第36回高松宮殿下記念世界文化賞、演劇・映像部門にアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
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アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル Anne Teresa De Keersmaeker © Anne Van Aerschot Courtesy of Rosas
第36回高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者が、本日7月15日に発表され、同日昼に東京都内で受賞者発表記者会見が行われた。
高松宮殿下記念世界文化賞は、世界の優れた芸術家に贈られる賞。第36回の受賞者には、絵画部門にピーター・ドイグ、彫刻部門にパフォーマンスアートのマリーナ・アブラモヴィッチ、建築部門にエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ、音楽部門にピアニストのアンドラーシュ・シフ、演劇・映像部門にローザスの芸術監督アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが選ばれた。さらに、第28回若手芸術家奨励制度の対象団体として、イギリス・ロンドンを拠点に青少年に演劇のトレーニングや上演機会を提供しているナショナル・ユース・シアターが選出された。
演劇・映像部門を受賞したドゥ・ケースマイケルは、モーリス・ベジャールが創設した舞台芸術学校ムドラでバレエを学び、1983年にダンスカンパニー・ローザスを旗揚げ。日常的な動作を振付の起点とし、それを極限まで抽象化するスタイルで、音楽と身体の関係性を再構築する作風を確立した。ローザスの創設メンバーに池田扶美代がいることから、日本とも縁が深く、2004年には細川俊夫のオペラ「班女 Hanjo」を演出。来日公演も数多く行っている。なお、ダンサーが高松宮殿下記念世界文化賞で演劇・映像部門を受賞するのは、2017年のミハイル・バリシニコフ以来となる。
演劇・映像部門の選考委員を務めた演劇評論家の松岡和子は、会見で、ドゥ・ケースマイケルの業績を説明。ドゥ・ケースマイケルが23歳のときに発表した「ローザス・ダンス・ローザス」の動きをまねた動画がYouTubeなどで投稿されていることについて言及し、「42年前の作品が、今の若い人や世界中の人たちの心を動かしているという事実が、彼女の力の1つの証」だと述べた。また、ドゥ・ケースマイケルが作品を映像化する際には、舞台の様子を収録するのではなく、映像作品として場所や人を変え、振付だけが継承されるという独特な創作をしていること、音楽との緊密な関係が作品の特徴であることを説明し、「65歳になっても、彼女の創作意欲とその力は衰えるどころかますます盛んで、今年のアヴィニョン演劇祭でも作品を上演されたと聞きました。常に挑戦する姿勢が導く先鋭的で予測不能な作風は、いつも観客をドキドキワクワクさせてくれます。先ほども申しました通り、映像化する際は映像としてどう見えるかを考え、独立して評価される作品を作っている。まさに、今回の演劇・映像部門を受賞されるに相応しい方だと思います」と話した。
また、若手芸術家奨励制度の対象となったナショナル・ユース・シアターは、1956年にロンドンの学校教師たちによって設立された劇団。多様な学生たちが集まって、共に演劇を学ぶことで、社会を先導していく人材の育成を目指している。障がい者支援の施設、環境保護団体の施設とも協力して活動するほか、設立70周年を迎える来年は、世界各地の若者中心の芸術団体と連携し、デジタル技術を生かしたイベントを企画している。
10月22日に東京・明治記念館にて授賞式が行われる。