演出面で工夫されている点を教えてください。
岸本 まず、パペットを持たずに操演を担当する人間だけでリアルにお芝居を構築しました。表面的になぞるのではなく、まずはしっかりとお芝居をつくるところから始めて、次にパペットを通してしか世界を見ない――つまり(人間が)自分の目線ではなく、すべてパペットを通して動くという稽古を重ねました。“パペット自身が生きる”段階まで到達するのはなかなか難しいんですが、完全にパペットに魂を宿すという作業を丁寧にやっていきました。初演をご覧になった方から「途中から人が消えた」「実際にプーさんがしゃべっている!」という声を多くいただいていて、それは何よりも嬉しい言葉でした。
――小島さんが本作を日本語に翻訳する上で気をつけた部分、大切にされたことはどのようなことでしょうか?
小島 もともとアニメーションで翻訳されていて、日本でも多くの方がご覧になっているので、そこと世界観が一致していることは重要でした。キャストそれぞれが一人称で自分のことを何と言うか? 二人称も「キミ」というのか「お前さん」なのか? といった細部まで作品の世界観に共通する部分は大切にしてきました。とはいえ例えばティガーの場合、シチュエーションによって同じ相手にもいろんな呼び方をするんです(笑)。ラビットを「とっつぁん」と呼ぶ時もあれば、「あんた」と言うこともある。そういった部分は状況に合わせて訳していきました。
――最後にまだこの作品を観ていない方、観ようか迷っている方に向けて、こんなところを楽しんでほしいというメッセージをお願いします。
小島 公演の写真をご覧になって「後ろでパペットを動かしている人がいて、楽しめるのかな?」と思う方もいらっしゃると思いますが、本当に不思議と気にならず没入できる。ご覧になったみなさんから同様の感想を多くいただいています。実際に観ていただかないと、なかなかおわかりいただけないとは思いますが(苦笑)、この世界観、くまのプーさんと仲間たちが100エーカーの森で遊んでいるところを目の前のステージで見られるというのは本当に面白い体験になると思います。
岸本 やはり僕らが大事にしているのは“生”のエネルギーなんです。いま、これだけたくさんのエンターテイメントが手軽に楽しめる中、劇場においでいただければくまのプーさんや仲間たちが生でエネルギーを発して、会話のキャッチボールをしている。これって本当にすごいことだと思いませんか?(笑) みなさんが普段からぬいぐるみややグッズで触れている大好きなプーさんや仲間たちが、ものすごくエネルギッシュに動き回っている――その瞬間にぜひ立ち会い、体感していただきたいです。

<岸本功喜プロフィール>
脚本家・演出家・振付家。
ミュージカル・コンサートなど、幅広いジャンルにおいて脚本、演出、振付を担当。
本作では日本版演出補を務める。
<小島良太プロフィール>
翻訳家、作編曲家。
新作ミュージカルの作編曲や海外ミュージカルの日本語版翻訳・訳詞を担当。
本作では翻訳・訳詞を務める。
取材・文/黒豆直樹
写真/昨年度舞台写真(撮影:鈴木健太)
<公演情報>
新作ミュージカル『ディズニー くまのプーさん』
【東京公演】
日程:2025年8月30日(土)・31日(日)
会場:きゅりあん 品川区立総合区民会館(8F 大ホール)
【埼玉公演】
日程:9月13日(土)・14日(日)
会場:RaiBoC Hall(市民会館おおみや)大ホール
【横浜公演】
日程:9月20日(土)・21日(日)
会場:横浜市市民文化会館 関内ホール
チケット情報
https://w.pia.jp/t/musical-pooh/
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