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「全方位的に面白い」芸能界を舞台にしたサスペンスコメディ――『きみは一生だれかのバーター』金子鈴幸×尾上寛之インタビュー

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左から金子鈴幸(コンプソンズ)、尾上寛之

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7月31日(木)から浅草九劇にて『きみは一生だれかのバーター』が上演される。本作は浅草九劇プロデュースによる芸能界を舞台としたサスペンスコメディ。第68回岸田國士戯曲賞にノミネートされたコンプソンズの金子鈴幸が初めて劇団外で作・演出を務めることでも注目を集めている。金子と、企画から本公演に関わり、キャストとしても出演する尾上寛之に作品の成り立ちと魅力を聞いた。

──今作『きみは一生だれかのバーター』は、尾上さんが金子さんに声をかけたところから始まったそうですね。

尾上 3、4年前から、プロデューサー藤本さんと「同世代、30代を中心にした面白い演劇を作りたいね」と話す中で、金子さんの名前が挙がったんです。それ以前にも作品で一緒になった舞台監督の方からコンプソンズを勧められたことがあって、じゃあ観てみようと。なかなかタイミングが合わず、『岸辺のベストアルバム!!』(2024)でようやく観たときに「なんだこの面白い演劇は!」と心に刺さってしまって。セリフが面白くて、社会や政治をポップに軽やかに風刺していたりもする。即一緒にやりましょうと声をかけました。

金子 僕はずっとプロデュース公演に興味があったので、ありがたかったです。尾上さんのように、本当に小さい芝居までたくさん観ている方に見出されることも光栄だなと気合が入りました。

──金子さんに依頼するにあたり、尾上さんからはどんなリクエストをしましたか?

尾上 プロデュース公演となると、企画側で題材や内容を決めてお願いすることが多いと思うんですが、金子さんの持ち味を活かした脚本を書いてほしかったので「金子さんが今までやりたかったけどできなかったことに挑戦してみませんか?」と伝えました。

金子 最初はせっかくのプロデュース公演だから「こういうことをやってください」と言われた方がやりやすいんじゃないか、と思っていたんですが(笑)。

尾上 「やりたいことやってください」って、ある意味酷ですよね。でも、やっぱり僕がコンプソンズを観て受けた衝撃は金子さんの面白さだから、そこをぜひ出してほしくて。

金子 そこで「劇団でできないことってなんだろう?」と考えることからスタートしました。僕ら2022年にちょうどこの浅草九劇で公演したんです(『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』)。自分としてはかなりいいものだったけれども、「もうちょっとこうしたらよかった」という部分がかなりあった。そこで、それをベースにしながら新しい物語を立ち上げていきました。

──プロデュース公演だからこそ観られる、金子さんの新境地ですね。

金子 コンプソンズでは劇団員特有のエグみみたいなものがあって、それを意識的に使ったりもするんですが、今回はストーリー自体、この世界自体に集中できるような作り方を今できていると思います。

尾上 脚本を読んだとき、言いたくなるセリフがいっぱいあるなと感じました。リアルと虚像のバランスがとっても心地よくて、グッと引き込んでくれるんです。

金子 キャストは藤本さんにご提案いただいて決めていったのですが、稽古をしながら「こんなにハマるんだ」と思っています。

尾上 小西桜子さん、井上向日葵さん、駒木根隆介さん、東野良平さん、山﨑静代さん……。いろんな人たちが集まっていて面白いですよね。

──そもそも、今回尾上さんが「30代を中心にした作品作りを」と考えたきっかけは?

尾上 最近特に、知っている、安心できる団体ばかり観に行って、新しい劇団はあまり観に行かない、という現象がより強くなっている気がして。僕のことを知っている40代、50代の方が観に来てくださって、今作をきっかけにいろんな劇団を観に行きたいと思ってくれたらという気持ちがありました。

金子 その問題意識は僕らにもあります。結局知り合いのところしか観に行かない現象はずっとあって、僕自身も硬直化しているなと自覚していたので、新しい人たちと組むことによって化学反応が得られるのは本当にありがたいです。

──金子作品には固有名詞がたくさん登場しますよね。その単語が金子さん世代よりも少し上の世代に刺さるようなものが多い印象があります。これは意識的なものでしょうか?

金子 僕が好きというのももちろんありますけど、ネタの消費が早くなっていって、新しいネタをやってもあまり笑えないんですよね。だから少し前のものを選ぶことが多いかもしれない。ただ、キャストの小西さんは20代なのに今作に登場する固有名詞を全部理解してくれるんです。ネットの影響もあって、世代間ギャップは意外となくなっているのかもしれない、とも思いますね。

──ちなみに、今回の舞台が「駅から繋がった地下の喫茶店」と聞いて、唐十郎の『少女仮面』を思い出しました。

金子 確かに! 今言われて気づきました。駅地下のさびれた喫茶店がどこか変なところにつながっているというのは唐さんの感覚が入っていますね。ちょっと読み返してみよう。

──では、最後にこの作品に興味を持った方に一言ずつお願いします。

金子 この作品は、全方位的に面白い気がします。ナイロン100℃、大人計画、そして唐十郎作品といった数々の演劇から抽出したエキスの「いいとこどり」がうまくいっている気がして、稽古をワクワクして観ています。あと、すごくピンポイントですけど、今までの演劇ではなかったシーンがあります。確か劇作家の斎藤憐さんが「戯曲とは人物の登退場だ」とおっしゃっているんです。だとするならば革命的な登退場のシーンがひとつありますので、ぜひそれを観に来てください。

尾上 今回参加しているのは20〜40代ですけど、いろんなことを吸収した人たちが集まっているので、どの世代にも刺さると思うんです。10代から50代、60代といった上の世代にも、「演劇って面白い」と感じていただける部分がいっぱいあるので、世代問わず、そしてもちろん演劇を観たことのない方にも観てほしいなと思います。

取材・文/釣木文恵

<公演情報>
『きみは一生だれかのバーター』

日程:2025年7月31日(木)〜8月11日(月・祝)
会場:浅草九劇

[作・演出] 金子鈴幸(コンプソンズ)
[出演] 小西桜子 井上向日葵 尾上寛之 駒木根隆介 東野良平(劇団「地蔵中毒」) 金子鈴幸(コンプソンズ) 山﨑静代

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kimi-barter/

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