名曲「コーリング・ユー」がミュージカルとして甦る　インタビュー：ミュージカル『バグダッド・カフェ』花總まり×森公美子

――『バグダッド・カフェ』といえばミニシアターブームをけん引した名作映画ですが、そのミュージカル版へのお話があった時の心境は？

花總　映画を拝見したことがありませんでしたが、テーマ曲の「コーリング・ユー」だけは知っていました。ですからお話をいただいた時は、あ、あの曲の？という感じでした。それから映画を拝見したんですが、これをミュージカルに？ と思ったくらい、正直ちょっと想像がつきませんでした……。

森　そうなんですよね。決して劇的な話ではないですし、映像も砂漠の中の、殺伐とした感じで。しかもあれだけ有名な「コーリング・ユー」も、登場人物たちは誰も歌っていない。だからあの曲、ミュージカルではどっちが歌うの？ みたいな（笑）。私のダミ声より、やっぱり花總さんの素敵な声で、とは思いますけど。

花總　ダメダメ、ふたりで歌いましょうよ。だって森さんが『THE BEST』（※今年2月に帝国劇場で行われたCONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』）で歌われた「君は友だち」(ミュージカル『ビューティフル』)、本当に染み入る歌声で涙が出そうになりましたから！ ですから絶対、森さんの「コーリング・ユー」を聴きたいです。

森　私も花總さんの『コーリング・ユー』聴きたいですよ。本当に花總さんうまいですし、私は今回、花總さんとお仕事できることがとにかく嬉しくって！

花總　えっ、本当ですか!?

森　ええ。で、さっき撮影しながら確信しました。あ、これ絶対うまくいく。私、この人好きだ！ って。

花總　よかった！ 私もすごく嬉しかったです。どこか私は柔軟性に欠けるところがあって。だから今回、森さんから学ぶべきところがたくさんあるだろうなと思っているんです。

森　いやいや、花總さんには花總さんの世界がありますから。だって今回演じられるジャスミン、すごく素敵で、上品で、花總さんにぴったりですよ。

――ではそれぞれの役どころについても伺えればと思います。夫婦喧嘩の末に、砂漠の中にあるバグダッド・カフェに行き着いたドイツ人旅行者のジャスミンを花總さんが、“バグダッド・カフェ”の女主人ブレンダを森さんが演じられます。

森　ブレンダは夫にも子供にもいつも怒っている、カフェの女主人ですよね。で、ジャスミンにも最初はイライラしているんですけど、だんだん心を開いていって。さらに彼女がいなくなってしまった時の虚しさったら！ それはカフェの全員がそうで、心にぽっかり穴が開いてしまう、心が砂漠化してしまった、みたいな。

花總　不思議ですよね。ジャスミンって英語が得意ではない分、言葉数としては決して多くないんですが、あれだけの影響を及ぼしてしまうわけですから。

森　もう宇宙人ですよ（笑）。

花總　そうそう、変わった人ですよね（笑）。

森　でも言葉数が少なかったからこそ、あれだけの存在感を放てたのかもしれないですね。

花總　物怖じしない人ですしね。夫と自分の荷物を取り違えてしまうんですが、スーツケースの中に手品グッズがあって、結果的にその手品でカフェのスターになっちゃったりして（笑）。

森　そうそう！

花總　そんな彼女の存在によって周りも変わっていき、いつの間にか仲間が増えていくんですよね。

森　そういう関係性を作れてしまうのが、本当に素敵な人だなって。つまりこの作品って、人は人との出会いによっていろいろなことを学び、変わっていくってことを描いていると思うんです。そしてそれをさりげなく教えてくれるのが、「コーリング・ユー」という曲なのかなと思います。

――その「コーリング・ユー」を始め、おふたりのハーモニーに期待しています。

花總　歌はもちろん、私は手品のお稽古も頑張りたいと思います。もしかしたら歌っているどころではないかもしれません（笑）。

森　歌いながら花出したりしているかもね（笑）。

花總　（笑）

取材・文／野上瑠美子
撮影／荒川 潤

＜公演情報＞
ミュージカル『バグダッド・カフェ』

日程：2025年11月2日(日)～23日(日･祝)
会場：シアタークリエ
★ぴあ半館貸切公演あり！

［脚本］パーシー・アドロン／エレオノーレ・アドロン
［音楽］ボブ・テルソン
［歌詞］リー・ブルーワー／ボブ・テルソン／パーシー・アドロン
［演出］小山ゆうな
［翻訳・訳詞］高橋知伽江
［音楽監督］荻野清子

［配役・出演］
ジャスミン・ムンシュテットナー：花總まり
ブレンダ：森 公美子
ルディ・コックス：小西遼生
フィリス：清水美依紗
アブドゥラー：松田 凌
サル（他）：芋洗坂係長
アーニー（他）：岸 祐二
ムンシュテットナー氏（他）：坂元健児
デビー：太田緑ロランス
サル・ジュニア：越永健太郎 他

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/bagdadcafe/