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『はじこい』深田恭子が手に入れた“人生の自由” 横浜流星との出会いを通して学んだこと

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リアルサウンド

 数ある選択肢の中で、絶対に違うと判断できるものを外していったあげく、残り2つで悩んでしまう。センター試験、とりわけ、国語の時間によくあることだ。どちらももっともらしく見えてしまい、考えれば考えるほど分からなくなってくる。

 “選択するってことは、他を捨てるってこと”。確かにその通りなのだけれど、これがなかなか難しい。『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で描かれたテーマの一つは“選択”であった。私たちは人生の中で意を決して足を一歩前に踏み出さなくてはならないときがある。順子(深田恭子)も、雅志(永山絢斗)も、一真(中村倫也)も、そして匡平(横浜流星)も、みんなそれぞれに抱えるものがある中で、勇気ある決断をしてきた。もちろん、その選択はときにほろ苦い結果をもたらすことも。フラれることだってあるし、出世に響きかねない結果を伴うことだってあるし、罪悪感にさいなまれることだってある。 

 「いいじゃねぇか、失敗したって」「成功も失敗も全部自分のせいだろ。自由なんだから大人は、なぁ?」と言ったのは雅志であるが、それくらいの気概があってもいいはずだ。選ぶことの自由を、捨てることの自由を、結果をどう捉えるかの自由を、笑って楽しめるくらいの余裕も少しはないと人生やってられない。今を生きる私たちが抱える緊張感のようなものを、『はじこい』はいくらか和らげてくれたように感じる。

 ただ、人生の中には目の前に見えている選択肢を眺めているだけでは、いつまでたってもゴールにたどり着けない不思議な問題もあるようだ。

 順子は最終話で、一度は匡平との“お別れ”を迎えた。そのときの順子としては、そうすることが匡平の長い人生を考えた時の最適解だと考えたのだろう。また、本人も言っていたようにいつか自分が傷つくことを気にしてもいた。そして、当時の順子は「匡平とお別れする/しない」という2択を前にして、「お別れする」方を選んだ。

 しかし、順子の言葉を借りればその答案は「0点」だったのだ。というよりも、前提としていた2択が順子を惑わせていたと言ったほうが正確かもしれない。「匡平とお別れする/しない」で悩むのではなく、「“自由”のもたらすものを恐れてきた今までの自分とお別れする/しない」かを考えるべき試験であるように見えた。“お別れ”を告げるべきか否かで悩むべき相手は匡平じゃないはずだ。だって、匡平に問い詰められて答えたように、彼のことが好きなのは紛れもない事実なんだから。“自由”でありながらも、自分が本当に望む生き方ができていなかった順子自身と“お別れ”するか、これまで通りの自分で生きていくか。それを試されていたようだった。

 さすがに大学入試で択一問題が出題されたとき、自分で勝手に選択肢を設定するわけにはいかない。ただ、もし人生の問題で迷ったとき、一度こう疑ってみてもいいのではないか。「この選択肢の中から選ぶことを試されているのか?」、と。そもそも迷うべきこと、悩むべきポイントが違っているのかもしれない。そんなときは一歩引き下がって、いろいろなことを考え直してみるといい。何か大切なことが視界に入っていない可能性もある。解答のヒントは傍線部の前後にあるとは限らない。課題文全体を見渡して初めて分かることもある。ただ目の前に見える(あるいは、当然のこととみなしていた)選択肢にとらわれるのではなく、自分で問題を捉え直して、再検討すること。それが本作を通じて順子が手に入れた新たな生き方の知恵であったと思う。(文=國重駿平)